従来の受託型のシステム開発では立ち行かなくなる――。システムインテグレーター(SIer)業界の共通認識だ。この状況に強い危機感を持ち、大きく変わろうとしている日鉄ソリューションズ(NSSOL)。日本製鉄グループ企業として、これまで鉄のフィールドに留まらず、多様な業界・業種の最先端システム開発を手掛けてきた。しかし、激変するビジネス環境において顧客企業が変わろうとする中、NSSOLも自身の変革に挑んでいる。

NSSOLは2020年にDX専門組織「DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター」を立ち上げた(※21年にDX&イノベーションセンター〈DXIC〉に改称)。受託開発型ビジネスから、顧客と共創し持続的に新たな価値を提供していく"DXパートナー"へと大きく舵を切る。DXICで活躍する當田修之部長と北里翔平氏に、顧客企業へのDX支援の取り組みなどについて話を聞いた。

DXによって破壊的イノベーションを起こす企業も

DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 部長 當田 修之氏
DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 部長 當田 修之氏

――デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現は、あらゆる業界・企業にとって最重要課題です。なぜ企業はDXに取り組むが必要であるのでしょうか。

當田 企業を取り巻くビジネス環境は、かつてないほど劇的な変化が起こっています。これからの時代、企業が社会に価値を創出し、事業成長や競争力を高めていくためにドライバー(主軸)となるのがデジタル技術とデータ。持続的な企業経営を実現するためには、デジタル技術とデータを駆使した事業変革であるDXは避けられません。

北里 全く同感です。既存事業の変革だけでなく、新たな事業推進を図る上で、これまで積み上げてきた競争力の源泉である「業務プロセス・組織・システム」といった強みの何を変え、残し、捨てるのかといった難しい判断に迫られていると思います。ただ、現場に携わる者の感覚からすると、DXになかなか踏み切れないお客様も多いと感じています。

當田 DX推進の難所として、日本企業において作り上げられた「個別組織ごとの最適化」を見直すこと、そして部署間・企業間の関係性・役割分担を見直すことが挙げられます。絶妙なバランスで成り立っている既存業務プロセスや組織役割分担を抜本的に見直して、DXを推し進めるにはパワーが必要です。

北里 そうですね。変革を遂げたその先にある目指したい姿としての「事業構想」だけでなく、「それを実現する上で阻害要因となっている組織課題」「新たなデジタルによる仕組み」といった3面の構想は本質的に不可分であり、これらを同時に描き、仕掛けていかないと、DXの成功は難しいように思います。

――DXが進むことでマーケットにはどのような変化が生じますか。

北里 新規事業をDXで成功されているような企業は、野心的であればあるほど、破壊的イノベーションの創出によるマーケットの一人勝ちであったり、独自の強みを生かしたポジショニングを取るケースが増えてくるのではと思います。これはすでに起こりつつあります。一方、依然として推進上に課題感を抱えられているお客様については先に述べた3面構想をご支援するマーケットや、デジタル技術を活用することによる新たなマーケットが創出されることも考えられます。

DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 部長 當田 修之氏
DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 部長 當田 修之氏

Slerから「X Integrator」へ変革を目指す理由

DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 エキスパート 北里 翔平氏
DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 エキスパート 北里 翔平氏

――貴社は自らの目指す姿として「ファーストDXパートナー」を掲げていますね。

當田 ファーストDXパートナーとはお客様のDX推進において、なくてはならない存在であることです。お客様との関係性には2つあり、1つはお客様の全社にわたる様々なDX施策をNSSOLと一緒に進めていく形。もう1つはお客様にとっての競争力の源泉に焦点を当ててDXを一緒に進めていく形です。いずれもお客様と「共創」「共栄」「共進化」していく存在であることが求められます。

北里 共創、共栄、共進化を目指すには、お客様に何を届けることができるのか、自分たちの強みをしっかりと把握し固めた上で事業変革を構想し、組織や新たなデジタルの仕組みにより持続的な成長と変革を伴走していく覚悟と能力が必要となります。

當田 当社はトップ自らが「ファーストDXパートナーになるためにはSlerから『X Integrator』への変革に挑まないといけない」と表明しています。Xとはシステムだけでなく業務プロセスにも関わっていくといった変数であり、トランスフォーメーション(X)の意味もあります。お客様が変わろうとしている中、私たちも変わらなくてはなりません。

――お客様と共に歩む"ファーストDXパートナー"として頼りにされるには、何がキーになるのでしょうか。

當田 変革プロセスを通じて、お客様の深い納得感や共感をどれほど積み重ねていけるかです。そのためには、論理と情理が非常に大切だと思っています。お客様に「御社の事業をこのように改革・変革すればうまくいきます」と論理を盾に伝えるだけでは、なかなかうまくいかないことが多い。そこには人間の感情が入ってくるからです。答えのない道をお客様と一緒に歩んでいくには論理だけでなく、情理、例えば絶対時間や喜怒哀楽の共有を通じた信頼関係の積み重ねは欠かせません。

北里 お客様と一緒に業務上の難所を乗り越えてきたという経験・信頼関係をさらに発展させるために、私たち自身も多様な能力の獲得・強化と伴走し続けるという強い意思を持っていて、そのような意味でも論理と情理は大事な両輪だと、日々の業務を通じて肌で感じています。

當田 DXは"正解"が見えない未知の取り組みです。お客様は答えのないところを歩もうとされており、NSSOLの役割はそこを一緒に探っていくことです。お客様の事業環境が変わり続ける中、私たちは自らの提供価値を磨き続け、当社の多様な仲間が持つ強みをインテグレートしながらお客様の変革を実現していく必要があると考えています。

DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 エキスパート 北里 翔平氏
DX&イノベーションセンター ビジネスイノベーション&コンサルティング部 エキスパート 北里 翔平氏

全社のCoE的な組織として位置づけられるDXIC部門

ビジネス・組織変革をデジタル/データ駆動で支援する5つの組織

――DX推進組織としてDXIC部門が立ち上がりました。その役割を聞かせてください。

當田 DXICは全社のCoE(センター・オブ・エクセレンス)的な組織として、ナレッジや経験値を集約し、各部署に展開しながら全社の競争力を高めていく役割を担っています。

北里 圧倒的な当事者意識を持って、お客様のビジネスを本気でアジリティー(機敏性)高くドライブしていくだけでなく、社内の事業部のアカウントメンバーとも信頼し合い、難所に対して伴走していくマインドセットとスキルセットを持ったメンバーが集まっているのがDXICです。

當田 DXICは4つの部門から構成されています。その1つが、私たちが所属する「ビジネスイノベーション&コンサルティング部(BIC)」。BICではお客様のDXへの取り組みに関わる4つの領域すべてをカバーしています。①既存の業務プロセスにおける圧倒的な生産性の向上、②既存事業変革による収益向上、③新規事業の創出、④それらを支える組織への変革――です。お客様の変革を一気にドライブしていくミッションを担っています。各領域間の壁がなく、1つの部で総合的にお客様に価値提供できるのはNSSOLならではだと思います。

――実際に取り組まれている事例を教えていただけますか。

北里 昨年、デジタルイノベーション共創プログラム「Angraecum(アングレカム)」を立ち上げましたが、それを通じてここ1年ほど前から流通小売国内大手のお客様と伴走した事例があります。お客様の中長期的なビジョン、その阻害要因の分析、解決策を洗い出す共同アイデアソン、ビジネスモデル策定、サービスデザイン、スクラム開発と、一貫して共創し続けました。様々な課題もありましたが、1つひとつひも解くと共に関係部署の人々を少しずつ巻き込んでいき、新たな価値を共に創り上げています。

當田 あるメーカー様向けにも変革プログラムを推進中です。壁はいろいろありますね。既存の意思決定プロセスが生み出す力学や、社内の役割分担など......。お客様と苦労を共に重ねながら方向性を描き、導いていくのがNSSOLの存在価値です。

――BICで推進するデジタルイノベーション共創プログラム「Angraecum」はどのようなプログラムですか。

北里 一言で言えば、お客様とNSSOLとの価値共創プログラムです。お客様が中長期的に目指されたいビジョンに共感する所から始まり、その実現を阻害する要因の解決策をアイデア出しレベルから共に考え、解決策の実行に至る様々な手法・技術の活用を通じて、最終的には事業として形にしていくまでを一貫してご支援しています。ユニークなのは「一連の動きに関わるお客様先の関係者の気持ちを覚醒させる」ことを初期に重視していることや、「本質的な変革と関係者からの共感を両立させるアプローチ」を手法として採用していることです。

當田 NSSOLならではと思うのは、アイデア創出から事業化に至るプロセスだけでなく、気持ちの覚醒や共感といった側面を大切にしていることです。やはり、お客様に「自分たちでこれを進めなくてはだめだ」と自分事として感じていただくことはDX成功に必要不可欠と思います。

ビジネス・組織変革をデジタル/データ駆動で支援する5つの組織

社内イノベーションを実現できることがNSSOLで働く面白さ

當田 修之氏 北里 翔平氏

――「Angraecum」は社内にも変化をもたらしていると聞きました。

北里 「Angraecum」を社内にも適用して、様々なメンバーにイノベーションの火をつけてきました。例えば、流通・サービスソリューション事業本部のHR Tech関連の事業チームアップからプロダクト作り、市場への投入、お客様の声をモニタリングするところまで伴走しています。

當田 「社員が相互に素敵な部分を紹介し合うツール」も社内イノベーションの一つでしたね。

北里 はい、「社員が相互に素敵な部分を紹介し合うツール」もAngraecumきっかけで生み出された、NSSOL独自開発のツールですね。社内SNSと連携した、「社内にこんなすごい人がいるよ」と気づくことができるサービスです。自分が誰かに対して貢献できていることをアピールし、広く共感や賛同を得ることができるというものです。私は2016年にキャリア入社したのですが、社外向けのサービスを社内にも活用して、このような社内イノベーションを実現していける土壌があることは、NSSOLで働く面白さだと感じます。

――最後に、どのような人と一緒に働きたいですか。

北里 NSSOLはお互いに、積み重ねてきた技術や実績に対して敬意を示しながらも、共に新たな挑戦をして成長していこうという仲間が多いと感じています。また、お客様から「この人に仕事を任せたい」と思っていただくには、ある種のビジネス観や人生観への理解と共感ができるマインドが重要です。そのような関係性を大事にできる方は共に同じ方向を向いて、お客様や自分たちの成長に向けて歩み続けることができると思いますので、ご一緒に働くことができたら素敵だなと思いますね。

當田 やはり、論理と情理が大事だと思える方にはぜひとも来てほしいです。NSSOLは今、大きく変わろうとしている真っ最中です。道なき道を歩くことを楽しめる人にとっては、ホットなタイミングだと言えます。その道をお客様とも、当社の仲間とも歩んでいくことができます。昨日よりも今日、今日よりも明日、と自らを変え続けながら、共に歩み続けられる方を私たちの仲間としてお迎えしたいです。

當田 修之氏 北里 翔平氏

※NSSOL、NS Solutions、NS(ロゴ)、Angraecum、X Integratorは日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。

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