有力新興の平均年収、上場企業超えも 21年度5%増

NEXTユニコーン調査

ユビーは問診システムの拡大を狙い、医療関連の人材を採用する
ユビーは問診システムの拡大を狙い、医療関連の人材を採用する

スタートアップが優秀な人材確保に向けて待遇改善に動いている。日本経済新聞社がまとめた2021年の「NEXTユニコーン調査」では、2020年度の平均年収は上場企業の平均に匹敵し、21年度は630万円と5%(29万円)増える見通しだ。背景には採用競争の激化がある。給与引き上げに見合う成長を実現できるかが大きな課題になる。

調査で回答のあった188社のうち、その後上場承認を受けた企業などを除いた184社を対象とした。21年度と20年度の平均年収を聞いたところ105社が答え、20年度は601万円となった。東京商工リサーチが上場企業2459社を対象に調べた20年度の平均年収は603万円で、有力スタートアップの年収は大企業とほぼ同じであることが判明した。

スタートアップの21年度の平均年収は630万円と、ここ数年の上場企業平均よりも20万円前後高い水準だ。上場会社の21年度の平均年収について、東京商工リサーチの担当者は「20年度と同等もしくは下がりそう。新型コロナウイルス禍の影響で残業代や賞与が抑えられるからだ」と予測する。21年度はスタートアップの年収が上場企業を上回る可能性が高い。

平均年収を上げる理由(複数回答)を聞いたところ、61社と最も多かったのが「優秀な人材を採用するため」で、「業績が拡大したから」(46社)を上回った。上位の顔ぶれを見ると、デジタル関連の企業が目立つ。

人工知能(AI)問診システム開発のUbie(東京・中央)の20年度の平均年収は約700万円と上場会社平均を上回り、21年度には750万円に引き上げる方針だ。新規株式公開(IPO)に向けた専門人材や、製薬企業との連携に向けたコンサルタント職の採用を強化しているからだ。

AIを使った動画生成サービスのオープンエイト(東京・渋谷)も21年度の年収を約700万円と前年度から1割近く引き上げる意向だ。「中途の人材は大企業との取り合いになる」(沢田裕貴最高財務責任者)ためという。

スタートアップの従業員数は増加傾向にある。9月末と20年末時点の従業員数を回答した166社を集計すると、9月末は合計で1万8391人と20年末比で3843人(26%)増えた。

建設業の施工管理ソフトウエアを手掛けるアンドパッド(東京・千代田)の従業員数は9月末で539人と、20年末比で2倍強に増えた。サービスを電気工事向けや注文住宅向けなど細分化させるなか、各領域で知見を持つ人材を採用した。稲田武夫代表は「特定の産業を変革するというミッションに興味を持った20代の若手が入っている」と語る。

転職事情に詳しいパーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員は「仕事の中身にこだわるハイスペック層が、大企業よりスタートアップを転職先に選ぶ例が徐々に増えている」と分析する。

斬新な事業モデルで新市場を開拓する新興企業にとって、優秀な人材の獲得は生命線だ。いかに自社に取り込むかが中長期的な成長を左右する。

[日経電子版 2021年12月07日 掲載]

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