2005年7月、アバナード日本法人設立。社員数はわずか18人で名実ともにベンチャーとしてのスタートだった。そして時は流れ、2019年には500人を突破。さらなる拡大を目指して、今後も積極的に採用を続ける。アクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社として、高い技術力と独自のカルチャーを築いてきたアバナード。その成長の要因、新しい人材に求めること、キャリア観などについて、代表取締役 安間裕氏に話を聞いた。

ITはビジネスの裏方から主役の座へ

アバナード株式会社 代表取締役 安間裕氏
アバナード株式会社 代表取締役 安間裕氏

――コロナ以降、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、需要が増加していると想像します。現在の事業についてお聞かせください。

 「実は、コロナ以前からビジネスは好調でした。社員規模でいうと、私がアバナード日本法人の代表に就任した2014年から、社員数は7年間で約4、5倍に伸びました。その背景には、日本企業のグローバル化とデジタル化の需要があります」

 「世界的に見て、日本はハイスピードで少子高齢化が進行している国です。人口が減り内需が縮小するなか、海外へ市場を求める企業が増え、グローバル化の支援役としてアバナードの出番が増えています。また、人口減は経済を支える労働力の減少にもつながり、人手不足を補うためのデジタルを導入した業務効率化も同時に求められるようになりました」

 「これまで日本企業の多くは、IT費用を抑えるべきコストと考えてきました。ところがデジタルブームを経て経営者の見方が変わり、IT費用をリターンが得られる投資と捉えるようになりました。コストと投資ではお金のかけ方が変わります。これは非常に大きな変化です。デジタルは利益を生むのです。これまでITは裏方でしたが、今初めてセンターマイクの前に立っている。このことに私たちは自信を持っていいと思います」

 「私たちの強みの1つは、全世界5万人のアバナード社員の力を活用し、どの地域のプロジェクトであっても世界中の事例での経験と知見を普遍的な形に変換して展開できることです。これには、日本より3周進んだ欧米のデジタルの今が詰まっています。ですから、他社が階段の1段目から上り始めるところを、私たちは階段の踊り場から進めることができる。これは大きな競争力の源泉となっています」

 「アバナードのオフショア(自国外での開発)は全世界にありますが、アバナード日本法人ではインド、フィリピンと中国のメンバーと業務を遂行することが多いです。特に中国については、コロナ以降はリモートワーク化が進んだこともあり、オフショアでありながらもほぼ日本と同じように機能しています」

――まさに今、ビジネスで必須のグローバルとデジタルの掛け算で優位性を発揮しているところですね。

 「私たちは10年前からデジタルを掲げてきましたが、これが強みにならない時代を迎えています。今、アバナード日本法人は転換期です。市場創出やビジネスモデルの転換、また人数×単価×月で売り上げを立てる従来型ビジネスからの脱却に取り組んでいます」

 「例えば、2021年10月に足利銀行の住宅ローンの審査業務の自動化について発表しました。ここを皮切りに、地方銀行の個人向け与信チェックのプラットフォームをつくる構想があります。地方経済の発展に貢献しながら新しい市場を獲得する狙いです」

 「企業のDXが進むなか、私たちのお客様は生産部門やマーケティング部門の方など、IT部門以外の分野へと広がっています。お客様は製品・サービスでデジタルによる新しい価値を創出するために、バリューチェーンなども含めてDXを進め、新しい市場を創造しようとしている。そのパートナーとしてアバナードへの指名が増えています」

 「これまでのデジタルはCRM(顧客管理システム)やERP(統合基幹業務システム)などのソリューションを売るという発想で動いてきましたが、お客様の頭の中にソリューションの区切りはありません。ビジネスとは、バリューチェーンのように水平に連なって初めて成立すると思っているからです。この転換は、私たちにとって高いハードルですが絶好のチャンスでもあります。SaaS型、レベニューシェア型のようなビジネスモデルも取り入れながら、新しい強みを探求しつづけます」

アバナード株式会社 代表取締役 安間裕氏
アバナード株式会社 代表取締役 安間裕氏

ベンチャーの気風と大手のダイナミズムが味わえる

アバナード株式会社 代表取締役 安間裕氏

――御社はアクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社としてスタートし、それぞれのDNAを持つ点が特徴です。メリットはどんなところだとお考えですか。

 「アバナードは0から1を生むような、創造性の高い仕事が得意な会社です。マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツのベンチャー精神を宿しているからでしょう。マイクロソフトテクノロジーでは世界一のプロだと自負しています。もう1つの源流であるアクセンチュアは、50万人を抱える世界最大級のコンサルティングファームで非常に統制がとれた組織です。1を1000にすることが得意で、世の中を変えるような大規模な仕事に携わることができます。この2社が融合したアバナードは、その両方が味わえる稀有な会社だと思います」

