あしたのマイキャリア

ジョブ型なんて怖くない カギは自身のブランド化

日経転職版 特別セミナー

転職サイト「日経転職版」は特別セミナー「プロが語る これからのキャリアのあり方とは?」を開催した。第3回は法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔氏とコンサルティングファームのコーン・フェリー・ジャパンのユニットリーダー、柏倉大泰氏が対談。ジョブ型雇用が広まる中で、どのようにキャリアを形成していくべきか議論した。

田中「そもそもジョブ型とは何でしょうか」

柏倉「一言で特徴を言うと『個別化』ではないかと思います。これまでの人材育成は、特定の社の人材要件モデルとか経営幹部の人材モデルとか、グループを対象に要件を定めていました。最近は個別の人や職務の要件を定めて人材育成をしていく流れが加速しています。仕事と人の両方を見てベストフィットを考えるものです」

田中「米国のジョブ型は日本から見れば15~20年早いという話をよく聞きます」

柏倉「今はジョブの二極化が起きています。1つはハイブリッドジョブ。AIなどでタスクが自動化され、従来の2つ3つの仕事をくっつけたものです。抜け漏れがあるどころか、むしろ広いジョブを定義するのがトレンドです。そして引き続きエキスパートジョブがあります」

田中「企業の担当者と話すとジョブディスクリプションをどうするか、これまでのキャリアの棚卸しをどうするかについてよく聞きます」

柏倉「30年前、50年前のジョブディスクリプションはタスクが30、40個書いてあり、それしかやらなくてよい気もしました。最近は7つとか8つとか『これだけやって』と高度に幅広にハイブリッドジョブとして書いてあり、状況はかなり変わっています。海外のジョブディスクリプションには必ず仕事と能力の両方が書いてあり、特に能力が重要になっています」

田中「ジョブ型で失敗する人と成功する人の違いは何ですか」

柏倉「まずジョブ型であろうがなかろうが、前提として全体感を持ち、キャリアステージで自分が今どこにいてどこに向かっているかを理解してもらう必要があります。ジョブ型の中では、社会貢献を軸に捉えるのが重要です」

田中「おすすめ1分ワークは何かありますか」

柏倉「我々が使っている4つのステージがあるので、それで自身がどこにいるかを考えてもらうのがよいでしょう。ステージ1は『指示に基づいて貢献してください』。ステージ2は『自律的に貢献してください』で、自分で考えてタスクや成果を出す主任や係長のイメージです。ステージ3は『他者を通じて貢献してください』で、いろいろな人を巻き込んでやっていくものです。そしてステージ4が『戦略的に貢献してください』です」

田中「変化の波に乗るためにはキャリアトランスフォームが必要です」

柏倉「一番重要なのはマインドセットで、自分をどのステージとして位置付けているかです。人材育成のプログラムで、ノベーションという概念があります。会社の中で係長が課長になって周囲を巻き込んで貢献しないといけないにもかかわらず、マインドセット的にずっとステージ2のままだとプレーヤーとして期待を埋める状況になります。役職が変わったのに合わせて、マインドセットもしっかりノベーションするのが成功のポイントではないかと思います」

田中「どういうプロセスでしょうか」

柏倉「キーワードは自分の貢献のあり方を表現する『パーソナルブランド』です。ジョブ型でのキャリア形成は、周囲が自身のことをどう見ているか当然影響します。自分が持っている価値を絶対的な言葉で表現していくことが、ノベーションでは重要です」

田中「組織の中やSNSで発信していった方がいいのでしょうか」

柏倉「むしろ積極的に発信した方がいいです。よく人事の時に『ジョハリの窓』という枠組みがあります。自分が知っている、知らない、周囲が知っている、知らないという枠で、自分も周囲も知っているところはどこかを見ると、自分の能力がどれだけ最大市場化されているかが見えます。自分は知っていても相手が知らなければ、使えていないということになります」

田中「そもそも組織と個人の関係性が変わってきた中で個が立たなかったら気付かれません」

田中研之輔氏 法政大学 教授 / 一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門はキャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を24社歴任。UC. Berkeley元客員研究員、University of Melbourne元客員研究員 日本学術振興会特別研究員SPD 東京大学/博士:社会学。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。新刊『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』、『ビジトレ-今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』など著書多数。日経ビジネス、日経STYLE他メディア多数連載。
田中研之輔氏 法政大学 教授 / 一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門はキャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を24社歴任。UC. Berkeley元客員研究員、University of Melbourne元客員研究員 日本学術振興会特別研究員SPD 東京大学/博士:社会学。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。新刊『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』、『ビジトレ-今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』など著書多数。日経ビジネス、日経STYLE他メディア多数連載。

柏倉「それを絶対的な言葉で表現するのに一定の努力がいりますが、セクシーである必要はありません。かつて、ある企業のお手伝いをした際、幹部の1人がアジアの法令を熟知していた点で『私は会社の救急箱だ』と言いました。それがまさにパーソナルブランドです。どうやら救急箱のように重宝されていることがわかると、その後はすごくアピールして社長が知るまでになりました」

田中「エピソードやエビデンス、シナリオが大事です。キャリアヒストリカルトークをちゃんと提示できるようになると、個別化した中でしっかり生き延びていけるのではないでしょうか」

