塩野義製薬、週休3日可能に 学び直しや副業を後押し

週休3日で知見の吸収や外部の人脈づくりに使える時間をつくり、革新力を高める
週休3日で知見の吸収や外部の人脈づくりに使える時間をつくり、革新力を高める

塩野義製薬は2022年度から、希望する社員が週休3日を選べる制度を始める。研究部門や工場勤務を含め、全社員の7割にあたる約4000人が対象となる。大学院でのリスキリング(学び直し)などを想定し、同時に副業も解禁する。知見の吸収や外部の人脈づくりに使える時間をつくり、組織全体のイノベーション力を高める。

日本政府は6月に閣議決定した「骨太の方針」で、企業による選択的週休3日制の導入促進を盛り込んだ。厚生労働省の20年の調査によると、休みが「完全週休2日より多い」制度を持つ企業は8%にとどまる。

製薬業界では人工知能(AI)など先端技術を駆使した創薬や、デジタル技術を持つスタートアップと連携したアプリや機器の開発が潮流となっているが、海外大手に比べ日本勢は出遅れている。社員のIT(情報技術)スキル向上や、新規ビジネス創出につながる経験が不可欠と判断した。

希望者を募って22年4月から運用を始める。土日と、希望する特定の曜日を休みに設定できる。給与は週休2日の場合の8割に下がる。1年ごとに申請し直すことが可能。仕事を身につけている最中の入社3年未満の社員と、マネジャーなどの管理職は対象外とする。介護や育児といった理由での利用もできる。

リスキリングを後押しするため、学びの費用を年間で最大25万円補助する社内制度の活用を促す。週休3日制導入と同時に、副業も解禁する。おおよそ入社5~6年目以上の社員が対象。休みの日にスタートアップで働くなど、他の職場で柔軟にヒントを得てもらう。

週休3日制は様々な目的がある。食品・日用品大手の英ユニリーバが20年12月からニュージーランドで始めているテストでは、給与は据え置いて時短による生産性向上を狙う。アイスランドは15~19年、国を挙げて週休3日の導入実験を実施し、生産性が高まったとの報告書をまとめた。ヤフーは17年から育児や介護、看護を行う従業員を対象に導入し、延べ100人超が利用している。

塩野義のようにリスキリングを主眼に置く週休3日制はまだ珍しい。みずほフィナンシャルグループも同様の狙いから20年12月、週休3日や4日で働ける制度を始め、資格取得などを理由に活用する例が出ている。

既に週休3日制を導入した企業からは「実際の利用は限られる」との声もある。管理職による後押しや、一時的に給与が減ってもスキル向上に役立つという成功事例の共有が必要だ。

[日経電子版 2021年09月22日 掲載]

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