転職希望者、職場同僚が評価 エン・ジャパンなど提供

エン・ジャパンのリファレンスチェックは国内約300社が導入した
エン・ジャパンのリファレンスチェックは国内約300社が導入した

中途採用時、転職希望者の出身企業の同僚評価を参照する「リファレンスチェック」が広がっている。新型コロナウイルスの影響で面接機会が減る中、採用企業は転職希望者をよく知る人の評価を参照しミスマッチを防ぐ。エン・ジャパンが2020年に始めたサービスは、パナソニックなど約300社が導入した。

エン・ジャパンは20年秋からリファレンスチェックサービス「ASHIATO(アシアト)」を始めた。転職希望者は自分の出身企業の社員を2~3人ほど指定。指定された社員はエン・ジャパンが送付したアンケートに回答する。回答をもとに、転職希望者の対人関係や論理思考に関する能力などをスコア化する。回答者への謝礼はない。

転職希望者を採用したい企業が、最終面接などの前にスコアや回答文を参考にできる。性格や働きぶりだけでなく、転職希望者が申告した経歴に偽りが無いかの裏付けにも使える。サービス料金は1人当たり3万円の従量課金のほか、定額プランも用意。同社の転職サービスを利用していなくても、アシアトのみ導入できる。同社の適性テストなどと組み合わせて精度を高めることも推奨する。

すでにパナソニックなど大手企業やスタートアップ企業などがサービスを利用しており、これまで転職者の同僚、2500人以上が回答した。弁護士ドットコムは20年10月にアシアトを導入。中途入社者の6~7割で利用し「入社後早期の戦力化につながっている」(佐藤哲士採用チームマネージャー)。スキル情報に限らず思考特性の把握が寄与している。

リファレンスチェックは転職希望者が出身企業に在籍中に実施することも多い。転職活動中であることは、チェックに協力してもらう本人には伝わるが、在籍中の企業には開示されない。個人情報保護の観点から、企業への情報提供には転職希望者と、質問に回答者した企業の社員、双方の同意が必要になる。

こうしたサービスが広がる背景には、新型コロナウイルスの影響でウェブでの面接が増え、人物像の見きわめが難しくなっていることがある。エン・ジャパンが全国454社対象に行った調査では43%がオンライン面接を活用しており、75%は新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから導入した。リファレンスチェックはこれまで外資系企業や管理職での採用などで限定的に行われてきたが「新型コロナの影響で活用の検討が広がっている」(エン・ジャパンの福村知久氏)。

人材サービスを手がけるスタートアップ企業も同様のサービスを提供する。採用情報サイトなどを運営するスタートアップ企業、Parame(パラミー、東京・新宿)は20年にリファレンスチェックのサービス「Parame Recruit(パラミーリクルート)」を始めた。求人サービス「agent bank(エージェントバンク)」を提供するスタートアップ企業のROXX(東京・港)も19年からリファレンスチェックサービスを提供。9月1日時点で累計1万3000人が利用した。

(野元翔平、長田真美)

[日経電子版 2021年09月02日 掲載]

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