あしたのマイキャリア

40代転職は今が好機 人材育成の経験あれば高評価に

40代の転職が活発になっている。それも、早期退職を迫られるなどやむを得ずではなく、自らの意思で転職を決断する人が目立っているという。ある程度の年齢になって長年勤めた会社を変える決心をすることは容易ではないと思われるが、何が40代を転職に向かわせているのか。好機はこれからも続くのか。初めて転職活動をする40代のサポートに関して多くの実績を持つ、パソナの転職コンサルタント坂元亜衣さんに話を聞いた。

40代転職増に3つの要因

――40代以上の転職希望者が増えていると聞きます。

「新型コロナウイルスの流行前までは、現在の職に不満があり転職したいという20代、30代が多かったのですが、コロナ禍以降は40代以上の転職に対する温度感、熱量が増している印象があります」

「コロナ発生直後の2020年は早期退職を促されるなど『転職しなければならない』人が目立ちました。コロナ禍3年目となり、現職の将来性に不安があるので今から活動したほうがいいのではないかと、自発的に相談に来る人の割合が増えています」

――将来に不安を感じる人が増えている要因には、どのようなものがあるでしょうか。

「大きく3つ挙げられます。1つは業態の転換期を迎えている企業が多いこと。例えば自動車は、ガソリン車から電気自動車(EV)への転換が進んでいます。ガソリン車に使われている部品のメーカーに勤めている人は、今後、主軸商品の需要がなくなることに危機感を感じ、転職を検討しています」

「2つめは、終身雇用制度が崩れつつある点を認識している人が増えていること。40代の人は、『勤めている会社で定年までの約20年働けるのだろうか』といった不安が頭をよぎるころです。50代や60代になって転職するよりも、まだ比較的若い今、動いたほうが得策だと考える人もいます」

「3つめは、オンラインで転職活動ができるようになったこと。在宅勤務の合間にオンラインでエージェントと選考対策をしたり、実際に企業の面接を受けたりといったことが可能になりました。現職と両立しながら転職活動を進めやすくなったわけです。『オンラインで活動できるのであればチャレンジしてみよう』と、心理面でも転職へのハードルが低くなっていると感じます」

インタビューに応えるパソナの転職コンサルタント坂元亜衣さん
インタビューに応えるパソナの転職コンサルタント坂元亜衣さん

――選考のオンライン化も影響しているのですね。

「40代はちょうど親の介護が始まる年代とも重なり、地元に戻って実家のそばで仕事をしたいという希望が増えます。オンラインであれば選考のたびにいちいち地元に足を運ぶ必要もありません」

「1次面接など選考の初期段階ではオンラインで面接し、最終選考に向けて対面を取り入れていく方法が主流です。なかには、最終選考までオンラインで完結し、入社日に初めて会社に出向くケースもあります」

――40代は、どのような転職先に決まることが多いですか。

「40代は基本的に同業界・同職種で、経験を生かしての転職となります。ガソリン車の部品会社で働いていた人が、その生産技術の経験を生かし、EV化しても需要がなくならない電子部品の会社に転職するといった具合に、将来性のある企業を探して応募します。エントリーから入社までの期間は大体3、4カ月。逆に、新しいことに挑戦したいという人は内定まで時間がかかります」

40代ならマネジメント経験をアピール

――ある程度の額の年収を得たいという人も多いのでは。

「根拠なく年収アップを望むと転職活動は難航しますが、『家族がいるので年収は●●円以上を希望』という条件を考えるのは一般的なことです。大企業から中小企業に転職すると、初年度の年収が現職よりも下がってしまい、家族の反対に遭うケースも見られます。そのような場合には、最初は下がってしまっても、会社の将来性を考え、長い目で見れば転職することが得になると説得を試みるのがいいでしょう。実際、今後需要増が見込まれる製品を扱う会社であれば、現職にとどまるよりも結果的にはよい収入を得られることが予想されます」

