ヤフー、全社8000人を先端IT人材に 再教育で転換

ヤフーは社員の先端IT(情報技術)人材への転換を急ぐ。2023年度までに全社員約8000人を再教育し、業務で人工知能(AI)を活用できるようにする。全社的に新サービス創出や業務効率化に取り組む環境を整える。再教育を通じて人材を付加価値の高い事業にシフトすることは、生産性改善を迫られる多くの日本企業にとっても経営の重要課題だ。

ヤフーは業務内容に応じたAIスキルの習得を社員に求める。アルゴリズム(計算手法)を構築する「データサイエンティスト」、アルゴリズムをサービスや社内業務に組み入れる「データアナリスト」、「AIを実務で活用できる人材」の3種類だ。現在、過半の社員がいずれにも該当していない。

最も高度な技能を持つデータサイエンティストは、顧客企業の課題解決の腕を競う。米アルファベット傘下のコンテストプラットフォーム「カグル」への参加を奨励する。半年ごとに結果を評価し、好成績の社員に最大100万円を支給する。

経理や人事など間接業務の社員も、身に付けるべき最低ラインの技能習得を要請する。各役割で求めるスキルの水準は固定せず、技術進展や社員のスキル向上に応じて順次引き上げる。

AIを学ぶ環境も整備する。社内に新たにオンライン講座を開設。統計解析やデータの管理・運用を学ぶ講座も用意。教材は毎月追加し、AI活用を実践するプログラムを中心に充実させる。

学ぶ意欲を高めるため、半年に一度、AIを使った業務事例を募り報奨する制度を設ける。導入効果が高い案件を手がけた個人・チームに最大100万円を支給する。

国内を代表するネット企業であるヤフーだが、ウェブサイト構築などに必要なHTMLといったプログラミング言語を扱うIT人材が多い。データを活用したサービスが米IT大手の成長エンジンとなる中、ヤフーにとっても大量のデータを解析・処理するAI人材の拡充が急務だった。

AI人材の育成でヤフーはターゲティング広告の精度を高めるほか、個人ごとにビジネスの問題解決などの新サービスを生み出し、競合他社との差異化を図る。

先端IT人材を巡っては人材の流動性の高い米国の企業は中途入社などで採用するケースが多い。一方、一つの会社に長く勤める風潮が残る日本企業は外部から必要数のIT人材を獲得するのが難しい。社内での育成に取り組まざるを得ない側面があるものの、社員は業務に精通するだけに、再教育の成果を効率的に生かせる利点がある。

再教育を通じて付加価値の高い分野に従業員の仕事を転換することは、欧米企業に比べ出遅れている賃金水準の改善にもつながる。

みずほリサーチ&テクノロジーズによると、ビッグデータの処理に欠かせないAIを扱う人材は、国内で30年に最大12万4千人不足するという。

ヤフーのほか、キヤノンが工場従業員を含む1500人にクラウドやAIの研修を実施。日立製作所も20年4月から国内グループ社員を対象にDX専門研修を始めた。21年4月に先端IT人材を19年4月比3倍の3千人に増やした。

[日経電子版 2021年12月22日 掲載]

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