「社長の右腕」候補、地方に橋渡し 金融庁が人材紹介

金融庁は大企業で働く人材を地方に橋渡しする
金融庁は大企業で働く人材を地方に橋渡しする

金融庁は今秋からメガバンクなど大企業で働く管理職や専門人材を地方の中小企業に紹介する事業を本格的に始める。転職や出向の希望者を専用システムに登録してもらい、地方企業へのマッチングを担う地域金融機関が検索できる体制を整えた。豊富な経験を持ち、社長の右腕になる人材を中小企業に紹介し、事業改革を後押しする。

金融庁は6月にシステムを完成させた。官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)が管理し、10月に人材紹介業を担う地域銀行と信用金庫、提携人材紹介会社に無料開放した。リストには現時点で、大手行の行員ら数百人が転職や出向の希望者として登録している。大手メーカーや商社など80社ほどに協力を呼びかけ、徐々に登録数は増えている。

新型コロナウイルス禍の長期化で、地方の中小企業は大きな影響を受けている。東京商工リサーチによると、2020年に全国で休廃業・解散した企業は19年比15%増の4万9698件、00年の調査開始以降の最多を更新した。

政府や金融機関による資金繰り支援で倒産件数は抑えられているが、コロナ禍の収束後に売り上げが回復する見通しが立たない中小企業も多い。このため追加の借り入れをためらい、先行きへの不安から休廃業に踏み切るケースも増えている。

金融庁が中小企業を対象に21年に実施したアンケートでは、「経営人材が不足している」との回答が66.6%にのぼった。経営人材が必要になった場合、誰に紹介してもらいたいか尋ねると、3分の1が「メインバンクやそのグループ会社」と回答した。地方の中小企業は金融機関に経営人材を紹介してもらいたいとのニーズは高い。

金融庁は大企業人材の紹介を通じ、中小の事業転換・事業拡大を後押しする。今回の事業では、地域金融機関が企業側が求める経験や能力を具体的に聞き取った上で紹介し、企業が採用すれば国から補助金が入る。

能力の高い人材をより円滑に、低コストで採用できることが利点だ。金融庁は18年に監督指針を改正して人材紹介業を金融機関の付随業務として認めており、取り組みを加速させる狙いもある。

大企業にとっても社員のセカンドキャリアの確保は重要な課題のひとつだ。メガバンクの場合、役員にならなければ52歳前後でグループや取引先企業に転じるのが通例だが、「取引先への出向・転職の枠は徐々に細ってきている」(メガバンク幹部)という。これまでの経験を地方の中小企業で生かせれば、それぞれにメリットが期待できる。

もっとも、大手企業の転職候補者は東京に集中しており、地方企業への関心が高いとはいえないのが現状だ。金融庁は転職候補者を対象に、8月から中小の経営実態や地域の実情などを事前に理解してもらう研修も始めた。大企業への働きかけを強め、最終的に1万人規模の登録者をめざす。

(小野沢健一、上田志晃)

[日経電子版 2021年10月17日 掲載]

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