パーソルキャリア(東京・千代田)が19日発表した7月の中途採用求人倍率は、前月比0.29ポイント高い2.15倍だった。2倍を超えるのは2020年12月以来で、営業職を中心に求人市場の回復傾向が目立つ。
中途採用の求人倍率は同社の転職サービス「doda(デューダ)」に登録する求人数を転職希望者数で割って算出する。転職希望者数が前月比8%減った一方、求人数は同6%増えた。求人数は19年7月の92%まで回復しており、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に迫る。
求人数を職種別にみると「営業系」が前月比9.1%増えた。新型コロナの感染に歯止めがかからないなか、ワクチン接種の浸透による景気回復への期待は高く、企業の採用活動は活発になりつつある。
営業職は不動産やIT・通信系の業種からの求人が多い。dodaの喜多恭子編集長は「デジタル化が進むなかで対面接客が多い不動産営業は離職が多く、人員補充に動いている」と分析する。
デジタルトランスフォーメーション(DX)需要を追い風とする「SaaS」系企業の営業職も求人が増えている。商品の活用法を提案し解約率を下げる「カスタマーサクセス」や内勤営業のポジションが該当する。
「技術系(建築・土木)」職の求人は前月比7.1%増。老朽化した大型ビルや高速道路施設の建て替え需要が継続する半面、高齢化が深刻で施工管理者は慢性的に不足状態だ。建設大手などは景況が不透明なコロナ禍で即戦力を求めたが、足元では未経験者採用が増加したという。
業種別では「サービス」が同8.8%増えた。システム開発などのアウトソーシングを請け負う企業で目立った。
コロナ後は中途採用計画の縮小が相次ぐ半面、離職も発生した。喜多編集長は「企業は人出が減る状態を改善しつつ、事業改革に必要なデジタル人材などを確保しなければならない状況だ」と話す。今後も求人数の回復傾向は続き、求人倍率も高まるとみている。
[日経電子版 2021年08月19日 掲載]