産後パパ育休・マルチジョブ...多様な働き方、制度後押し

2022年10月に「産後パパ育休」が導入され、男性が柔軟に育休を取得できるようになる
2022年10月に「産後パパ育休」が導入され、男性が柔軟に育休を取得できるようになる

2022年は健康保険や育児・介護休業、雇用保険などで制度改正が相次ぐ。会社員らの多様な働き方を支援するのが目的で、家計にも影響しそうだ。現役世代を対象にしたものもあれば、シニア向けもある。病気の治療をしながら働く人にプラスになる見直しもある。自分に関係する改正内容を知り、来年以降の仕事や暮らしに生かしたい。

通算で1年6カ月分支給に

「手当がもらえないとは思わなかった」と話すのは適応障害の治療を続ける会社員のAさん(45)。出勤したり休んだりを繰り返していたが、今年夏に状態が悪化。欠勤し、勤め先の健康保険に傷病手当金を申請したところ対象外と知らされた。2年前に2カ月欠勤したとき受給したので「支給を始めた日から起算して1年6カ月」という条件に合わなかったという。これまでの貯金を生活費に充てる日々が続いている。

傷病手当金は病気やけがで休業している間の所得を保障し、職場復帰を支援する。働けなくなった日の4日目からおおよそ給与の3分の2に相当する額を支給する。現在は支給開始日から数えて1年6カ月を超えない期間だが、22年1月から出勤などに伴い不支給となった期間がある場合、その分を延長し、通算で1年6カ月支給されるようになる。支給期間が始まっている人も今年末時点で1年6カ月に達していなければ、来年から残りの期間は通算化される。

厚生労働省によれば、傷病手当金の支給金額、件数とも増加傾向にあり、1件当たりの金額は約19万円となっている。全国健康保険協会(協会けんぽ)の疾病別の件数割合(20年度)を見ると、55歳未満は精神及び行動の障害が多いが、55歳以上ではがんが多くなる。がんなどで治療をしながら働く人は増えており、「治療のスケジュールに合わせ、柔軟に利用できるようになる」と社会保険労務士の石田周平氏は指摘する。

保険料免除、条件見直し

健康保険法の関係では、同じ1月に任意継続被保険者制度、10月には育児休業中の社会保険料の免除要件が見直される。

育休は月末時点で取得していると同月の年金や健康保険などの保険料が免除されるが、短期の育休で月中に始めて月末前に終わると免除されない。不公平をなくすため、月中でも2週間以上取得すれば免除されるようにする。併せて賞与にかかる保険料の免除は1カ月を超える育休取得者を対象にするよう改める。「賞与月の月末1日だけ育休を取得し、賞与保険料も免除してもらうということはできなくなる」と社会保険労務士の岡佳伸氏は話す。

育休や介護休業の取得を促す育児・介護休業法でも、22年に様々な改正を実施する。まず4月からパートタイマーや派遣・契約社員といった雇用期間の定めがある有期雇用労働者の取得要件が緩和される。現在は雇用された期間が1年以上といった条件を満たさないと取得できないが、この要件を撤廃、正社員と同様の扱いにする。

労使協定を結べば、継続して雇用された期間が1年未満の社員は育休などの対象から除外するとの規定は残るが、パート社員の育休に加え、働き始めて間もないシニア社員にも介護休業を取得できる可能性が広がる。

「産後パパ育休」を導入

育児・介護休業法では男性の育休取得が課題だ。厚労省の調査で女性の育休取得率は8割台で推移するのに対し、男性は約13%(20年度)と低い。期間も女性は9割近くが6カ月以上だが、男性では8割が1カ月未満。国は25年度に男性の育休取得率30%を目標にしており、法改正で利用を促す。

その代表が10月から導入される「産後パパ育休」と呼ぶ男性用の出生時育児休業の制度だ。これまでの育休とは違って、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる。2回に分けて休んだり、労使協定があれば本人の希望で休業中に就業したりといった柔軟な対応も可能だ。新制度でも従来通りの育児休業給付を受け取ることができる。

現行の育休制度も変わる。原則として子が1歳になるまで取得できるが、現在は分割できない。これを10月から2回に分けて取れるようにする。男性は産後パパ育休と合わせると最大4回の分割取得が可能になる。「出産後、母体もきつく最も大変な8週間に男性の休みを取りやすくし、そのあと子が1歳になるまで夫婦が交代で休みながら育児ができるようにする。分割取得ができれば、男性は仕事の状況に合わせて柔軟に休みやすくなる」(岡氏)

育児休業給付は原則として休業開始時の賃金の67%(180日経過後は50%)となっている。「育休の給付金は非課税で社会保険料もかからないため、取得前の賃金とあまり変わらない金額を受け取ることができる」と社会保険労務士の永山悦子氏は説明する。

雇用保険制度では「マルチジョブホルダー制度」が新設される。雇用保険は現在、ひとつの事業所で週労働時間20時間以上、31日以上の雇用見込みといった条件を満たすと被保険者になるが、新制度では65歳以上を対象に2つの事業所の勤務を合計して条件を満たすと被保険者(マルチ高年齢被保険者)になれる。スタートは来年1月だ。「複数の介護事業所などで短時間ずつ働くシニアが該当しそう」と永山氏は話す。

失業時に一定の要件を満たせば高年齢求職者給付金を受給することができる。ただ従来の仕組みだと勤め先が加入手続きをするが、新制度では自分でハローワークに申し出る必要がある。

健保任意継続、保険料増も

健康保険の任意継続被保険者は、退職後もそれまでの健保に最大2年間加入できる制度だ。前年の所得をもとに保険料が決まる地域の国民健康保険(国保)に退職してすぐに移ると保険料が大きく増えることが多く、それを避けたいと利用する人が多かった。多くは60歳以上だ。ただし、現在は原則として2年間加入し続けなければならず、2年目には保険料が下がる国保に移りたくても通常は移ることができない。22年1月からは任意継続しても2年未満で脱退できるようになる。

保険料の決め方も変わる。現在は(1)退職時の標準報酬月額(2)全被保険者の平均の標準報酬月額――のどちらか低い方だが、来年1月から健保組合では(1)のみとすることが可能になる。加入する健保組合が新たな決め方を選べば「退職時の給料が高い任意継続被保険者の保険料はこれまでより上がることになる」(石田氏)。退職後の加入先については、保険料を比較するなどしてじっくり検討する必要がありそうだ。

一方で国保保険料の上限額も22年度は引き上げられそうだ。今年度はコロナ禍で据え置きとなっていたが、年99万円から102万円に上がる見込み。高所得者層の負担が増す。後期高齢者医療制度の保険料の上限も引き上げが予想される。(土井誠司)

[日経電子版 2021年12月04日 掲載]

ピックアップ

注目企業

転職成功アンケートご協力のお願い
日経転職版を通じて転職が決まった方に、アンケートのご協力をお願いいたします。