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コンサル業界、採用拡大中 転職の7割は異業種から

2021年度下期の転職市場を占う

DXを担う人材は転職市場で奪い合いが起きている(写真はイメージ) =PIXTA
DXを担う人材は転職市場で奪い合いが起きている(写真はイメージ) =PIXTA

転職市場が新型コロナウイルス禍に伴うマイナス成長から急回復を遂げています。その原動力となっているのが企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進です。様々な業界でDX人材の争奪戦が繰り広げられていて、中でもコンサルティング業界の積極採用の姿勢が際立っています。「21年度下期の転職市場を占う」の連載第2回はコンサルティング業界を取り上げます。まずはコンサルティング業界での需要が急拡大しているDX人材について、リクルートの横山賢太郎コンサルタントに聞きました。

転職市場では若手層の採用も復活

2020年はコロナ禍の影響から採用が控えられ、採用ターゲットも「即戦力」に限られた時期がありました。しかし現在では、第二新卒を含む若手層の採用も復活しています。好調な企業では100人以上規模の大量採用を打ち出す企業や、若手を採用し中長期視点で育成する方針の企業も見られます。

若手の採用に意欲を見せている分野の一つが、コンサルティング業界です。コンサルティング業界では、コロナ禍以前の数年前から活発な採用が行われていました。新しいテクノロジーを活用した業務改善やビジネスモデル変革、あるいは「働き方改革」などを背景に、コンサルティングニーズが増加。大きなコンサルティングファームでは年間数千人規模の大規模採用を展開してきました。

コロナ禍でコンサルティングファームの採用も一時期、動きが鈍りましたが、現在は回復。コロナ禍の影響はほぼ残っておらず、再び活況を示しています。21年4月以降、事業会社からコンサルティングファームへの依頼案件はさらに戻ってきました。20年に人員確保のアクセルを踏めなかったコンサルティングファームや部門では、人手が足りない状況となっています。

採用人数が再び増加しているのはもちろんのこと、採用対象層の幅も広がっています。採用ターゲットが「マネジャーレベル以上」に限られていた部門でも、一部ではアソシエイトクラスの求人も出てきています。特に、官公庁やヘルスケア、小売り、流通、消費財、物流の領域を担当するコンサルタント採用が活発で、金融関連も徐々に増え始めています。

コロナ禍でデジタル化が加速 コンサルへのニーズが高まる

コンサルティング業界の採用が活況となっている背景を、もう少し詳しくお話ししましょう。大きな理由は、多くの業界で推進されているDXです。既存業務へのIT(情報技術)ツール導入から、デジタルを活用したビジネスの変革まで、デジタル化の波が広がってきました。

DX推進の動きは4、5年ほど前から一部の事業会社でありましたが、コロナ禍を機にどの企業もテレワークへのシフトや事業活動のオンライン化を余儀なくされ、一気に加速。以前は「5年ほどかかるだろう」と言われていたデジタル化が半年ほどで大きく進んだのです。

いち早くDXに取り組んできた先進企業で成果が表れ始めていることもあり、多くの企業が取り組みを開始しています。社内で「DX推進室」などを設ける企業も増加しました。しかし、自社でDX推進人材を採用しようにも、経験者がまだ少なく、人材獲得が困難な状況です。そこで、「専門ノウハウを持つコンサルタントにリードしてもらいたい」というニーズが高まっているのです。

コンサルティングファームは基本的に人材がいればいるだけ案件を受けることができます。コンサルティングファームは近年、プロジェクトの上流部分である「戦略」だけでなく、「システム開発」「運用」のフェーズも手がけています。そのため、上流を担うコンサルタントから、開発・運用フェーズを担うITエンジニアまで、幅広い人材を増強しているというわけです。

即戦力となる経験者だけを採用ターゲットにすると限界があるので、コンサルタント未経験者、IT未経験者にも門戸を開放。実際、リクルートエージェントのコンサルティング業界に関するデータを見ると、20年度の異業種からの転職者は7割以上に達しました(10年前の2010年度は約5割)。

異業種・異業界の出身者がコンサルタントへキャリアチェンジ

次に、DX人材以外を含めたコンサルティング業界全体の求人状況について、リクルートの山本勇太マネジャーに聞きました。

実際にどのような「異業種出身者」が採用されているのでしょうか。まずITエンジニアについては、システムインテグレーター(SIer)などIT業界出身者がコンサルティングファームに迎えられています。また、IT経験がない第二新卒層も受け入れられています。入社後、1、2カ月程度の社内研修でスキルを磨き、プロジェクトにアサイン。上司とは別に、キャリアアドバイザーがキャリアパスの相談に応じるなど、手厚いサポート体制が整えられているケースもあります。

一方、コンサルタントについては、メーカー、金融、流通、運輸、サービスなど、幅広い業界から採用されています。コンサルティングファームのクライアントは多様な業種にわたります。クライアントの課題を解決する手段は「IT導入」ですが、そこに至るまでには「業務の分析・改善策提案」のフェーズがあります。そこで、出身業界の「業界知識」「業務知識」を生かせるわけです。

例えば、金融業界で経験を積んだ40代の営業マネジャーが採用された例もあり、採用対象年代の幅も広いと言えます。一方、20代の若手がポテンシャルに期待されてコンサルタントに採用されるケースも多数あります。

各業界で何かしらの実績を上げており、かつコンサルに欠かせない論理的思考力や課題分析力、提案力などを備えていれば転職のチャンスはあります。特に、何らかの改善・変革プロジェクトの経験を持つ人、社内横断型のプロジェクトをリードした経験を持つ人などは歓迎されるでしょう。

コンサルティングファームへの転職を目指す人たちの動機で多く見られるのは、「あらゆる分野で通用する汎用スキルを磨きたい」「自身の市場価値を上げたい」「成長したい」です。「安定を得たい」といった志向の人よりも、成長意欲が高く、新たなチャレンジに向かう気概のある人が採用に至っています。

実際、コンサルティングファームでは有益な経験・スキルを手に入れる機会が少なくありません。DXの波は今後も長く続いていくでしょう。大量採用を行っている外資系コンサルティングファームでは、日本よりも先行している海外のDX手法を身に付けることもできます。複数の企業の案件に携わることによって、様々なパターンの課題解決を経験する道も開かれます。

コンサルタントとして経験を積んだ後、事業会社の経営企画や事業企画、スタートアップ企業の経営ボードメンバーに転職する人もいます。将来のキャリアの可能性を広げるために、コンサルティング業界は有効な選択肢の一つと言えるでしょう。

横山賢太郎
大学卒業後、メガバンクに入行。その後、旧リクルートキャリアに入社し金融、IT、スタートアップ、コンサルティングなどの業界でトップタレントに特化した人材紹介サービスを提供。デジタル組織の立ち上げ支援、AI、クラウドなどを活用したトランスフォーメーション支援などに携わっている。

山本勇太
大学卒業後、旧リクルートキャリア入社。一貫してリクルーティングアドバイザー領域でヘルスケア・大手IT外資ベンダー・コンサルティング業界などを担当。現在は外資大手コンサルティングファームを中心としたコンサルティング業界を担当するマネジャーを務める。

[NIKKEI STYLE キャリア 2021年10月30日 掲載]

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