パナソニックが希望者を対象に週休3日を導入する方針を表明した。これまでワークライフバランスの改善が主目的だった週休3日だが、リスキリング(学び直し)や採用強化のために取り入れる企業も増えている。一層の普及に向けては働き方の見直しで生産性を向上し、給与水準を維持できるかがカギとなる。

「従業員のウェルビーイング(幸福感)を担保する」――。6日の投資家向け説明会でパナソニックの楠見雄規社長は狙いを説明した。詳細は未定だが、今後、各事業会社で検討を始めるという。副業や地域ボランティアなどの社外活動を後押しする。
厚生労働省の2020年の調査では、国内で「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を導入している企業は8%。多くは小さな子供のいる女性の就業支援などワークライフバランスの向上を目指している。17年に週休3日を導入したヤフーやSOMPOひまわり生命保険は、対象を育児や介護の必要がある人などに限定している。
近年、目的は多様化してきた。22年4月に選択式週休3日を導入する塩野義製薬の狙いは学びの時間の確保だ。ヘルスケアサービスなど新規事業の育成に力を入れるなか、働き手が新たなスキルを習得しやすくする。21年4月、週休3日を取り入れたシステム開発のエンカレッジ・テクノロジは人材獲得の切り札に位置づける。「若年層は余暇の充実を重視する傾向が強く、採用に有利に働く」(同社)
週休3日のメリットは多い。英レディング大学の19年の調査では週休3日を導入した英企業の6割超が生産性が改善したと答えた。19年に週休3日を試験運用した日本マイクロソフトでは9割の従業員が週休3日を「評価」し、電力消費の削減効果なども見られた。
海外では食品・日用品大手の英ユニリーバが20年12月からニュージーランドで週休3日制を試験導入した。給与水準を維持し、労働時間の削減や生産性の改善効果などを検証した上で、他地域への展開も検討するとしている。
もっとも、普及に向けた課題は少なくない。多くの企業では勤務日の減少に比例して賃金も減る仕組みになっている。自分だけが休むことで、同僚など周囲の業務負担が高まることへの懸念も心理的ハードルとなる。これらがネックとなり導入企業は1割未満にとどまる。
19年から週休3日を運用する水処理のメタウォーターは勤務日の労働時間を長くすることで、賃金水準を維持している。17年に夏季限定で週休3日を導入した精米機のサタケ(広島県東広島市)も当初、全社一斉に休んでいたが、取引先の不満に応え、半数ずつ交代で休む形に改めた。
働き方改革の進展で日本の労働時間は減少したが、労働生産性は依然、主要7カ国(G7)で最低だ。働き方にメリハリを付け、意欲の改善にもつながる週休3日への期待は大きい。政府も21年6月に閣議決定した骨太の方針で、週休3日の普及を図ることを盛り込んだ。定着には働き手のニーズに合わせたきめ細かな制度設計が欠かせない。
(雇用エディター 松井基一)
[日経電子版 2022年01月07日 掲載]