週休3日制に導入機運 国内外で試行、政府は骨太反映へ

政府・自民党内で週休3日制の導入論が浮上してきた。少子高齢化の加速をにらみ、育児・介護との両立を含め多様な働き方を後押しする狙いがある。新型コロナウイルス禍でテレワークが広がるなど就労環境が変化していることも背景にある。単に休日を増やすにとどまらず、時間管理型の雇用慣行を改革し、生産性を高める制度設計につなげられるかが問われる。

日本企業は仕事の内容や成果より、働いた時間を重視する組織風土が根強い。いま週休2日制が大半を占めるのも法令の規定があるわけではなく社会の横並びの体質のあらわれという面がある。週休3日制自体は労使の合意などで柔軟に導入できる。重要なのは制度の変更で何を目指すかだ。

政府の経済財政諮問会議は13日、成長性の高い分野に人材シフトを促す方策について議論する。テーマの一つに週休3日制を位置づける。大学院などで新たな知識やスキルを身につける学び直しへの活用を想定している。夏にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む方向で調整する。

与党でも機運が高まる。自民党の一億総活躍推進本部は1月、希望者が週休3日を選べる仕組みを「広範に導入する」試案を公表した。月内にも提言をまとめる予定だ。

背景には労働力の縮小という構造問題がある。15~64歳の生産年齢人口は1995年の8700万人をピークに減っており、2030年には7千万人を下回る見込みだ。社会全体で生産性を高める環境整備が必要だ。

コロナ下の経済構造の変化への対応も迫られている。テレワークをはじめ、時間や場所に縛られない働き方に対応した人事評価が課題になる。

海外ではニュージーランドのアーダーン首相が20年5月に導入を呼びかけた例がある。食品・日用品大手の英ユニリーバは20年12月、ニュージーランドの従業員で試験的に始めた。期間は1年間。給与水準は変えない。生産性の向上などが確認できれば他地域への展開も検討する。

ネット広告の独アウィンは21年1月から導入した。コロナ禍によるテレワークの定着に合わせて20年に週4.5日勤務を試験導入したところ、生産性が高まったという。英レディング大学の19年の調査では、週休3日(週4日勤務)を導入した英企業の64%が生産性が向上したと回答している。

国内企業でも既に週休3日制の動きはある。みずほフィナンシャルグループ(FG)は20年12月から、銀行を含むグループ5社で週休3~4日制を導入した。従業員約4万5千人が対象で、介護や大学院進学などを目的に希望すれば取得できる。週休3日の場合、給与は通常の8割になる。

賃金をどうするかは制度設計による。システム開発のエンカレッジ・テクノロジは4月から、週1~3日の範囲で休日を選べるようにした。勤務日に長く働くことで所定労働時間は変えず、給与水準を維持する。

大事なのは休みを増やすこと自体ではなく、制度改革を通じて生産性を高めたり、ワークライフバランスを改善したりすることだ。19年から週休3日を選べるようにした水処理大手のメタウォーター。利用者は全体の1~2割だ。テレワークの運用拡大で、あえて週休3日にしなくても仕事と家庭を両立しやすくなったのが理由という。

週に3日以上の休日を設ける国内企業は20年時点で8.3%と、16年から2.5ポイント増えた。日本総合研究所の山田久副理事長は「企業は人事・管理制度を見直した上で、制度の本質を従業員らに浸透させる必要がある」と指摘する。

[日経電子版 2021年04月12日 掲載]

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