「会社の規模ではなく仕事のやりがいを重視して、ベンチャー企業の役員候補として転職し、年収1000万円以上になった事例もあります」

――ミドル世代特有の、転職活動時の注意点を教えてください。

「40代は管理職としての転職が主です。求人の数が限られるので、しっかりと対策をして選考に臨んだほうが内定につながりやすいです。そのためには、自分一人で転職活動を進めず、エージェントを活用し、自分のスキルの棚卸しや、面接で強みをどのように伝えるのかといった点を確認したうえで活動を進めたほうがよいでしょう。実際に相談に乗っていると、自分の経験のうち何をアピールすればいいのかわからない、そもそも書類の書き方が正しいのかも自信がないという人が少なくありません」

「書類選考や面接で、新卒や第二新卒のように、自分の性格やマインド面をアピールする人がいますが、40代の転職では、それは求められていません。若手であればポテンシャルで採用されますが、40代は『実務面で何がどれくらいできるか』が重要なポイントです。その点をきちんと伝える必要があります」

――転職がうまくいかない人はどんな人でしょうか。

「経験がある分、あれもこれもとアピールしたいことが多くなり、職務経歴書や面接での話が長くなってしまう人です。職務経歴書ではポイントを絞って書き、A4サイズ2枚程度にまとめる。面接では結論から話し、長くても2分程度におさまるようにしてください」

――40代ならではのアピールポイントはありますか。

「実務経験に加えてマネジメントの経験は必須です。必ず書類に記載してください。そのほうが書類選考の通過率も上がりますし、提示される年収も高くなります。マネジメントのなかでも、とくに人材育成での実績があると企業の感触がよいでしょう。40代の管理職を募集している企業は、メンバーの統括を課題としていることが多いです。その経験やノウハウを発揮することを期待されています」

40代の書類選考通過率は20% 悩まず相談を

――転職をなかなか決断できず「様子見」している人もいるようです。

「様子見しているうちに、受ける企業がなくなってしまう可能性もあります。業態変換のための中途採用のピークを、2022年と定めている企業もあります。ある自動車関連会社は今後3年分を22年にまとめて採用するといった方針を出し、人材確保を急いでいるほどです。今年が転職の絶好のチャンスという人もいるでしょう。また、40代の書類選考通過率は、よくて20%と言われています。5社に1社しか選考に進むチャンスがない世界で、悩み立ち止まっていたら、なかなか内定にはたどりつけません。転職を考えているなら、ぜひ動き出してください」

「転職エージェントに登録や相談をしたからといって、転職活動をしなければいけないわけではありません。転職するかどうかを決めかねているのであれば、市場の様子や自分の客観的な評価を知るためにも、まずは一度相談することをおすすめします。転職する、しないを決めるのはその後でもいい。なかには転職活動をした結果、『やっぱり今の会社で仕事を続ける』という選択をする人もいます。それはそれで、より前向きに現職に取り組めるようになるのでいい決断だと思います」

「何か資格をとってから転職を、と考えている人もいるかもしれません。40代であれば、その結果年齢が上がってしまうリスクを負うより、より若いうちに転職活動に取り組んだ方がいいでしょう」

――40代以上の転職は今後も増えていくでしょうか。

「増えると思います。終身雇用制度は、人口が増え、日本経済が成長しているという2点がそろってこそ成り立つもの。定年まで1社で勤めあげることは、ますます難しくなるのではないかと予想しています」

「コロナの影響で転職できないのではと不安に感じている人もいますが、都市部も地方も、コロナ前より求人数は増えています。それだけ、変化していかなければならない企業が多いということです。今後3年ほどは、求人の状況は変わらないのではないでしょうか」

(日経転職版・編集部 木村茉莉子)

坂元 亜衣
webマーケティングの営業職を経てパソナに入社。東海地方(愛知・岐阜・三重・静岡)でキャリアカウンセリングから内定まで、転職希望者のサポートをしている。

[NIKKEI STYLE キャリア 2022年05月21日 掲載]

前の記事
次の記事

ピックアップ

注目企業

転職成功アンケートご協力のお願い
日経転職版を通じて転職が決まった方に、アンケートのご協力をお願いいたします。