次世代リーダーの転職学

ミドル転職に年齢の壁 37、42、47歳でキャリア見直し

ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

年齢次第で転職市場での扱いは異なってきやすい(写真はイメージ) =PIXTA
年齢次第で転職市場での扱いは異なってきやすい(写真はイメージ) =PIXTA

希望退職者を募集する企業は今も増えています。新型コロナの影響が継続している2021年は20年を上回る可能性もあります。特に45歳以上が標的にされることが多い中、ミドル世代のキャリア不安は年々高まっているのが実情です。今回はいざというときに慌てないために、どんな手が打てるのかを一緒に考えていきたいと思います。

「30代前半に転職した時と感触が全く違う」

転職相談で先日お会いした39歳のAさん。長年、医療機器メーカーの営業として活躍し、ここ5年は管理職として会社から与えられた予算を手堅く達成しているということでした。

「新卒で入社した同じ業界の会社から、32歳で今の会社に転職しました。主力商品は海外メーカーとも競争が激しい領域で、年々シェアが落ちていて苦戦しています。社内の環境を見ても、上の顔色をうかがう風土が強く、将来に不安しか感じないので、昨年秋から転職活動をしています」

「しかし、7年前の転職活動と全く手応えが違うので戸惑っているところです。具体的には8社に応募したのですが、書類選考に通過したのが2社だけ。あまり景気の影響を受けない業界だけに、年齢の壁を痛切に感じています」

転職活動を開始して6カ月以上が経過した今もまだ、内定どころか、2次面接にすら進めない状況だということです。この背景には、いわゆる「35歳の壁」が存在していると考えられます。

企業の多くは、年齢が上がれば上がるほど、ポジションに付ける人が少なくなる「ピラミッド型組織」になっています。そのため、中途採用で補充されるポジションも、その三角形の人員数に比例して、現場のプレーヤーであることが多くなります。

現場第一線のプレーヤーは、新卒入社の1年目から課長直前の30代前半で占められているのが一般的です。「現場で目一杯走り回るには、若くて体力もあって、頭も柔らかい若手がいい」と考える企業が圧倒的に多いので、「中途採用するなら35歳ぐらいまで」という求人が圧倒的な大多数を占めることになります。

多くの企業ではマネジャー、いわゆる課長職の年齢が35歳以上に多くなっていることも「35歳の壁」の一因となっています。現場の部長クラスや採用責任者からすれば、「マネジャーが自分と同じくらいの年齢や年上を扱うのは負担が大きい。できれば年下のほうが働きやすいだろう」という「親心」が生まれやすい実態もあると思われます。

しかし、この年齢によって転職難易度が上がる現象は、35歳だけに限らず、それ以降もついて回ります。35歳を過ぎてからの大きな節目は「40、45、50歳」です。

40歳以降、徐々に深くなる中途採用の年齢断層

「35歳の壁」以降に訪れる大きな断層は、40、45、50歳と、5年ごとにやってきます。この流れは変わりそうにない状況です。5年ごとの断層によって求人数は減ることはあっても増えることはありません。転職を検討する人の出現率は年齢によって大きく変わらないので、転職活動をする人の分母は一定な割に、分子である募集対象人数だけが減っていくので、「転職の競争倍率」は年齢を重ねるごとに上がっていく一方です。

特に45歳を過ぎると、転職活動は長期戦の覚悟が必要になります。「ぜひ入社したい」と考える志望企業の競争倍率は最低でも100倍、「応募してみてもいいかな」と思う程度の求人であっても倍率は30倍はあると仮定して作戦を練るのがちょうどいいぐらいの激戦になります。

転職相談で会う人には「1年間に200社応募して面接まで進めた企業は5社しかない」という人が珍しくありません。転職活動を開始してから、いかに早く相場観を手に入れるかが転職の成否を分けるといっても過言ではありません。

年齢による断層がこれだけ大きくなってきた背景にはどんな理由があるのでしょうか?

