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外資系が欲しがる人材 英語より大事な3つの資質

外資系企業が転職人材の採用を勢いづかせている(写真はイメージ) =PIXTA
外資系企業が転職人材の採用を勢いづかせている(写真はイメージ) =PIXTA

足元の転職市場は、求人数が急減した一時の「コロナショック」からの回復基調にある。グローバル人材から人気の高い外資系企業も同様だ。外資系企業の中途採用ニーズや採用で重視されるポイント、外資が求める人材像、英語力の必要性について、英系人材紹介大手、ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京・渋谷)のジェレミー・サンプソン社長に話を聞いた。

――外資系企業の中途採用は、コロナ以降どのように推移してきましたか。

「昨年4月ごろ、日系企業に先んじて採用活動が滞りました。米国や欧州など各企業のグローバル本社がある地域の感染拡大の影響が大きく、採用数で前年比25%~30%ほど減少しました。その後もしばらくは『人材を探してはいるものの、本社の同意が得られない』などの理由で、最終的な採用決定に消極的な企業が目立ちました。潮目が変わったのは昨年秋ごろです。回復の兆しが見え始め、2021年に入ると、劇的な伸びになりました」

「年初から4月までの求人件数は(コロナ前の)前年同期と比べても1割ほど多い水準です。景気の先行きが明るくなったり、事業を進めるためにはやはり採用が必要だという認識に至ったりといった理由から、業種を問わず、外資系企業の多くが積極的に採用していると言えるでしょう

「昨年のうちに採用する必要があったのにできなかった求人が多いようです。コロナによる入国制限で、外国人技術者の入国が難しくなっていることも人手不足に拍車をかけています」

――特に採用が活発な業界を教えてください。

「IT(情報技術)、ネット業界です。テレワーク関連のサービスを提供する企業やEC(電子商取引)、ネットゲーム、フードデリバリーなど、コロナ禍で需要が伸びた企業では、エンジニアをはじめとする技術職に加え、営業やマーケティングといった幅広い職種で求人が増えています」

「デジタルトランスフォーメーション(DX)関連も採用が活発です。テレワークを導入していない企業やテレワーク下でのオペレーションに苦戦している企業の多くがDXの必要性に直面しているので、変革を推進し、効率的にユーザーと技術者の橋渡しを担える人材(DXコンサルタントやDXスペシャリスト)への引き合いが強まっています」

「日本を引き続き重点市場とみている金融機関も採用意欲が旺盛です。監査、コンプライアンス、財務会計など規制当局との接点を担う職種で安定した需要があります」

「今後、国内外でM&A(合併・買収)が増えることが見込まれるため、バイリンガルのバンカーやM&Aコンサルタントの引き合いも強いです。コンサルティング企業の採用では若手人材から経験に富んだミドル人材中心へとシフトしつつあるように思います」

外資が欲しいのはスペシャリスト、ビデオ面接は予習を

ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京・渋谷)のジェレミー・サンプソン社長
ロバート・ウォルターズ・ジャパン(東京・渋谷)のジェレミー・サンプソン社長

――外資系企業は景気が悪くなると、日本から撤退してしまう印象がありますが、今回のコロナ禍ではどうでしたか。

「少し誤解があるように思います。私の知る限り、少なくとも中規模以上の企業ではコロナ以降、日本から撤退したという例は思い当たりませんし、逆にコロナ後の回復を見すえ、日本への投資を増やす企業もありました。世界的にみて、日本が非常に魅力的な市場であることに変わりなく、コロナによって事業計画に多少の変更が生じたかもしれませんが、日本からの撤退にはつながらなかったと言えるでしょう」

「一方で、最近、新たに日本市場に進出する企業が増えています。自動車の自動運転関連の部品企業や工場の自動化(FA)関連など日本の製造業向けビジネスを担う企業や、コロナ禍の行動変容による需要を見込む分野のベンチャー企業が代表的な例です。ベンチャーは10人未満程度のスタートアップが多いですが、フードデリバリーのように海外で急成長した企業が満を持して進出してくるケースもあります」

――外資系企業で必要とされる人材の特徴は。

「第一に、スペシャリスト、専門家であることです。日本の会社で一般的な、様々な仕事を一つの組織のためにしてきた経験がある人(ジェネラリスト)ではなく、特定の分野で多くの経験や知見を持つ専門家を必要としています」

「第二に、自立性があり、主導権がとれる人。コロナ禍で外資系企業では在宅勤務の比率が高い傾向にあります。指示されるのを待つのではなく、自身でモチベーションを感じ、自ら進んで行動するような人が求められています」

