週休3日制の落とし穴、人件費抑制とセットの懸念

編集委員 柳瀬和央

働き手が週に3日休めるようにする「選択式週休3日制」の議論が政府・与党内で進んでいる。社会人の学び直し(リカレント教育)を後押しするため、働きながら学べる環境を整備する。ただ企業の活用次第では経済の「落とし穴」になる懸念もある。

週休3日制の議論は、働き過ぎを是正するために推進された週休2日制とは異なり、休みを増やすこと自体が目的ではない。週休2日制は週48時間までだった所定内労働時間を週40時間までに減らした労働基準法改正が推進力となった。1日の労働時間を8時間とする一般的な企業が週40時間労働を守ろうとすると、週2日がおのずと休みになるためだ。政府の経済財政諮問会議による週休3日制の議論は、あくまで希望する労働者による選択制で、こうした所定内労働時間の削減を目指す内容ではない。

諮問会議が週休3日制を唱えるのは、日本の人材力が諸外国に比べて劣後することへの危機感からだ。解雇の難しさもあり、雇用が余剰気味の大企業に人材が滞留し、企業が従業員の能力を高めるために行う教育訓練投資も減少傾向だ。労働者本人の自己研さんも「時間がない」ことなどを理由に伸びない。

であれば、週休3日制で休みを1日増やし、その時間を自己研さんに充ててもらおうというのが今回の議論の本筋だ。労働者個人に直接給付できるよう公的職業訓練の枠組みを見直し、企業頼みの人材投資からも脱却する。学び直しで人材力を底上げして労働移動を後押しし、デジタルやグリーン(環境)など今後の日本経済の戦略分野をけん引できる人材を増やす青写真を描いている。

より柔軟な働き方が認められれば育児や介護など制約を抱える働き手が活躍できる余地もひろがる。週1日をボランティアや副業に充てれば、視野や人脈が広がり、新たなビジネスやイノベーションを生む下地になるかもしれない。だが日本経済全体にどこまで好影響を与えるかは不透明だ。

企業が週休3日制を選んだ従業員に対し、給与水準を維持したままで週の労働時間を減らすとは限らない。週の労働時間を減らし、そのぶん基本給も減らす場合が想定される。後者の場合、新たな休みを副業などに充てる場合は別だが、自己研さんもせずにただ休む人が増えるようなら、人材力の底上げどころか、世帯収入の減少で消費が目減りするだけに終わりかねない。

企業が余剰となった人員を半ば強制的に週休3日制に移行させて賃金を減らす「人件費カット」の手段として使う動きが出てくる懸念もある。企業の悪用を防ぎつつ、働き手の学ぶ意欲に基づく選択制ができるかどうかが分かれ道になる。

[日経電子版 2021年05月05日 掲載]

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