年収1000万円超のDX人材へ 専門知識なくても道開ける

クライス・アンド・カンパニー社長 丸山貴宏氏

企業が今、強く求めているのはDX人材(写真はイメージ=PIXTA)
企業が今、強く求めているのはDX人材(写真はイメージ=PIXTA)

現在、企業のニーズが非常に高まっている人材として、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関わる人材が挙げられます。DXとは何でしょうか。デジタル化による業務効率化を指す人もいれば、単なるデジタル化にとどまらずにイノベーション(技術革新)を起こすことだと言う人もいます。人材紹介を手掛けるクライス・アンド・カンパニー(東京・港)の丸山貴宏社長にDX人材について聞きました。

今回はDXを「デジタル化による業務変革」と定義して話を進めたいと思います。業種や事業規模の大小にかかわらず、現在は多くの企業が「DXを成功させなければ、わが社の将来はない」と切羽詰まった印象を受けるほど、DXに必死に取り組んでいます。

社内にさまざまな事業部を抱える大手企業はデジタル事業部門がDX人材を採用しているのはもちろん、その他の事業部でもDXに取り組んでいるため、同じ会社の中でDX人材の取り合いが発生しているケースもあります。

DX人材へのニーズは今後も続く

このような状況なので、おのずと転職市場でDX人材に提示される給与水準も上昇してきています。最近、当社で紹介したDX人材案件は全て年収1000万円を超えています。

DX人材に対するニーズの高まりはいつまで続くのかと考えると、これは一時的なトレンドで終わるものではないと思います。デジタルを活用した業務変革はしばらく廃れることはなく、世の中で必要とされる主流のスキルになる可能性が高いです。

パソコンが一般に普及し始めてビジネスパーソン必須のスキルになったり、表計算ソフトが登場して事務職に欠かせないスキルになったりしたのと同じようなことが、これからDXで起こるかもしれません。ただし、DXの詳細な中身は時代によって変化し、DX人材に求められるものもその時々で変わっていく形になると見ています。

これまでDXやデジタル部門とあまり関わりのなかった人でも年収を上げるために、あるいはDX化が進むビジネスの世界で生き残るために、デジタルシフトに取り組むにはよいタイミングだと思います。今後は現在行っている業務を自分自身でデジタルを活用して効率化したり、自分ではできなくても情報システム部門や外部の協力会社と一緒にDX化したりする能力が一定以上のポジションに就くには欠かせなくなってくるでしょう。

「ノーコード」がDX人材への道を開く

また、「IT(情報技術)を使ってこんなアイデアを実現したい」というときに、それができるかどうかの判断や、ITと人間が行う業務の切り分けを見極める能力はマネジャークラスには不可欠になってきます。米IT大手のグーグルやアップルなど「GAFA」のトップの経歴を見れば、ITに関する理解と経験はこれからのビジネスに不可欠だと分かります。

これまでDXに関する業務は主にIT側の人が行っていましたが、やはり大幅な業務効率化やイノベーションの創出にはそのビジネスに対する深い理解が必要で、ビジネス側の人間がしっかり関与していく必要があります。

ビジネス側の人間の関与を阻んでいたのはデジタルスキルの壁です。プログラミングが分からなければ、アプリを作れませんでした。ところが最近、プログラミングの知識がなくてもアプリやウェブサイトを作れる「ノーコード」技術の普及でデジタルスキルの壁が大きく下がってきました。

ノーコードとはプログラミング言語で記述することなしに、アプリやウェブサイトなどのソフトウェアを開発できる技術です。ノーコードツールを使えばプログラミングの知識がなくても、インターネットショップの開店やスマートフォンアプリ、業務用アプリの作成などが可能になります。

つまり、プログラミングの専門知識を持っていない人でもデジタル化やDXに関わることができるようになるわけです。これまで身に付けてきた業務の知識や経験を生かせることにもなります。

ノーコードは既存のサービスに比べ、開発スピードの向上や大幅なコスト削減が期待できます。例えば従来、事業会社の活動を支援するSIer(システムインテグレーター)に数千万円で丸投げ発注していた業務がノーコードを使えば1桁安くできるというようなことにもつながります。

IT大手もノーコードに着目しており、米アマゾン・ドット・コムは「Honeycode」というノーコードツールを2020年に発表。米グーグルはノーコードアプリ開発のスタートアップ企業である米アップシートを買収し、サービスを提供しています。

このような状況を踏まえると、これまで業務であまりデジタルに関わりのなかった人にとって、ノーコードの登場は大きなチャンスです。エンジニア以外でノーコードを使いこなせる人材はまだ多くありませんから、今から勉強すれば強力な武器になるでしょう。

もちろんノーコードにはできることに限りがあります。込み入った作業などはプログラミングが必要ですし、ノーコードでアプリを作成するにしてもエンジニアの方がはるかによいものを作れます。しかし、DXに対するニーズの高さやIT人材不足を考えれば、ノーコードに対する需要が今後、高まるのは確実です。

丸山貴宏
クライス・アンド・カンパニー社長。リクルートで人事採用を7年担当した後、1993年に30~40代の経営幹部を中心にしたビジネスプロフェッショナルのための人材紹介会社、クライス・アンド・カンパニーを設立。著書に「自分に合った働き方を手に入れる!転職面接の話し方・伝え方」「そのひと言で面接官に嫌われます」ほか。

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年09月29日 掲載]

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