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SDGs担当職、導入広がる 計画立案、PDCA管理で支援

注目の「新職種」転職

「SDGs」担当職には巻き込み力が期待される(写真はイメージ) =PIXTA
「SDGs」担当職には巻き込み力が期待される(写真はイメージ) =PIXTA

企業のSDGs(持続可能な開発目標)対応が加速するにつれて、求人数が増えているのが「SDGs」担当職だ。「注目の『新職種』転職」連載第3回ではSDGsを推進する職種を取り上げる。転職市場の最新事情に詳しいパソナの岩下純子常務執行役員に話を聞いた。

3年で求人数が急増

――SDGsに関連する職種の求人が増えているそうですが、いつ頃から増えてきたのでしょうか。

「SDGsは2030年までに持続可能でより良い世界をつくることを目指す国際目標として、国連サミットで15年9月に採択されました。日本企業がSDGsの推進を喫緊の課題だと強く認識したのは19年ごろ。当時の安倍晋三首相が20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で世界全体に向けて取り組みをアピールしたこともあり、実現に向けた動きが加速しました」

「実際、ここ2~3年で企業の動きはめざましく、SDGs、サステナビリティー(持続可能性)関連職種の求人数は、3年前と比べて約8倍に増加しています。その中心は大手企業です。株式を公開している企業はESG(環境・社会・企業統治)に着目する投資家向けに発信していく必要もあり、専門の担当部署を置くなど体制を整えています。業種では製造業が多いです。工場を抱えるメーカーは、他の業種よりも環境面に配慮した経営へ移行が急がれています。海洋プラスチックや二酸化炭素(CO2)の排出量削減など、対応を進めていることの表れだといえるでしょう」

――「SDGs担当」「サステナビリティー担当」など、様々な職種名があります。

「職種名に限らず、部署名も多様です。新しい仕事ということがあるのに加え、企業によって体制づくりのスピードに差があるからです。『SDGs』『サステナビリティー』というキーワードのほか、SDGsと共通点が多い『ESG』も含めて、『サステナビリティー戦略部』『ESG推進室』など、様々な名前の部署が存在します」

「『組織のあり方は会社の意思』とも言われますが、そうした名称に、企業のSDGsへの取り組み具合が表れているといえるでしょう。『部』なのか、『委員会』なのか。そこに配置されている人数も、企業の力の入れ方や進捗ペースの指標といえます。専任の担当者を置いていない企業では、『広報』や『経営企画』の部署でSDGsやESGに関する業務に取り組むケースが多いです」

求められる「巻き込み力」「発信力」

――「SDGs担当」は、どのような仕事をするのでしょうか。

「SDGs推進についてKPI(数値目標)を立てるなど目標を設定し、それを推進していく施策を企画から立案して進めます。実行するための体制づくりも含めて、一通りの流れを整えることが業務の内容です。単に社内で取り組みを進めるだけではなく、その取り組みを正確な情報として社外に伝えるところまでが求められます」

パソナの岩下純子常務執行役員
パソナの岩下純子常務執行役員

「SDGsの目標のうち環境への配慮を例に挙げると、まず海洋プラスチックや脱炭素に配慮する社内の体制や仕組みを整えます。さらに、投資家向け広報(IR)や経営企画の担当者とも協力し、工夫して発信を進めていきます。環境以外の目標、例えば『ジェンダー平等』や『働きがいも経済成長も』であっても同様です」

――どのようなスキルや経験が必要でしょうか。

「企画力、実行力、発信力が重要です。KPIを設定し、PDCA(計画・実行・評価・改善)を回して社内全体を巻き込む力が求められます。企画力といっても、SDGsを推進するために商品をつくって世の中にアピールをするわけではありません。モノを生み出すのではなく、自社の取り組みや姿勢といった無形のものを価値としてどのように企画し、伝えていくか。この点に注力していくことになります」

「SDGsに関して、知識面についてはある程度の専門性が求められますが、その活動を推進するにあたってはそれほど特殊な能力が必要なわけではありません。企画をしてKPIを管理し、社内のステークホルダー(利害関係者)と連携して実行していくことは、企画系の部署であれば一般的に要求される力といえます。さらにマネジメント力やプレゼンのスキルが加わると一層、周囲を巻き込むことにつながるでしょう」

今後は大手から中堅・中小へ

――どういった人に向いていますか。

「転職したばかりでもためらわずに、自分から社内の各部署とかかわっていける人が向いています。初対面でも積極的に人間関係を築いて、情報を集められる心意気があるといいでしょう。営業のように自分で行動して売り上げを立てる仕事ではなく、社内の各部署を巻き込んでいくことが、職務を達成するうえで重要なポイントとなるからです。社内の最新情報を率先して集め、適切な形でアウトプットしていく点ではIRや広報の仕事に似ています。広報や経営企画のように社内でネットワークを築いてきた経験があると、評価されるでしょう」

「新しい職種なので専門人材が少ないところに、即戦力を求める機運が高まっており、経験者をめぐって争奪戦の様相を呈しています。全くの未経験からでは難しいですが、例えば総務や経営企画などで少し関わった経験がある、多少知見があるという程度であっても採用の検討対象になる可能性があるといえます。経験者が少ない分、経理や人事のような他の管理部門に比べれば門戸を広く開いており、業種や会社の規模が異なってもそれほど大きな問題にはならないようです」

――今後、この職種はどのように広がっていくでしょうか。

「現在は大手企業が中心ですが、大手が取り組むということは早晩、その取引先となっている中堅・中小企業にも波及していくでしょう。先行して取り組みを進めている企業、具体的にはメーカーからコンサル、その次は流通・サービス業へといった流れが予想されます。昨今の社会へのSDGsの浸透具合を見ても、企業規模や業種にかかわらず、SDGsに取り組む企業が消費者に選ばれるようになるのは明らかです」

「今後大いに伸びていく職種ですから、転職者よりも求人が増えるスピードのほうが圧倒的に速いでしょう。現在は企業の取り組み具合の差が、転職市場で人の流れを生んでいるともいえます。現職でSDGs関連業務を多少経験した人が、より本格的に取り組む企業への転職を考えるケースも増えています。今後さらに市場が広がってくれば、知識・経験とも豊富に持ち合わせている人が流動化していくのではないでしょうか」

「SDGs達成の目標は『2030年』と掲げられていますが、その後に仕事がなくなるわけではありません。SDGs関連の職種が、広報やIR、経営企画と並ぶキャリアの一つの軸になっていくでしょう。キャリアを広げていくにあたり、面白い選択肢になると思います」

(日経転職版・編集部 木村茉莉子)

岩下純子

パソナ 常務執行役員。大学卒業後、大手通信会社へ入社。退職後、専業主婦、派遣社員を経て、2003年パソナキャリア大阪支社(現パソナ 人材紹介事業本部)へ入社。現在は同社人材紹介事業本部副本部長。

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年09月25日 掲載]

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