柏倉「定義を切り替えるのはすごく難しいです。私は『キャリア3枚刃理論』と名付け、最低3枚で考えてくださいと言っています。通常、どんなビジネスか、どんな職か、どんな地域貢献をしているかを並べると、自分のブランドが明確になります。定石的にはキャリアを変える際は1つだけずらすことになります。日本をアジアにずらすとか、法務をガバナンスに広げるとかです」

田中「ここから視聴者からの質問コーナーに入ります。ジョブ型は日本で定着するのでしょうか。メンバーシップ型はなくなるのでしょうか」

柏倉「ざっくり仕事を中心に人事を組み立てるとしてメンバーシップ型を人中心にすると、結論としては両方ともなくなりません。人事は常にどっちも合わせて考えるのが味噌なので、両方のバランスという意味で看板がジョブ型でもタレントの人材要素を考えることが必要です。例えばGAFAは極めてハイブリッドで、ジョブ型と言いつつ職能要件的なところがあります」

田中「ジョブ型への移行よりも大切なことがあります。組織に預けてしまう従属型キャリア、組織内キャリアからもっと組織で主体的に活躍する自立型キャリアへのトランスフォームです。その大きなトレンドの中で、ジョブ型で人事を回す企業もあると思います」

柏倉「仕事を人事に入れる動きでは2010年ごろのグローバルクリエーティング、1990年代中盤の成果主義ブームがありました。共通点は、リーマン・ショックやバブル崩壊といった不況の後。その中で仕事を軸にする話が出ますが、コスト削減策と捉えて入れると失敗しています。やる気を引き出すか、戦略的な目的があるかがすごく重要です」

田中「意識すべきキャリアの軸は何ですか」

柏倉「まずは『自分はハイブリッドジョブをやる』『エキスパートでいく』という大きな方向性を心構えとして持っておいていいのではないでしょうか。ハイブリッドジョブをやろうとすると、ものすごい学習力、適応力を磨くことが必要です。エキスパートジョブも残りますが、はやりにとらわれて変えるという選択肢だけでなく、どっちに行くかを考えるのが重要です」

田中「シニア層に一番求められていることは」

柏倉「そもそも年齢に伴う転職限界説はなくなっています。ジョブ型でキャリアを見付けられる人は、ある種の市場で通用する専門性をしっかり持っています。市場で通用する価値を見付けるのもいいし、会社の周辺で生きる場所をネットワーキングするのもいいですね」

柏倉大泰氏 コーン・フェリー・ジャパン株式会社 ユニット・リーダー。一橋大学社会学部卒業。IMDのMBA取得。複数のコンサルティング会社において組織・人事領域のコンサルティングサービスを経験し、コーン・フェリーに参画。経営幹部を対象としたエグゼクティブ・アセスメント、エグゼクティブ・コーチングや育成プログラムを提供。様々な業界におけるリーダーシップ・組織開発関連のプロジェクトに従事。コーチングの国際資格保有。共訳「リーダーシップ2030」(生産性出版 )他、「月間人事マネジメント」や「日本労働研究雑誌」など寄稿多数。
柏倉大泰氏 コーン・フェリー・ジャパン株式会社 ユニット・リーダー。一橋大学社会学部卒業。IMDのMBA取得。複数のコンサルティング会社において組織・人事領域のコンサルティングサービスを経験し、コーン・フェリーに参画。経営幹部を対象としたエグゼクティブ・アセスメント、エグゼクティブ・コーチングや育成プログラムを提供。様々な業界におけるリーダーシップ・組織開発関連のプロジェクトに従事。コーチングの国際資格保有。共訳「リーダーシップ2030」(生産性出版 )他、「月間人事マネジメント」や「日本労働研究雑誌」など寄稿多数。

田中「人生100年時代のこれからはいかにキャリア資本を蓄積していくかですが、ちゃんと棚卸ししてニーズを見極めなければいけません」

柏倉「重要なのは、後付けでいいから話をつなげて続きを空想しシナリオを持つことです」

田中「ジョブ型の弊害は何ですか」

柏倉「コスト削減に使うと、社員のやる気をそいでしまいます。仕事と人を個別単位で見てマネジメント力を高めてエンゲージメント、組織の前のめり感を出すのが定石です」

田中「表面的に入れるのではなく、本質的な経営戦略や事業戦略、キャリア戦略は必要です」

柏倉「私から聞きますが、キャリア戦略とは何ですか」

田中「キャリアは自分をより良くすることと思っている人が多いですが、全く違います。個人と組織をつなぐ関係性です。その関係性を埋めるためには戦略設計が必要だと言っています。経営企画部や事業部が考える今の市場での強み、他社との比較、3年、5年、10年で何をしていくかをそのまま言葉を置き換えて検討すべきです」

柏倉「企業価値で非財務が大きい中、そのうちの1つはエンゲージメントです。エンゲージメントを上げる重要な要素の1つに、成長・学習の機会が必ず出てきます。それによって個人と組織の関係性をうまく築くことで、エンゲージメントが高まり企業価値が上がります」

田中「これからのキャリアを形成していこうとしている人たちに、きょうからできることを伝えてもらえますか」

柏倉「強み弱みではなく、自分の個性をうまく捉えて発信、体現することを繰り返しやってもらいたいです」

(セミナーは2021年4月14日にオンラインで開いた)

[NIKKEI STYLE キャリア 2021年06月12日 掲載]

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