セカンドキャリアの勤務場所 こんなはずではの避け方

sfidaM代表 小沢松彦氏

家族とどのくらいの距離までなら、離れて暮らすことを許容できるのか(写真はイメージ=PIXTA)
家族とどのくらいの距離までなら、離れて暮らすことを許容できるのか(写真はイメージ=PIXTA)

セカンドキャリアを考える際、多くの方が3つの「must=私はこうでなければならない」という観点に縛られ、自ら機会を狭めてしまいがちです。このことについて以前、中小企業のバリュー開発・社員教育などを手掛けるsfidaM(スフィーダム、千葉県浦安市)代表の小沢松彦氏に語ってもらいました。前回の1つ目の「お金のmust」に続き、今回は2つ目の「場所のmust」に関して聞きました。

セカンドキャリアの選択肢は様々ですが、多くのビジネスパーソンは転職を考えることが多いでしょう。「転職をしたい」という方に「どんな仕事が希望ですか」と聞くと、大抵の場合は許容できる収入を前提にした上で「やりがいがあり、今までの経験を生かすことができて」という方が多いものです。しかし、例えば、東京に住んでいる方に「あなたの経験が生かせ、やりがいもある良い会社が東北にありますよ。いかがですか?」と尋ねると、途端に「う〜ん…」となります。

セカンドキャリア 「場所」の壁も

返ってくる言葉は「知らない土地だし、家から通えないのはなぁ……」というものです。やりがいや経験を生かせることはもちろん大事ですが、それ以外にも自分の条件とすべきものがあるはずです。その一つが「場所」です。やりがい、経験、報酬、そのうえ家にも近いという仕事が数多くあるものではありません。むしろ、理想に近いともいえます。もちろんそうした仕事が見つかることに越したことは無いのですが、ここでもやはり、優先順位をつけておく必要があります。

場所は報酬とともに、やりがいなど以前の基礎的な条件といえます。具体的に、どのくらいの距離までなら許容できるのかを考えておきましょう。単身赴任が長かったので、もう家族と離れて暮らす事はしたくないという人もいるでしょう。一方、単身赴任には慣れているので、ある程度は離れても良いと考える人もいます。その場合、もっと具体的に許容できる距離を考えてみましょう。「親の介護があるので車で2時間以内のところにしたい」「必要な時にすぐに帰れるように、新幹線で2時間以内のところにしたい」「月1回、飛行機で帰れればいい」。本人の生活の状況によって、現在の家から離れられる距離の条件というのも異なってくるはずです。

知らない土地に抵抗感 発想の転換も

それによって、セカンドキャリアを考える際の場所の選択の幅が広がったり、狭くなったりします。その上で、場所ごとに異なる生活コストと報酬、やりがいのバランスを考えるのが良いでしょう。自分の条件のプライオリティー(優先順位)を考えず、いきなり転職先を探し始めると、いざ具体的な案件が出てきたときに、判断に迷ってしまいかねません。

知らない土地で働くことの抵抗感は誰にでもあると思います。しかし、発想を変えてみてください。電車に乗っていると、別荘地の中づり広告を目にすることがありますよね。それを見て、「あー、いつかあんなところで、自然に囲まれて家庭菜園でもやりながら、のんびり暮らしたいなぁ」と夢見たことはありませんか。しかし、よほど経済的に余裕があって仕事にも追われず、別荘ライフを満喫できるような方は別として、単に老後の移住先として考えてしまうと「こんなはずではなかった」となりかねません。

確かに自然は豊かで、のんびりできる。野菜も食べきれないほどできる。けれど、自分のコミュニティーがないし、仕事もないので、いつしかのんびり暮らしにも飽き、都会に戻ってきてしまうという人も少なくないそうです。ならば、逆転の発想で自分が気に入った土地を見つけ、そこにコミュニティーを得て、その地域に役立つ仕事、その地域の企業に貢献できる仕事という順番で考えてみるのはどうでしょうか。

私の知り合いでも東北のある地域にこうした場所を見つけ、何年も通って人間関係を築き、そして良い土地を見つけて移住した人がいます。自分が気に入った場所、地域での仕事ですから、やりがいもあることでしょう。

コロナ禍のテレワーク 場所問題の解決に一役

新型コロナウイルス禍でテレワーク環境が急速に整いました。これも場所の問題を解決してくれるものになり得ます。家庭の事情があって完全に家を離れることはできないけれど、テレワークと定期的な出勤を組み合わせ、セカンドキャリアの新しい働き方を築くことも可能になっています。こうした働き方を求める人への支援を充実させている自治体も増えてきました。移住先として人気の北海道東川町のほか、移住促進やテレワークを活用した地元企業と都市部人材のマッチングに積極的に取り組んでいる高知県などが有名です。調べてみると、セカンドキャリアを考える際の発想の幅が広がると思います。

セカンドキャリアを築くことが当たり前になった時代。何よりも準備をしっかりすることが大事です。ビジネスパーソンが定年を目の前にしてバタバタするケースを多く見ます。「定年になったら、セカンドキャリアを考えなきゃいけないなぁ」と思いながらも、なかなか体が動かないのが実際のところなのだと思います。ただ、充実したセカンドキャリアをつくりたいと思うのであれば、やはり準備が必要です。

先ほど紹介したような自治体の情報をもとに、旅行を兼ねて気に入る場所を探す旅に出てみるというのも1つの準備だと思います。このようにして、自分を縛るmust(制約条件)を1つずつ緩めていきましょう。

小沢松彦
1962年名古屋市生まれ。85年早稲田大学卒業後、博報堂入社。営業部長や広報部長などを歴任し、2014年に早期退職。セカンドキャリア支援の一般社団法人、社会人材学舎の起業に参加し、後に自身で主に中小企業のバリュー開発・社員教育を手掛ける会社「sfidaM(スフィーダム)」、企業戦略の伴走支援ユニット「Halumni(ハルムナイ)」を設立。現在は経済同友会と兼業。

[NIKKEI STYLE キャリア 2021年12月01日 掲載]

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