自治体IT人材 民間から採用増

関西の求人、4年で6倍 公務員試験なし/副業で募集

関西の自治体が、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの専門人材の採用を増やしている。行政サービスの改善や業務効率化などに不可欠なスキルを外から取り入れる狙いだ。自治体はどこも人手不足で、特に専門人材は足りていない。公務員試験をなくしたり副業人材を募集したり、採用手法の工夫が目立ってきた。

兵庫県は7月の入庁に向け、「デジタル業務専門官」と「情報専門官」各1人の選考を進める。地図情報の3D(3次元)データ化や行政サービスのオンライン化が主な業務。システムの外注と違い、サービスのどの部分をデジタル化できるかなど設計段階から検討できる利点があるという。

神戸市は2020年4月から「デジタル化専門官」を配置する。3年間の任期付きで務める宇都宮哲平さんは、簡単にアプリを作成できる「ローコード」ソフトの導入支援が主な業務だ。「公用車の運行記録など日々の業務をアプリ化できないか」といった相談に対応する。大手アパレル企業のIT(情報技術)部門で店舗システムを手掛けていたが「民間企業のように利益を追わず、自分の視野を広げたかった」と話す。

各自治体でも情報系の職員は育成しているが、ITの進歩は速い。兵庫県情報政策課・システム企画課の福田靖久副課長は「正規職員はジョブローテーションもあるため、最新の知見を持って企画から実装まで伴走型でデジタル化を進める人材が不足している」と説明する。

大阪府四條畷市も19年からITなどの人材の採用を強化。全職員の1割にあたる30人を民間企業からの転職者が占める。教育委員会で小中学生に1人1台端末を配備する「GIGAスクール構想」の推進役や市の広報業務を担う。

自治体の中途採用支援を手掛けるエン・ジャパンによると、民間人材の採用は増えている。団塊の世代の大量退職や人口減少で地方公務員は人手不足が続いており、特にDXやシティーセールス、企業誘致など専門的なスキルを持つ人材は外部に求める傾向が目立つ。

同社の転職サイト「エン転職」に20年時点で掲載された求人数は、16年比で全国の伸びが3.5倍なのに対し、関西2府4県では6倍。大城麻美・採用支援プロジェクトリーダーは「関西は人口減少に対する危機感が強く、DXやブランディングなどで魅力を高めたいという自治体が多いのでは」と指摘する。

専門人材は民間も含めて獲得競争が激しい。兵庫県や神戸市は応募のハードルを下げるため、任期付きのIT人材の採用は公務員試験をなくして書類選考と面接のみにした。同様の取り組みは他の自治体でも増えている。

副業人材の活用にも動く。神戸市はホームページのモニタリング、PR動画の作成などオンラインでできる業務を35人ほどに任せている。京都市も首都圏企業の誘致に特化し、7月から2人の副業人材を採用する計画だ。企業連携やITに詳しい人材を想定。22年3月末までの期限付きで契約する。

兵庫県のデジタル業務専門官の年収は最大700万円程度。待遇面で民間を上回るわけではないが、約160人の応募があった。パーソルキャリアの喜多恭子doda編集長は「どんな権限を持ってどんな業務に関われるかなど、やりがいを具体的に示すことが人材獲得のカギだ」と指摘する。テレワーク環境の整備や、自治体以外の仕事でも稼げるよう公務員の副業を解禁することなどが今後の課題になる。

(泉洸希)

[日経電子版 2021年06月11日 掲載]

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