日本ガイシは1000人規模のデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を2030年度までに育てる。選抜した社員が業務から離れて1年かけてデータ分析を学ぶ社内留学制度をこのほど始めたほか、22年度にはデータの活用に関する基礎知識を外部講師から学ぶ制度をつくる。育てたDX人材を製造現場に配置して生産性を高め、部門を超えた開発力の向上につなげる。

事業本部でDXの推進役となる「リーダー」、リーダーを支える「サポーター」、データ活用の考え方やプロセスを習得する「ビギナー」といった階層に分けて育てる。新入社員は入社後1年間、eラーニングでIT(情報技術)スキルを学ぶ。
今夏に始めた1年間の社内留学制度では、DXの推進役になる「リーダー」を育てる。製品や製造現場の知識を持つ30代半ばの社員が中心で、4月に新設したDX推進統括部でデータ分析やデジタル技術を集中して学ぶ。社内留学中は所属先の部門を離れ、仕事の兼務はしない。
事前に所属部門の課題を洗い出してテーマを設定し、デジタル技術でどう解決に結びつけていくかなどを実践方式で学ぶ。データを駆使して製品の不良解析や、製造から納品までの期間短縮にも取り組む。21年度は数人で始め、22年度以降は年5~15人ほどを対象にする。30年度までに合計110人のリーダーを育成する。
リーダーを補佐する「サポーター」は300人を目標にする。外部講師を社内に招いてデータ分析システムの使い方やデータ処理の知識を学ぶ制度を22年度に始める。20代から30歳前後の社員が対象で、オンライン受講も検討する。年10日ほどの受講を想定する。
このほか「ビギナー」と呼ぶデータ活用の基礎知識を備えた社員を600人育て、30年度にDX人材を1000人規模にする。3月末時点の日本ガイシ単体の従業員は約4300人。単純計算で4人に1人がDXに関する知識や技術を持つことになる。

日本ガイシは10年度から生産設備の更新や工場を新設する際に、材料の加工条件などの生産データを自動で集めて蓄積する仕組みを整えてきた。一方、収集したデータは事業の核となるため外部に分析を依頼しにくいという課題があった。このため自前でDX人材を育てる方針にかじを切った。
同社の製品は送電線に付ける絶縁体の碍子(がいし)や自動車向けの排ガス浄化用部品、蓄電池など多岐にわたる。「データを利活用する機会を増やして生産性を上げつつ、部門を横断した新製品やサービスの開発にもつなげたい」(DX推進統括部)としている。
(池田将)
[日経電子版 2021年09月03日 掲載]