一つ目は企業における年齢構成の問題です。バブル入社世代や団塊ジュニアまでを含む40、50代の年齢層が多くを占め、いびつな構造になっているため、できるだけ上の世代を減らしたいという意識が働きやすいことが考えられます。実際、「45歳以上の年齢層の社員が減ることによって、その下の世代にとっては重しがなくなり、組織が若返り、風土的にも活性化する」と述べる経営者もいます。

それ以外にも「既存事業に成長が期待できず、会社全体が戦略を大きく転換しなければいけないときに、45歳以上の層は過去の成功体験に縛られ、身動きができないことが多い。具体的には新規事業や新職種を辞退するなど、自ら行き場を失ってしまうケースもある」(中堅メーカーの人事担当執行役員)というような声もあります。

しかし、もちろん新規事業や新分野進出で「その道のプロがいない」ということになれば、外部から専門家を雇い入れる必要が出てくる場合などは別です。営業や人事、経理部署での中途採用は30代前半までとしている企業でも、海外進出に当たって海外法務責任者やICT(情報通信技術)分野の新規事業を考えている場合はプロジェクトマネジャーやIT(情報技術)エンジニア、デジタルトランスフォーメーション(DX)責任者を、年齢に関係なく、実力次第で迎え入れる割合も強くなります。

過去10年続いた人手不足に際しては「35歳転職限界説はなくなった」と報じられることが増えてきました。確かにコロナ禍で市場が変動する直前までの有効求人倍率は、過去10年間、求職者数に対して求人数がじりじりと右肩上がりで増えてきたこともあり、最終的には何らかの形で転職に就労できる人が多いのは事実です。

しかし、「営業を希望していたが、全く経験のない工場での軽作業のアルバイトでとりあえず糊口(ここう)をしのいでいる」(53歳、元大手家電メーカー営業部長)という人や、「住居から遠く離れた地域での介護送迎車のドライバー職でようやく雇ってもらうことができた」(47歳、元地方銀行営業課長)というケースも多く、「年齢の壁がなくなった」と表現するには、あまりにも希望とかけ離れた転職が多いことももう一つの現実なのです。

断層ごとに3年前からの準備でリスク減らす

これらの現実を前にして、いかに円滑にキャリアを描き、実現していけばいいのでしょうか。具体的にはそれぞれの年齢断層(40、45、50歳)の3年前、つまり37、42、47歳がキャリアを見直す適齢期だと考えています。

なぜ3年前かというと、40歳を超えて転職活動をする場合は、前述の通り、1年で200社に応募して書類通過できた会社が5社というように活動そのものが長期戦になる可能性があるからです。長期戦をしのぐには闘いのスタートを前倒しするのが最善です。

実際に転職活動を始めてから、相場観が「腹落ち(十分に理解、納得)」するまでに必要な時間もあります。一般に転職活動していると、活動初期は応募数が集まりやすい(=競争倍率が高い)求人を選ぶ傾向が強く、徐々に採用が決まりやすい(=ニッチだが、自分が必要とされている)求人に移行していきます。

経験やスキル、知識の需要がどれだけあるかによって、個人ごとの格差は大きいのですが、相対的に転職活動初期から後期にかけて、希望条件の数や基準は変化していきます。できるだけこの時間を短縮してブランクをなくすためにも、転職先を選ぶ希望条件については、最初から優先順位や重みづけを決めておくことをお勧めします。

賃貸住宅の物件選びに例えると、「家賃」「広さ」「駅からの距離」「買い物の便」「日当たり」「間取りの使いやすさ」など、判断するための情報の種類が多く、物件ごとに強みや弱みが錯綜すると、いつまでたっても選べないという状況が起こります。あるいは、すべての条件が「満額」でそろうことにこだわり過ぎると、いつまでたってもそんな物件情報が届かないとか、掘り出し物は競争率が高すぎて全く勝ち残れないということにもなりかねません。あらかじめ希望条件の優先順位を決めておくと、判断速度が速まり、優良案件を手に入れられる可能性も高まります。

最後に、40代以降も満足度の高い転職を実現している人々に共通する行動傾向を以下にお伝えします。

・40歳からの転職成功者の行動傾向
(1)見かけの役職・年収にこだわらず、役割の重さや裁量の自由度にこだわる傾向
(2)自分の経験分野や保有スキルにこだわらず、新しいことにも積極的にトライする傾向
(3)企業に安定を期待するより先に、自分が貢献できることを模索する傾向
(4)経験や年齢を超えた人的交流が活発な傾向
(5)1年、2年という短期ではなく、5年、10年の長期でキャリアを考える傾向

たとえ全体として統計的に厳しい就業環境でも、一人一人が何を成功の基準と置くか次第で、人生の充実を手にしている人はたくさんいます。自分らしい人生を送るために、自分なりの「ものさし」をまずは手に入れてください。

黒田真行

ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年04月09日 掲載]

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