学び直し、給付金が後押し 専門職育成に年56万円も

スキルアップをめざし、学び直し(リカレント教育)を考える社会人が増えている。文部科学省が対応する講座や課程を設けるよう大学を支援するなど、環境の整備も進む。一方で教育機関に通うには費用がハードルになりやすい。公的な給付金や価格の低い手段を使い、効率良く目標を実現したい。

早稲田大学が他大学や企業と連携して2018年に始めた「スマートエスイー」プログラム。AI(人工知能)やビッグデータなどの最新技術を学ぶ講座で、実務経験を持つ約30人の社会人が学ぶ。費用は半年間で約60万円だが、実質的な負担は半分程度で済むことがある。講座が「教育訓練給付制度」の対象のためだ。自費で受講する人の2割程度が利用しているという。

教育訓練給付制度とは資格取得などを支援する仕組みで、雇用保険に加入していれば利用できる。厚生労働省が指定した大学や大学院、専門学校、資格学校などの講座を修了すると給付がある。

給付の内容は受講する講座などにより3種類ある。最も給付額が大きくなるのが「専門実践教育訓練給付」。法科大学院や経営学修士(MBA)といった専門職大学院、看護師や保育士の養成課程などが対象となる。文科省が認定した大学などの講座「職業実践力育成プログラム」も含まれる。

給付額は費用の50%(上限は年40万円)で、最長4年間の受講に対して受け取れる。資格を取得して1年内に就職するなどすれば、上限は費用の70%(同56万円)に引き上げられる。

「一般教育訓練給付」は英語検定試験「TOEIC」や簿記といった資格取得や試験準備など、幅広い講座を対象とする。給付は費用の20%で上限は10万円だ。19年に新設された「特定一般教育訓練給付」は税理士や社会保険労務士といった資格取得に対応する講座などが対象で、費用の40%(上限20万円)の支給がある。

給付を受ける条件は雇用保険に一定期間加入していること。原則は3年以上で、初回に限り1~2年でも利用できる場合がある。実際に利用を考える際には、まず、自分が対象かをハローワークで確認するのが確実だ。

対象の講座は厚労省のサイトで確認できる。給付手続きは原則として修了後1カ月以内にする。「特定一般」と「専門実践」は受講開始前にも必要な手続きがある。条件を満たせば何度でも利用できるが、前回の利用から3年以上経過する必要がある。

給付金にこだわらず、比較的費用がかからない場所で学ぶ選択肢もある。例えば大学では科目等履修生といった立場で社会人を受け入れたり、公開講座を用意したりしている。リクルート進学総研の乾喜一郎主任研究員は「大学や大学院に進む前に公開講座で環境や内容を確認する人も多い」と話す。

時間の制約が比較的小さいのが通信制の大学だ。例えば放送大学は主にテレビやラジオ、インターネットで授業を受ける。学部の場合、入学時に納める入学料は在籍する期間に応じて7000~2万4000円、授業料が1科目(2単位)で1万1000円と費用の面でも始めやすい。

日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)では大学や専門学校などが提供する様々な分野の講義をネットで無料で見られるようにしている。文科省も就職や転職に役立つ知識や技術に関する大学の短期講座を、無料で受けられる事業を準備中だ。

転職のための学び直しを考えている人もいるかもしれない。ただ、ファイナンシャルプランナーの菅原直子氏は「学び直しの費用は貯金と給付金で賄い、借金は避けるべきだ」と話す。専門性を身につける間に経済環境が変わり、期待した収入を得られないこともあるためだ。

(成瀬美和)

[日経電子版 2021年05月08日 掲載]

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