キーエンス、平均年収10年で3割増 稼ぎを人に投資

キーエンスの2021年4~9月期決算は最高益となった
キーエンスの2021年4~9月期決算は最高益となった

工場センサー大手、キーエンスの業績が再び拡大に転じた。28日発表した2021年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比68%増の1417億円と3年ぶりに過去最高となった。強みは56%と高い営業利益率を背景に、給与を通じ従業員へ投資していることだ。平均年収は1700万円台と10年で3割増えた。

同社は生産ラインに取り付けて生産状況を確認したり製品を検査したりするセンサーなどを手がける。海外の工場自動化の需要を捉え、前期の売上高、営業利益はともに10年前の約3倍だ。時価総額は16兆円弱と上場企業で3位だ。

幹部は「高収益の源泉は商品力」と説明する。安価に不良品を判別するセンサーなど製品の7割は独自性が高いという。ただ技術力だけに頼ってはいない。連結従業員数は約8000人と競合のオムロンの3分の1だ。生産は工場を持たず外部委託。販売は代理店を通さず直接営業をかける。

強みは顧客への密着で得たデータ分析に基づく提案営業だ。顧客の工場や倉庫に足しげく通い、悩みや自社製品の活用事例を調べ、社内の開発担当者と共有する。長野県の部品会社幹部は「連絡するとすぐ駆けつけてくれる」と話す。

密着営業は部品調達でも力を発揮する。競合が半導体不足に苦しむなか、注文を受けた日に出荷する「当日出荷」を続ける。需要増を見越してセンサーなどに使う半導体の在庫を積み増しているためだ。キーエンスの中田有社長は「半導体不足の影響は大きく受けてはいない」と話す。

営業力を支えるのが高い給与水準だ。従業員の前期の平均年収は1751万円。日経500種平均株価銘柄の従業員100人以上の企業で首位だ。過去2年間は米中対立や新型コロナウイルス禍で業績が振るわず年収も減ったが、業績の改善に伴って年収が増える好循環に転じる見通しだ。

決算発表の記者会見をするキーエンスの中田有社長(28日午後、大阪市中央区の大阪取引所)
決算発表の記者会見をするキーエンスの中田有社長(28日午後、大阪市中央区の大阪取引所)

キーエンスは営業利益の一定割合を年4回の一時金や毎月の賞与で支給する。同社は「業績への貢献が社員の実入りに反映されるようにし、士気を高めている」と話す。

企業の生み出す「付加価値」に対する人件費の比率を示す「労働分配率」を有価証券報告書から算出すると、キーエンスは前期の単独ベースで13%。経済産業省調査の企業平均(50%)より低い。稼ぐ事業モデルで付加価値を大きく伸ばし、高年収につなげている。ただ「企業体質に合わない人は辞めていく」(同社OB)との声もある。

日本企業はバブル崩壊後の「失われた30年間」で低成長にあえぎ、従業員の給与も伸び悩みが続く。国税庁によると、国内事業会社の平均年収は440万円前後と横ばいで推移する。キーエンスのモデルは日本の現状を打破する手掛かりの一つとなり得る。

[日経電子版 2021年10月29日 掲載]

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