男性育休「不安は昇進」 子育て世代が本音の座談会

男性の育児休業の取得促進につながる施策を盛り込んだ「改正育児・介護休業法」が4月から段階的に施行された。日経ウーマノミクス・プロジェクトが男性393人に行ったアンケートでは、取得に際し「復帰後の仕事への影響」や「仕事の引き継ぎ」に不安を感じる、との声が寄せられた。育休取得を進めるには職場でどんな取り組みが必要か。男性らの本音を聞いた。

アンケートでは改正法のうち、男性の育休取得に最も効果のありそうな施策を聞いた。最多は「従業員に対する個別の制度周知、取得の意向確認の義務化」(27%)。「相談窓口の設置など、育休を取得しやすい環境整備」(22%)が続いた。

Cさん 「正直に言うと、どの施策も効果は薄そう。男性に『育休を取りたい、取らなきゃ』と思わせるような施策が少ない。これでは取得は進まないのでは。企業や上司が従業員に対して『育休を取ってくれてありがとう』と思えるくらいの、発想を大転換させる施策が必要だと思う」

Bさん 「同感。でも育児では不測の事態が発生するので、育休の分割取得はメリットが大きそう」

Aさん 「うちは妻もフルタイム勤務だし、子どもが生まれたら自分も育休を取らねば、という思いはある。でも実際にとるとなると不安がぬぐえない」

「育休取得にあたり、不安はあるか(あったか)?」との質問には3割が「ある(あった)」と回答。内容としては「復帰後の仕事への影響」(61%)が最多。続いて「仕事の引き継ぎ」(55%)、「同僚など職場の反応」(46%)だった。

Bさん 「営業の仕事をしているが、属人的な業務も多い。例えば1カ月育休となると、担当している業務を誰かに渡さなければいけない。その点は心配」

Aさん 「自分は『育休をとっても昇進できるのかな』というのが一番の不安。育休の制度は充実していても周囲に育休を取得している人が全然いないので」

Cさん 「1カ月ほど前に子どもが生まれたが、育休はとらなかった。自分も昇進が遅れるのでは、という不安があったから」

育休取得経験のある男性に、実際に現実となった不安を尋ねたところ、回答した156人のうち40%が「仕事の引き継ぎ」と回答。「復帰後の仕事への影響」(35%)、「上司の反応」(29%)も多かった。

Cさん 「周囲に育休を取得した男性がいるが、本人のいない飲み会で、上司が『目標を達成していないのに、なんで休むのか』と陰口を言うのを見た。自分も育休をとったら『あいつは出世には興味がない』とレッテルを貼られる恐れがあるので、とらなかった。本当は数カ月から1年くらい育休を取得したい」

Bさん「休みたければ休めるという、きれいごとではすまない感じだよね。ただ、育休をとることによってモチベーションが向上し、職場全体の生産性が高まる可能性はあると思う。自分のチームメンバーは、みんな小さな子どもを抱えているけど、お互いに理解があるので相談しやすく、意思決定もスムーズ」

「男性が育休を取りやすくなるために必要なこと」については、男性全体の74%が「上司の理解」をあげた。「同僚の理解」(64%)、「昇進や配置転換で不利にならない」(53%)と続いた。

Aさん 「昇進についての安心感がほしい。現場を束ねる管理職が育休を取得して、ロールモデルになることが必要だと思う。『休みを取っても昇進できる』という象徴的な人が近くにいればとりやすい」

Bさん 「育休をとらないと本人や上長が人事評価でマイナスになるぐらいの強制力を持った制度があるとよいかもしれない。職場の雰囲気も重要。子どもが生まれたとき、育休取得経験のある男性から『手続きが大変で、結構面倒だよ』と言われて、とろうと思わなかった、という経験があるので」

Cさん 「育休をとったことで業務上の成果が目標に届かなかったとしても、ゲタを履かせてくれるような制度もあるとよい。昇進に対する価値観を変えるようなことをしないと、取得者は増えないと思う」

「育休で生産性向上」30% 

男性育休の推進には生産性の議論も欠かせない。女性も含めた519人に「男性育休が普及すると、職場の労働生産性は向上しそうか」と聞いたところ「向上しそう」と回答したのは30%、「低下しそう」が24%だった。向上の理由としては「まず残業ありきで考えていた働き方が改善する」(男性、47歳)、低下の理由は「引き継いだ業務を習熟するまでに時間がかかる」(男性、50歳)などの声があった。

男性育休をプラスに働かせるためにはどうしたらよいか。育休取得率100%の積水ハウスでダイバーシティ推進部長を務める山田実和さんは、「個々の企業にあった仕組みづくりを優先すべきだ」と話す。同社では2018年以降、育休取得者が上司と取得計画書を作成し、仕事の分担を話し合う仕組みを構築。残業抑制などの効果も得られているという。

「ジェンダーで読み解く 男性の働き方・暮らし方」の著者で関西大学の多賀太教授は「男性育休は効率性の向上を考える契機になる」と話す。事業規模にもよるが、業務の属人化を改め、欠員を前提としたチームをつくれば働き手の病休や介護休暇などにも柔軟に対応できる。労働市場全体でみても「優秀な女性が仕事を継続できるので生産性は高まる可能性がある」と説明する。

男性育休の推進にはロールモデルの存在も重要だ。最近子どもが生まれた福岡市の団体職員の男性(30)は、会計監査が集中するときなど休みづらいという。一方最近では、職場のエースとして活躍していた男性の先輩が育休を取得すると宣言し「職場の雰囲気が変わるかもしれない」と期待を寄せる。個々の企業が男性育休のメリットを実感し「やらされている」という考えを捨てることが大切だ。

(荒牧寛人、千住貞保)

[日経電子版 2022年04月18日 掲載]

ピックアップ

注目企業

転職成功アンケートご協力のお願い
日経転職版を通じて転職が決まった方に、アンケートのご協力をお願いいたします。