
政府は2022年から、企業が大学や高等専門学校(高専)に共同講座をつくるのを後押しする新事業を始める。1講座あたり3000万円を上限に費用の最大2分の1を国が補助する。米欧では民間資金を取り込んだ研究や人材育成が盛んだが、日本は民間との連携が遅れている。電池や素材、半導体など企業の研究開発、競争力の向上につながる分野を中心に専門人材の育成を促す。
共同講座は民間企業の資金で教授らの人件費や研究費用をまかない、企業と教育機関がテーマを共有して教育や研究を行う仕組み。大学や大学院、高専に企業が共同講座を設けるか、自社の人材育成につながる学科・コースを設置する場合に補助の対象とする。日本は米国に比べ、大学発のスタートアップ人材が少ない。企業ですぐに活躍したり、起業意識を持ったりする人材を増やす狙いがある。
2021年度補正予算案に費用を計上する予定で、総額は今後詰める。まずは10件超の新設を支援する。脱炭素やデジタルといった成長分野を想定し、年明けにも公募を始める。経済産業省が文部科学省などと連携して年内に人材育成に関する会議をつくり、今後の拡大策を議論する。企業が大学などの経営に参画しやすい制度も検討する。
文科省の科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2021」によると、主要国の大学の研究開発費のうち、企業の資金を活用している割合が最も大きかったのは中国の26.6%で、韓国は14.3%、ドイツ13.5%、米国5.4%などと続いた。日本は3.1%だった。
日本ではこれまでにダイキン工業が東京大学と協定を結び、同社の資金支援で理学部などに新たな講座をつくった。こうした取り組みを増やす。
米国は主要大学が民間資金を取り込み、研究や人材育成の質を高めている。マサチューセッツ工科大学は、1948年につくった産学連携プログラム「ILP」などを通じて800以上の企業と組み、講座を開いたり、研究開発に取り組んだりしている。
[日経電子版 2021年11月16日 掲載]