「第三にコミュニケーション力です。オンラインでもリアルでも、自分の伝えたいことをしっかりと説明でき、同僚と信頼関係を築けることが重要です」

「英語力については、ある程度大事ではありますが、たとえ日常会話レベルの英語力であっても、自分の言いたいことをはっきりと表現し伝えることができれば問題ありません。『外資系企業で働くには英語が大変流ちょうでなくてはならない』と思われがちですが、必ずしもそうではなく、しっかりと意思疎通できることが重視されています」

――外資系企業の求人に応募するにあたり、気を付けておきたいことは何ですか。

「外資系企業では日本の履歴書ではなく、英文履歴書(CV)や職務経歴書が重視されます。これまでの職歴や成果、身につけてきた専門性がうかがえるような業務内容、強みとするスキルを分かりやすくアピールするとよいでしょう。単なるキャリアの要約ではなく、ビジネスパーソンとしての強み、スキル、成果をハイライトしたものになるよう心がけてください」

「面接は一般的に3回前後で、1次が当該部署の上司(採用された場合に一緒に働く人)、2次で人事担当、最終が経営幹部などの上層部となるケースが一般的です」

「海外の本社のメンバーとのリモート面接を課される場合もあります。海外本社との面接のほか、面接官が皆日本人であっても、英語力をはかるために英語で話すこともあり、外資系企業の選考過程では英語の面接が非常に多いと言えます」

「オンラインツールが広がるにつれ、よく見かけるようになったのが、ビデオによる事前録画式の『面接』です。1次面接が事前録画式の場合もあります」

「事前に提示された複数の設問に答える様子を自身で録画するというものです。慣れていないと違和感をおぼえることもあり、練習が必要でしょう。1次面接から2次に至る選考過程が効率化できるので、事前録画式をとる企業は今後増えていくと思います」

「面接でも経歴書上でも、日本人の転職希望者は謙虚すぎるきらいがあります。たとえば『120%の営業目標を達成しました』などと自身の成果を明示できるのが理想的ですが、はっきりと示さない人をよく見かけます。謙虚さは立派な強みではありますが、転職活動中は自信を持って、自分自身を強く売り込むことが必要です」

柔軟性やオープンマインドが重要

――日本のビジネスパーソンが外資への転職を考えるにあたって障害になっていることは何だと思いますか。

「変化への恐れでしょうか。『外資系企業で働くのは、外国に住むようなもの』と思われがちですが、これは正しくありません。外資系に勤めていても社内で日本語が多かれ少なかれ使えますし(生活の)拠点も日本のままです」

「日系企業に限らないことですが、どこかの企業に長く勤務していた人は、居心地がよくなり、現状に甘えてしまう傾向があります。快適な環境から新しい職場に移る、ましてや外資系に移るという大きな変化は非常に怖く感じるかもしれませんが、成長の機会だと理解しておくことが重要です。ビジネスパーソンがキャリアで成長できる道は、こうしたチャレンジに挑戦することだと思います」

「新しい環境に飛び込んでみると、実際には事前に懸念していたほどの困難ではないこともよくあります。むしろ、英語をはじめ、新しいスキルを習得し、新しい仲間と出会い、成長の機会を得たことに気づく人も多いでしょう」

「転職にあたり、自分のキャリアゴールは何か、成し遂げたいことは何かなどを、書きとめておくことをおすすめします。変化を恐れ、避けようとする力は結構強いので、自分の決意や動機をすぐに確認できるようにしておかないと、転職の気持ちが揺らいでしまいかねません。実際、転職活動を経てある企業からオフォーをもらったのに、先々に待ち受ける変化を嫌い、最終的に『現職にとどまる』という決断をした人を少なからず、見てきました」

――外資系企業に向いているのはどのような人ですか。

「柔軟かつオープンな考え方、マインドセットを持った人だと思います。自分自身のためだけではなく、もっと大きな目的のためにほかの人と協力して仕事ができるか、特に、様々な国、文化、バックグラウンドの人と働く心構えがあるか、が非常に重要です」

「日本のビジネスパーソンの多くが既にこういったマインドセットを備えていると思いますが、まだ持っていない場合は習得すればいいだけの話です。自分のコンフォートゾーン(居心地のよい環境)から抜け出し、いつもと違うことにチャレンジするのが心をオープンにするベストな方法です」

「コンフォートゾーンにとどまっているほうが楽ですが、あまり成長にはつながりません。時にはリスクをとり、自分自身の限界に挑戦することで人は成長するのだと思います」

(日経転職版 編集部・宮下奈緒子)

ジェレミー・サンプソン

ロバート・ウォルターズ・ジャパン社長。豪州出身。グローバルホテルグループやスポーツ分野での営業職を経験した後、2006年ロバート・ウォルターズ・ジャパン入社。セールス&マーケティング・工業部門やコマース&インダストリーズ部門の人材紹介事業の拡大に尽力。18年9月から現職。

[NIKKEI STYLE キャリア 2021年06月19日 掲載]

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