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ネット業界、未経験も採用拡大 求められる3つの資質

リクルートでネット業界に詳しい早崎さん
リクルートでネット業界に詳しい早崎さん

「コロナショック」から約1年―。転職市場も当初は需要が激減したが、コロナ禍で新たに生まれた需要を取り込んだIT関連企業で積極採用が目立つ。インターネット業界の中途採用の最新事情や、どういった企業のどのような職種のニーズが増しているのか、ネット企業への転職に必要な要件は何か、などリクルートの早崎士郎マネジャーに話を聞いた。

求人件数 コロナ前より1~2割多く

――ネット業界の転職市場について、コロナ以降の状況を教えてください。

「昨年の春、最初の緊急事態宣言が出てから秋ごろまで、ネット業界の中途求人数は前年比3割ほど減少しました。もともとネット企業は営業や広告などサービスを拡大していくための職種が中心で、先行きが不透明になり、ボリュームが大きかった若手のポテンシャル採用が大幅に減少しました。ただ、昨年秋以降、状況が一変します。コロナの影響がある程度見通せるようになったことで、本業が好調な企業が事業を拡大しようと求人需要が急速に回復しました」

「21年度に入ってからは、20年度に採用を抑えた反動で積極的に採用する必要が出ているほか、オンラインの育成体制が整ったことで、潜在能力と成長性を見込んだポテンシャル採用も復活しました。足元の求人件数はコロナ前と比べても1割~2割多い水準で推移しており、過去5年間でみても最高水準にあると思います。直近の緊急事態宣言の影響は感じていません」

――ネット企業のなかで、中途採用が特に増えている業態を教えてください。

「第一にネット広告系企業です。昨年来、巣ごもり生活が続き、全般的にパソコンを見る時間が増えたことでネット広告へのシフトが急速に進みました。業績拡大に伴い、人への投資も増えています。第二に、クラウド経由でソフトを提供するSaaS型サービスです。勤怠管理や同僚とのやりとりといった日々の業務をネットに置き換える業務解決ツールや面接やイベントをオンラインで提供する企業など、コロナ禍でSaaS型企業の幅が一気に広がりました」

「現状、ほぼすべてのSaaS型企業が採用を増やしていると言っていいほど採用意欲が旺盛です。巣ごもりやリモートワークをはじめ、コロナを機に始まった行動変容が定着したことが背景にあり、どの企業も一段上の規模の組織を目指すべく活発に採用しています。職種としては企画からエンジニア、営業まで広く募集が続いています」

旅行業者など未経験者にもチャンスあり

――ネット業界を経験したことがない「未経験者」にとってのチャンスは広がっていますか。

「昨年後半からの採用拡大の流れのなかで、未経験者を採用するケースが非常に増えました。経験者が争奪戦になり採用しづらい、という面もありますが、求める人材の質が変わってきたことも大きな要因です。例えば、ECアドバイザーの仕事を例にとると、従来はクライアントの多くは中規模以上の企業で、基本的なことに精通しているEC担当者と販促策について意見を出し合う形でした」

「最近は小規模な企業や個人事業者の顧客が増え、いわば『素人』相手にEC販促策をアドバイスするようになり『寄り添う力』が必要になってきました。ネット広告の営業についても同様にクライアントの規模が小さくなっています。個人や素人に寄り添う力は対面販売での強さと通じるものがあり、業界環境が厳しい旅行会社社員やアパレルの販売員などがネット企業に転職し即戦力として活躍することは十分可能だと思います」

「また、最近脚光を浴びているDX(デジタルトランスフォーメーション)関連のSaaS企業にしても、コロナ前は顧客企業のIT担当者と『現在抱えている課題をテクノロジーでいかに解決するか』をテーマに話し合っていた。それがコロナ下で『業務効率で漠然と困っており、テクノロジーで何とかしたい』といった相談に向き合うケースが大幅に増えました」

「この結果、DX分野でも『寄り添う力』、コンサル営業が重視されるようになりました。これに伴い、特定業界向けITツールを提供する企業の場合、その業界の出身者を営業として採用する傾向があります。直近では、エンジニアなどのIT人材を除くと、ネット業界以外からの中途採用者が7割~8割程度に上ると思います」

求められる3つの資質

――ネット企業が中途採用者に求める資質は何ですか。

「企業が求める資質として3つ挙げられると思います。第一に変化対応力。ネット企業はとにかく変化が激しく、短期間のうちに組織の規模が倍になったり、事業内容ががらりと変わったりすることも珍しくありません。企業のフェーズが変わろうと柔軟に力を発揮する能力が求められます」

「第二に自走力。これまでなかったサービスを新たに世に送り込む場合、社内外にまだ答えがない場合も多いでしょう。回答がなくても、周囲を巻き込んだり、助けを求めたりしながら自分なりに工夫して走ってみる力が問われています。『指示待ち』ではなく能動的な姿勢がマストです」

「第三に(会社の)ビジョンへの共感です。世の中の人を笑顔にする、といった会社のビジョンに対し、個人として共鳴できるか、が問われます。ネット企業は取り扱うサービスが年月とともに変わっていくことも多いので、会社として不変なもの、ビジョンへの共感が一段と大事になります」

「一方、プログラミングなどのITスキルはほとんど必要なく、独学で少し勉強しておく程度で十分でしょう。巣ごもりやリモートワークなどコロナを機に広がった社会の変化は今後も加速し、求人需要はますます増えていくと思います。ネット企業への転職を希望する人は、普段からアンテナを広く張り、社会の動きをふかんしたり、このサービスを使えばこの課題がこのように解決できるといった頭の体操を重ねたりすることをおすすめします」

(日経転職版・編集部 宮下奈緒子)

早崎 士郎
リクルート HRエージェントDivision インターネット・金融営業部 マネジャー 入社後から一貫して、インターネット関連企業の採用支援に従事。スタートアップから超大手まで100社以上を担当。

[NIKKEI STYLE キャリア 2021年05月29日 掲載]

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