 「0から1を生む仕事、1を1000にする仕事、規模が変われば仕事の進め方は一変し、別の楽しさ、大変さがあります。この両方を経験できる機会は少なく、非常に価値のあること。アバナードに入社するとどちらも味わうことができます。現在の事業比率はアクセンチュア提携分が5割超ですが、5年後には5:5にしてベンチャーと大手どちらにも行き来できるバランスの良さを追求したいと考えています」

――5年後のお話が出たところで、御社の将来像についてお聞かせください。

 「2025年末までには売上2倍増となる予定です。ありがたいことに私たちの技術力、グローバル性に対しての需要は多く、課題はリソースの確保です。採用計画の強化や、先ほど申し上げたオフショアや他社との業務提携の拡大も視野に入れています」

 「アバナード日本法人は急成長を遂げ、価値ある大きな案件も増えました。会社規模の拡大とともに信用度が増したのだと分析します。昔のアバナードを知る人から、『あなたが代表に就任してから、かつては野武士集団のようだったが組織として大きく成長した』といわれることがありますが、社員のみなさんに『この会社なら安心して仕事に取り組める。面白い仕事ができる』と思っていただくことが代表としての私の最低限の責務です。人生のステージに合った給与体系を維持するためにも、事業の成長は必要だと思っています」

 「企業がイノベーションを起こすためには経済的な余裕が必要で、ビジネスが成功していない限りは新しいことに取り組めません。イノベーティブであるためにも成功は必要です」

アバナード株式会社 代表取締役 安間裕氏

ジャズバンドのように各々が強みを発揮する組織へ

イメージ

――採用にあたってどんな人材を求めますか。

 「さまざまな職種に共通して求めるのは、一緒に働く仲間とお互いがお互いを尊敬尊重できるような人。私たちのカルチャーである"Respect Each Other"を実践できる、一言でいうと『いい人』ですね」

 「なぜならこれからのデジタルは、エンド・ツー・エンドでより横断的なものとなるからです。その実現には、IoT、エクスペリエンスデザイン、経営などさまざまな分野の専門家が集まってチーム形成する必要があります。違いを認め合ったうえで、相手は自分にはない知識や経験を持っている、聞く価値があるという心構えでいないとチームは機能しません。新しいアイデアを取り込むために相手の話を素直に聞く。お互いを尊敬尊重することがイノベーションを生むことにもつながると思います」

 「組織としての理想は、同じような能力を持った人がそろうよりも、バラバラでもジャズビッグバンドのようにプレーヤーが各々強みを発揮しながら、共通の譜面や目指す音楽の形で結ばれて、同じ方向を向きながら進んでいける集団です」

 「日本は出産・育児やパートナーの転勤などで離職する女性の比率が高いといわれています。意欲や能力のある方たちが就業機会を得られないのは社会的損失です。昨年からアバナードは47都道府県採用を実施し、住む場所に制限されない働き方が可能になりました。さまざまな方にぜひアバナードで力を発揮していただきたいと思います」

――安間代表のキャリアのスタートはエンジニアと伺っています。仕事への考え方、キャリアの軸をお聞かせください。

 「さまざまな得難い出会いが今の自分を形成してきました。長い仕事人生で確信しているのは、最も大切なのは"人"だということです。経営目線でも従業員を大切すると、お客様、取引先、株主みんなが幸せになる。人を中心にした経営判断をすべきだと思います」

 「エンジニア職も英語も、自ら望んだものではありませんでした。でも、ま、いいかと思ってやってみたら面白かった。偶然提示されるものは自分が好むものとは限らない。その偶然に柔軟性を持って受け入れていくことが何かを築くことになると思います」

 「最も重要な偶然は周囲からの刺激でしょう。"Respect Each Other"で耳を傾けることが、自分を変える大きなエンジンになると思います。アバナードは良い意味での朝礼暮改が多く、失敗や間違いを恐れない組織です」

 「ウィズコロナ時代のデジタルや職場環境のあり方など、新しく難しい課題に私たちは直面しています。新しい課題は新しい世代と共に考えたほうが良い結果となるでしょう。これから入社される方たちが主体となり、新しいアバナードを創り上げてほしいと思います」

イメージ
Inside Watch

Inside Watch

誕生日カードに社員旅行 「人間くさい」アバナード

誕生月になると、アバナード社員のもとには安間代表から手書きイラスト入りのバースデーカードとプレゼントが届く。安間氏から社員へのサプライズだ。毎月の社内SNSの安間氏コーナーでは、経営指標を公開する一方、好きな映画「男はつらいよ」や本、音楽、テレビドラマ評など、安間ワールドが広がる。プライベートを伝えることでビジネスの判断基準を理解してもらおうという狙いだが、最大の理由は「好きなものの話がしたい」からだという。社員と経営陣の距離が近く、社内にはオープンで明るい空気が流れている。コロナ以前は、社内旅行で旅館に泊まり、大広間でカラオケを楽しんだことも。ドライといわれる外資系企業のイメージを覆す、人間くささのある会社だ。

転職成功アンケートご協力のお願い
日経転職版を通じて転職が決まった方に、アンケートのご協力をお願いいたします。