JALが3000人配転、LCCなどに ビジネス需要低迷長期化

観光需要の取り込みが期待できるLCC事業を拡大する(ジップエアのボーイング787、成田空港)
観光需要の取り込みが期待できるLCC事業を拡大する(ジップエアのボーイング787、成田空港)

日本航空(JAL)は従業員約3000人を主力航空事業から格安航空会社(LCC)やマイル事業などの非航空分野に配置転換する。新型コロナウイルス禍でオンライン会議が広がり出張などのビジネス需要の低迷が長期化すると判断、いち早く回復すると見込まれている観光需要に対応する狙いだ。コロナ禍後の需要の変化をにらみ、航空や旅行業界で人員配置の見直しなど構造変革に踏み出す動きが広がってきた。

JALの2021年度時点の従業員数はグループ全体で約3万5400人。このうち9割に当たる約3万1300人が「JAL」ブランドを中心とした航空輸送事業で働いていた。LCCや非航空事業で25年度までに新たに働く人員は約3000人を見込んでおり、配置転換以外に新規採用を一部含む。

JALが非航空を軸に人員構成を見直すのは初めて。約3000人のうち約6割を空港販売やネット通販、保険事業などを手がけるJALUX(東京・港)など非航空分野に、約4割を20年に運航開始したジップエア・トーキョー(千葉県成田市)などのLCC事業に移す。

世界の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)の予測では、22年の世界の航空旅客は前年比7割増の38億人と回復するものの、コロナ前の8割の水準にとどまる。

JALは22年度に国内線でコロナ前の9割の回復を見込む一方、国際線は5割弱にとどまると見込む。ドル箱だったビジネス客はオンライン会議などの普及で出張が減り、コロナ前水準には容易に戻らない。一方でLCCが主要顧客とする観光客はコロナ後の回復が比較的早いとみており、人員を増やす。

利益の構造も変える。コロナ前は本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前損益)の7割をJALブランドの航空事業が占めていた。これを25年度に55%まで引き下げる。

非航空の中心となるマイル事業は会員が約3千万人いる。コロナ禍でもクレジットカード決済などに伴うマイル事業の収入は比較的安定する。今後、金融サービスや通販などでも会員がマイルを使いやすくしたり、電子商取引(EC)事業を拡大したりするため人員を厚くする。

航空業界ではANAホールディングスも「ANA」ブランドの航空事業の従業員数を減らす。25年度末に20年度末比9000人減の約2万9000人にする。定年退職や採用抑制による自然減でスリム化するほか、今年度からグループ会社に転籍できる制度も始めた。

欧米の航空大手はコロナ禍の需要減を一時解雇で対応した。しかし、経済が正常化に向かうなかで、乗務員や地上職員の人手不足が深刻になっている。英ブリティッシュ・エアウェイズはコロナ禍で約1万人を解雇した。22年中に6000人を雇用する計画だが、需要回復に追いつかず航空便の欠航や遅れが増えている。

JALやANAが社員の再配置を進めるのは、急激な需要変動や人手不足への対応力を高める狙いもある。コロナ禍の外部出向で様々なノウハウを積んだ社員が増えたことで、人員の再配置を進めやすくなった面もある。

需要の変化にあわせ、航空や旅行関連の業界では人材の再配置や新規採用などで事業構造転換に乗り出す動きが広がっている。JTBは総合職とは別にIT(情報技術)関連の人材をデジタル総合職として継続的に採用する。デジタル戦略を強化して旅行以外の事業拡大につなげる。鉄道業界でもJR東日本は19年から業務の兼務制度を導入した。運転士や車掌など現場の仕事と企画などの事務を兼務しやすくし、柔軟な人員の運用をしやすくした。

[日経電子版 2022年07月20日 掲載]

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