あしたのマイキャリア

転職引き合い、35歳でガタ落ち 準備は3年手前から

「日経転職版」特別セミナーから

年齢を重ねると、転職求人数が減る傾向に(写真はイメージ) =PIXTA
年齢を重ねると、転職求人数が減る傾向に(写真はイメージ) =PIXTA

転職を考えるミドル層が増えている半面、転職市場の実情がわかりにくいことから、チャレンジをためらう人も少なくない。こうした疑問にこたえて、転職サイト「日経転職版」は特別セミナー「ミドルの転職学 35歳からのキャリア選択、どう描く?」を開催した。人材業界の最前線で活躍するルーセントドアーズ(東京・港)代表取締役の黒田真行氏に、ミドルの転職について話を聞いた。

――ミドルの転職マーケットの現在の状況を教えてください。

正社員の転職マーケットは、新型コロナウイルス禍のショックがはっきり表れ始めたころの2020年4~5月には前年同月に比べて半減するほど落ち込んでいましたが、21年11月段階ではコロナ前水準の7~8割くらいまで回復しています。

求人マーケット全体は、リーマン・ショック以降、基本的には右肩上がりで、求職者数に対する求人数は増え続けてきた流れがあり、現在はコロナ前同様に人手不足の状態です。これは、若年層やミドル層といった年齢に関係なく言えることで、仕事選びはしやすくなってきていると思います。

――転職の環境がよくなってきている中で、これからのキャリアを考える軸には、何を据えればいいでしょうか。

私が提案しているのは、人生を6つの期間に分けて考え、残り時間を確認するやり方です。例えば、90歳までの人生で考えると、真ん中の折り返し地点が45歳になります。キャリアがスタートして一人前に近づくのが25歳、リタイアするのが65歳とすると、前半20年と後半20年に分けられます。

もし今、45歳ならば、65歳でリタイアすると思えば残り20年です。仕事ができる残りの時間で、自分は何をやり遂げたいのか、どこまでのポジションにつきたいのか、どんな力量・スキルを身につけておきたいのか、仕事のイメージをつくっておくことが大切だと思います。

――35歳以降、賢くキャリア選択をして、自分の人生を自分でかじ取りするためのポイントを教えてください。

転職市場でキャリアの節目とされるのは「35歳、40歳、45歳」です。5歳ごとに転職市場では需要と供給のバランスの変化が大きく起こるフェーズがやってきます。

35歳以降、この節目を超えた瞬間に求人数が減り、選択肢が減っていきます。そして、減ってきたタイミングで市場の異変に気づいて相談にくる人が多いです。ですから、大きな節目がくる前から対応を考えておくことが大切で、節目の2、3年前を目安にキャリアの見直しをスタートするといいと思います。

ここで言うキャリアの見直しは、必ずしも転職することだけでなく、在職中の会社での将来について、自分なりの次の節目の迎え方を考えることも含みます。それによって、将来の選択肢を広げることができると思います。

採用側が求める「成果の再現性」をPR

――黒田さんが提案している、自分自身のマーケットにおける強みを4象限に分けて分析する方法を、詳しく教えてください。

黒田氏が考える、強みの4象限分類
黒田氏が考える、強みの4象限分類

この図のように、「創造的な仕事で組織成果を生み出す」「運用のプロとして組織成果を生み出す」「組織で成果を生む仕事に強みがある」「個人で成果をあげることが得意」という軸で切ったときに出てくるA、B、C、Dの4つの象限のどこに自分が当てはまるのか考える方法です。

30代を超えると、自分が戦っていく上での強みや自分なりの土俵がなんとなく見えてくると思いますが、それをしっかりと言語化・可視化しておくことは、効率的にキャリアを磨いていくために非常に重要なことです。

自分の得意なことはどこにあり、今後はどの方向にキャリアを伸ばしていきたいか、どの強みをより伸ばしていきたいか、この4象限を使って考えると、今後必要な勉強や、転職・起業などの取るべきアクションを考えやすくなると思います。

――実際に転職活動を始めて自分の強みをPRするとき、どんなことに気をつければいいですか。

職務経歴書や面接の自己PRで多くの人がやってしまう間違いは、過去の実績自慢になってしまい、自分のやってきたことを「あれもこれも」と全部アピールしてしまうことです。採用募集をしている企業がどんな能力を求めているのか、どんな採用課題や背景をもっているのか、類推してニーズを読み取る力が弱いのだと思います。

相手のニーズを想定して、自分の実績の中で、何にどう貢献できるのかという「再現性」をPRすることがポイントです。現職の仕事の羅列ではなく、採用する側が「この人は入社後にこのスキルを使ってこんなふうに活躍してくれそうだな」と想像しやすいように強みを伝えることが大切です。

自分なりの創意工夫や自分の役割が、どんな因果関係で成果に寄与したのか、その成果には再現性があるのか、そのあたりをしっかりと語ることが重要です。

――35歳からの転職で、業種や業界を越えた転職を考えることについてはどう思いますか。

会社の事業の賞味期限が厳しくなってきている昨今、特に重厚長大企業に勤めている人から、「上が詰まっていてこれ以上成長できない」「よそ者を認めず、排他的な態度をとっている」「過去の成功体験に固執している」といったことに嫌気がさしているという相談を受けることが増えています。

全体が右肩下がりになってきていることで、会社の将来性に疑問を感じ、「今の業界・会社にいていいのだろうか」「でも今さら別の業界にはいけない」と悩む人は、年齢が上がるほど多いのかもしれません。しかし、30~40代で異業種に挑戦して、ある種の衰退産業から脱出し、成長産業に移って成功する人も多数います。ものおじせずに挑戦したほうがいいと思います。

「まだ大丈夫じゃないか」と言っているうちに、5年、10年はあっという間に過ぎてしまいます。リタイアまでの残りの時間を、「このままで大丈夫だろうか」と思いながら過ごすよりも、思い切って考え方を切り替える意思決定をして臨んだほうが、キャリアの可能性は広がると思います。

黒田真行
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

[NIKKEI STYLE キャリア 2022年01月08日 掲載]

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