英語力で変わる転職時の年収 800万円以上は中級必要

ジェイエイシーリクルートメント 黒沢敏浩プリンシパルアナリスト

英語力「上級」は年収1000万円超も(写真はイメージ=PIXTA)
英語力「上級」は年収1000万円超も(写真はイメージ=PIXTA)

グローバル化が加速する時代。仕事のスキルに語学力が備わると、大きなプラスになります。語学力を磨いておくと、今後のキャリア形成にどんな好影響をもたらすのでしょうか。人材紹介会社のジェイエイシーリクルートメント(JAC)の黒沢敏浩プリンシパルアナリストに語ってもらいました。

あなたにとって仕事のやりがいとは何ですか? 仕事のやりがいはお金が全てではありませんが、ビジネスパーソンにとって収入は働く上で重要な要素の一つであることは間違いありません。そして、英語力と年収はどのような関係にあるのでしょうか。定性的な情報はよく耳にしますが、客観的かつ定量的な情報は意外と少ないものです。

英語力「初級」と「中級」の年収差は116万円

当社で転職支援を行った紹介実績データから、各求人の職務に就くために必要とされている英語力のレベルごとに、どの程度の年収で採用されているかを分析してみました。その結果、以下のグラフの通り、英語力と採用時オファー年収の水準は比例することが分かりました。

求められる英語力が「初級」の求人の採用実績の平均年収は721万円。これが「中級(社内などを中心にビジネスで使えるレベルが『中級』の定義)」に上がると837万円に上がり、さらに「上級」の場合は1067万円と中級に比べても200万円以上高くなりました。

このデータは実際に転職市場で採用が決まった求人のものです。これは年収800万円以上の人が転職を考える際、英語力のレベルの高さが本人のキャリア設計や人生設計の選択肢の幅に大きくプラスの影響をもたらす可能性を示しています。

当社で転職を支援した方の事例を紹介します。日系中堅メーカーに勤める40代の田中さん(仮名)は国内での法人営業で経験と実績を重ね、当社に転職の相談をした際は支店長として活躍していました。ただ、田中さんは仕事内容や職場環境について悩んでおり、転職を検討していました。

英語が多少できる 年収900万円の転職に成功

当社から田中さんの経験とスキルにマッチした求人案件を何件か紹介したものの、田中さんには「これだ!」というものがありませんでした。そんな中、当社のコンサルタントAが、日本への進出からまだ日が浅く、日本での事業拡大を急いでいる欧米外資系X社の営業部長の案件を田中さんに紹介しました。自社製品の競争優位性も明確で、田中さんがもともと重視していた職務内容やその他の諸条件を含めてもこれまでより良い面が多い求人でした。以下は当社のコンサルタントAと田中さんとのやり取りです。

コンサルタントA「田中さん、この求人はいかがでしょう?」

田中さん「外資系で、求められる英語力も中級とあります。私はそんなに英語を使ったことがあるわけではないので、自信がないです」

コンサルタントA「先方にも確認しましたが、この求人は英語が流ちょうな人を紹介してほしいというものではありません。田中さんはこの業務内容としては高い成果を出す自信がありますよね」

田中さん「はい。商材は多少変わりますが、業界や仕事の進め方、マネジメントのやり方はイメージがつくので、仕事と成果には自信があります」

コンサルタントA「田中さんは英語が全く話せないわけではないのですから、後は先方の本国トップとオンライン面接で話をしてみて、先方が『この英語レベルでは仕事を任せられないな』と判断したら、採用に進まないかもしれません。でも『この英語レベルなら意思疎通できる。ぜひとも高い実力と実績のある田中さんの力を借りたい』と判断したら、田中さんの英語力を理解した上で採用されるはずです。まずはチャレンジすることが大切で、応募する前から入社後のことを心配しなくても大丈夫ですよ」

田中さん「そういうものなのですね。それなら応募してみます」

田中さんはその後、「自分は仕事ができる上、ビジネス英語もできるはず」とマインドセット(思考様式)を持ち直し、本国との英語面接も何とかクリア。営業部長として見事に内定・入社を果たし、年収も前職の900万円を維持したまま仕事内容の希望を満たす転職をすることができたのです。

日本企業が社員の英語力を測る指標は英語検定試験「TOEIC」が一般的であることは周知の事実ですが、実際に仕事で求められる英語力はコミュニケーションツールとして、どれだけ上司や同僚、取引先と仕事をうまく進められるかが重視されます。田中さんのように、英語が少しでもできる人は自信を持ってチャレンジをすることで、キャリアと年収を高いまま維持もしくはアップでの転職の可能性が高まります。

留学経験者・帰国子女でなくてもOK

「外資系への転職や英語を使う仕事は留学経験者や帰国子女並みにできないと無理」と思い込んでいる方も多いかもしれませんが、そんなことはありません。留学や海外在住の経験がなくても、仕事で英語を使って活躍している人は多いのです。

考え方を変え、自分の市場価値を正しく理解することは人生設計に大きな選択肢とゆとりをもたらします。自身が持つ英語力を判断するのは自分ではなく、一緒に仕事をする相手。「自分は英語が少ししかできないから、英語を使う仕事への転職は無理」という固定観念を払拭することが、高い年収を維持できる転職の一助となるでしょう。

黒沢敏浩
ハイクラス・管理職の転職に強い人材紹介会社のジェイエイシーリクルートメント(JAC)でマーケット研究などを担当し、ホワイトカラー転職市場や給与の分析などで約20年の経験を持つ。人材サービス産業協議会の「外部労働市場における賃金相場情報提供に関する研究会」委員や日本人材マネジメント協会執行役員も務める。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。国家資格のキャリアコンサルタント。

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年09月08日 掲載]

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