日本経済新聞とパーソルキャリアの調査では、新型コロナウイルス禍を機に働く場所についての認識が変化している様子も浮き彫りになった。回答企業の5割はコロナ収束後もテレワークを恒久措置として続けると回答。個人は若い世代ほど柔軟な働き方を企業選びの際に重視すると答えた。

コロナ禍で企業が新たに導入・拡大した働く場所についての施策では「ウェブ会議システムの整備」が最も多く、回答企業の79.4%をしめた。テレワークの導入・拡大も68.1%と高く、47.3%はコロナ禍の収束後も継続すると答えた。
テレワークが広がると働き方も多様になる。EY新日本監査法人などのEYジャパングループは2020年秋に従業員の地方移住を支援する制度を導入した。東京の部署に所属したまま地方からの遠隔勤務を認める。第1弾で希望者から約30人を選び長野県や静岡県などへの移住を認めた。
テレワークの導入を機に転勤や単身赴任の廃止や中止を決定・検討している企業も1割前後あった。水処理大手メタウォーターは20年夏、テレワークが可能な場合、単身赴任を解除する仕組みを導入した。すでに30人ほどが単身赴任を終えて帰任したという。
働く場所が柔軟になるとオフィスは見直しが進む。企業にオフィスのあり方で検討している項目を聞くと、本社の移転・縮小が全体の11.5%を占めた。特に東京都の企業の場合は21.5%と割合が高かった。
働き手の意識も変わってきた。個人に「転職時に柔軟な働き方の整備を重視するか」を聞いたところ「重視する」「まあ重視する」と答えた人は20代で76.8%に達した。若い人ほど割合が高いが50代も62.6%あった。パーソルキャリアの喜多恭子・doda編集長は「中核を担う人材の採用ほど、柔軟に働く環境を整えることが優位性につながる」と解説する。
調査概要 日本経済新聞と共同で作成した調査票を基に、パーソルキャリアの転職サービス「doda」が個人・法人にアンケートで回答を得た。調査は日経リサーチに委託して2021年3月にウェブ形式で実施し、1万6000人強の個人と383の企業・団体から回答を得た。個人は正社員・正規職員として働く20~65歳を対象とした。
[日経電子版 2021年06月06日 掲載]