関西企業、IT人材獲得に躍起 求人数は3年で2倍以上

IT人材のニーズが高まっている(大阪市内のオフィス)
IT人材のニーズが高まっている(大阪市内のオフィス)

関西企業がIT(情報技術)人材の獲得に躍起になっている。リクルートによると、求人数は新型コロナウイルス禍で採用活動が停滞した2020年度でも、3年前の2~3倍で推移した。一方、IT人材は東京に比べ乏しく、充足感は低い。デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応が企業の競争力を左右する中、人材不足が課題となり始めている。

「とにかくIT人材をなんとかしてほしい」。リクルートの関西営業担当者には、企業から悲痛な声が届く。リクルートエージェントの丹治健太郎部長は「切迫感が高い。20年この仕事をしているが、こんな規模で、こんな伸び率を見せたものは記憶にない」と驚く。

リクルートがまとめた関西2府4県を対象としたIT人材の求人数は、17年4~6月期を1とすると、直近の21年1~3月期は2.68。19年に大手企業が動き出し、20年にはその動きが中堅企業にも広がった。各府県の労働局がまとめた求人数は17~19年度は横ばいで、20年度はコロナ影響で約2割減った。その中でも2倍を超える高い水準が続くIT人材への採用熱は突出している。

パナソニックは元ファーストリテイリングCIOの玉置氏を招いた
パナソニックは元ファーストリテイリングCIOの玉置氏を招いた

パナソニックは5月、玉置肇氏が執行役員兼最高情報責任者(CIO)に就いた。玉置氏はプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)でシステム畑を歩み、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングでCIOを務めた。直近のアクサ生命保険でもIT部門を担当した「プロ人材」だ。パナソニックは遅れているDXの旗振り役として玉置氏を招いた。

パナソニックは現場クラスでも人工知能(AI)人材の確保などを進めている。京セラは新卒で理系人材では「システム関連で採用が増える」(同社)としており、DXの担い手確保を進める。

関東のIT求人数の伸びも関西と同程度の見通し。ただ、関西はシステムインテグレーターなど人材を輩出する企業が少なく、「東京などに比べて充足率はより低い」(丹治氏)。大手企業でも「思うようにIT人材を確保できない」との声が上がる。

企業は確保に向け、未経験だが大学でソフトウエアを学んだ人材などを採用して社内で育成したり、在宅勤務を前提に地域にとらわれない採用活動などに乗り出している。「副業などIT人材をシェアする働き方もあり得る」(同氏)

一気に需要が増えたことで需給バランスが崩れ、しばらくIT人材の需要は高い状況が続きそうだ。地理的ハンディなどをどう克服し、競争力につながる人材を確保するか。改めて工夫が問われている。(岩戸寿)

[日経電子版 2021年06月18日 掲載]

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