
三井化学は月4日以上出社すれば、残りはテレワークを可能とする制度を導入した。就業規則を改め、新型コロナウイルス収束後も柔軟な働き方を認める。IT(情報技術)業界ではテレワークを標準とする企業もあるが、伝統的な製造業では珍しい。慣習にとらわれない働き方を恒久的に取り入れ、多様な人材の獲得などにつなげる。
対象は事務職の約5000人で全体の7割強にあたる。従来の規則ではテレワークは「週2日」かつ「月8日」を上限としていた。コロナ下の例外措置として上限をなくしていた。新規則ではオフィスへの出社日数の下限を「月4日」と定めた。
業務に目立った支障が出ていないこともあり、若手社員を中心とする恒久化の要望にこたえた。完全テレワークを認めたヤフーなどIT企業などの動きに追随する。緊急事態宣言下の東京都の事業所では現在、出社率を3割以下に抑えている。
テレワークの定着や円滑な業務遂行にむけて工夫してきた。押印による承認が必要な契約書などを、メールなどで回覧することを容認。担当者は出社日に紙を提出してハンコでの承認を受けられるようにした。
4月には社内サイトに案内コーナーを設置。「出社とテレワークの選び方」「オンラインコミュニケーションのコツ」などを紹介している。
一般社員の副業容認も検討する。現在は管理職のみに認めている。橋本修社長は「事業ポートフォリオを変えるなかで社員の考え方も変える必要がある」と指摘。「社外での活動で得た知見は、個人の能力や当社にとって有益だ」と話す。
日本経済新聞とパーソルキャリアが3月に実施した「新しい働き方」に関する調査では、若い世代ほど柔軟な働き方を企業選びの際に重視すると答えた。テレワークなら育児・介護・病気といった事情を抱える社員も働きやすくなる。
素材産業の事業環境は、技術力を高めた中国企業の台頭や脱炭素対応などで厳しさを増す。多様な働き方を認めることで、事業革新に欠かせない人材の確保や育成、定着を図る狙いがある。
人材確保へ新たな取り組みを始める企業は素材や機械産業でも増えている。三菱ケミカルは22年4月入社の新卒採用で、応募書類への顔写真の添付や性別の記入を不要とした。IHIは国内の正社員約8000人を対象に副業を解禁した。
(黒瀬泰斗)
[日経電子版 2021年07月31日 掲載]