新興勢が「学び直し」けん引 デジタル人材確保を支える

NEXT1000

新型コロナウイルス禍で経営環境の不透明感が増すなか、優秀な人材の獲得を求める企業の需要は高まっている。従業員のリスキリング(学び直し)により、デジタル化に対応できる専門人材を育成する機運も盛り上がってきた。こうした大手企業を中心とする人材確保や社員教育のニーズを、新興勢のオンライン学習講座や採用管理クラウドシステムといったサービスが支えている。売上高100億円以下の中堅企業「NEXT1000」を対象に有力企業を紹介する。

ランサーズはオンライン上で指導役を探せるサイト「MENTA(メンタ)」を運営する
ランサーズはオンライン上で指導役を探せるサイト「MENTA(メンタ)」を運営する

「在宅勤務で浮いた通勤時間を生かし、新たなスキルの習得を望む会員が増えた」。スマートフォン向けに動画講座を提供するKIYOラーニングの綾部貴淑社長は手応えを語る。6月時点の会員数は約12万人とコロナ禍前の2019年末に比べ2.1倍に、法人契約は176社と同2.7倍にそれぞれ拡大した。リスキリングでデジタル人材を望む企業の引き合いが強い。

講師が解説する動画講座は1本あたり30分前後にまとめ、視聴後には問題演習を繰り返して知識の定着を後押しする。人工知能(AI)が理解度を分析し、学習の時間やペースを助言する。IT(情報技術)関連など29種類の資格の勉強ができ、難易度の高い司法試験や中小企業診断士試験にも対応。法人向けには、ビジネスマナーや表計算ソフトの使い方といった資格取得以外の講座も300種類ほど提供している。

競合他社はオンライン講座と対面授業や紙の教材を組み合わせる事業モデルが多いが、KIYOはスマホやパソコンだけで完結する点が特徴だ。対面式の教室を持たずに運営コストを圧縮し、受講料は司法試験対策で約10万円、中小企業診断士試験では約5万円と、一般的な資格学校などの数分の一に抑えている。

総務省がまとめた21年の情報通信白書によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める企業の課題として、全体の53%が「人材不足」を挙げた。回答のなかでは最も多く、2番目の「費用対効果が不明」(33%)を大きく上回った。優秀な人材の獲得や育成は待ったなしの状況で、オンライン教材などのハード面に加え、一人ひとりの学びをサポートするソフト面のサービスも注目を集めている。

クラウドソーシング大手のランサーズが運営するサイト「MENTA(メンタ)」は、プログラミングやウェブデザインなど8分野について、オンライン上のメンター(助言者)を探せる。6月末時点の登録者は累計3万4600人と、1年前の2.1倍に伸びた。大半はプログラミング関係の技術を学んでいるという。

10月には法人向けサービスを始めた。大手企業ではプログラミング言語の知識が薄くてもソフトウエアやアプリを開発できる「ノーコード」などの活用が増え、エンジニア以外の社員にもIT関連の知識が求められる場面が多くなってきた。ランサーズは新サービスで需要に応えられるとみる。

メンターからは授業や講義を受けるのではなく、自主学習で分からなかったポイントが出たときに相談する使い方が基本だ。「プログラミングのコツを教えてほしい」「解決できないバグを直してほしい」といった要望にきめ細かに対応する。

企業の課題はリスキリングだけではなく、少子化で学生数が減るなかでは採用戦略も重要性を増している。就職情報サイトを運営するワンキャリアが提供するのが、競合他社の選考状況を参考にしながら採用計画をクラウド上で管理するシステム「ワンキャリアクラウド」だ。

ワンキャリアの就職サイトは、大手サイトにはない学生の口コミ機能を備えている。ここに蓄積した45万件超の口コミを基に、企業ごとの面接内容や内定時期などを把握。ワンキャリアクラウドの顧客企業は、学生以外では得にくい選考関連情報を入手できる。学生がサイトで「お気に入り」として登録した企業を分析し、自社がどの企業と比較されているかを確認できる機能も付いている。

20年4月のサービス開始から約1年半で、キーエンスなど大手を含む1000社以上が導入した。コロナ禍で新規事業を模索する企業は多く、従来とは異なる業界の採用動向を分析する使われ方も増えているという。システムの機能を拡充し、採用計画に加えて応募者の選考状況も管理できるようにする計画だ。

ビジネス・ブレークスルー柴田社長、オンライン研修を「個人化」~トップの戦略

ビジネス・ブレークスルーは社会人向けに、ビジネススキルや英会話といった教育プログラムを提供する。1998年の設立当初から、業界でいち早くオンライン講座に対応した。受講生の興味をひく内容づくりや、進捗が遅れている受講生への支援体制を整えてきた。20年超をかけて培ったノウハウを武器に、今後は「一人ひとりに合った研修の『パーソナライズ化』を進める」(柴田巌社長)という方針だ。

ビジネス・ブレークスルーの柴田巌社長
ビジネス・ブレークスルーの柴田巌社長

企業でリスキリング(学び直し)への関心が高まるなか、新型コロナウイルス禍で1カ所に集まる研修は難しくなっている。オンライン研修の引き合いは強まっており、2021年4~9月期の連結売上高は前年同期比16%増の32億円、営業利益は63%増の1億6100万円となった。

柴田社長は「以前は階層別で参加者全員が同じ内容を学ぶ研修が主流だったが、現在は学習のニーズが多様化している」と指摘する。ただ、個人で受けるオンライン講座は集合研修以上にモチベーションを維持する仕組みが重要になる。

このため20年には、受講生からキャリア目標や現在の職務などを聞き取り、必要な講座を自動的に推薦するサービスを始めた。今後は各自のニーズを入力してもらい、データを効率的に収集するシステムも開発する計画だ。

プラスアルファ・コンサルティング、人事管理クラウドサービスを提供~ネクスト企業プロファイル

プラスアルファ・コンサルティング(PAコンサル)はクラウドで人事情報を管理するサービスを手掛ける。従業員の経歴や資格、上司の評価といったデータを蓄積。そこから人工知能(AI)がスキルや仕事への適性を解析し、プロジェクトの人員選抜や人事異動に役立てる。日報や面談を基に離職の可能性を予測する機能も備えている。

PAコンサルは社員データを一覧できる人事管理システムを手がける
PAコンサルは社員データを一覧できる人事管理システムを手がける

主力のクラウドサービス「タレントパレット」は提供開始から約5年でカルチュア・コンビニエンス・クラブやトクヤマなど約700社が導入した。クラウド上に従業員の顔写真や名前、所属などを一覧で表示。各自のページに移動すると、異動履歴や過去に受講した研修、評価といった情報がまとめられている。

働き方改革で生産性向上を図る企業は増えており、「経営層の人的資本に対する意識は高まっている」(PAコンサルの三室克哉社長)。たとえば、1000人超の従業員を抱えるある大手企業は、IT(情報技術)人材として学び直しができそうな社員を探すため、タレントパレットを活用しているという。

新型コロナウイルス禍で在宅勤務が普及するなか、離職可能性を予測する機能の引き合いも強まってきた。日報や社員アンケート、上司との面談結果といった文字情報をシステムで自動的に読み込む。その上で過去に離職した社員の発言と比較し、離職可能性を数値化する仕組みだ。

この技術は採用活動での内定辞退防止にも転用されている。内定者のメールのやり取りやイベントへの出欠状況などを自動的に記録。一定期間にわたって動きがないような内定者がいた場合は、採用担当者にアラートを通知する。

タレントパレットの納入が増え、2021年9月期の単独業績は税引き利益で前の期比16%増の11億円を見込んだ従来予想を上回ったもよう。当面は企業のデジタル化を追い風にタレントパレットは好調さを維持するとみている。

[日経電子版 2021年11月08日 掲載]

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