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報道キャスターが指南 リモート面接「熱」を伝える話し方

リモート面接に効く話し方 キャスター・榎戸教子さん

人物をイメージして語りかける話し方を、キャスターの榎戸教子さんは勧める
人物をイメージして語りかける話し方を、キャスターの榎戸教子さんは勧める

転職にあたって「リモート面接」はもはや避けて通れない。リモートでのコミュニケーションの特徴を踏まえて、効果的にアピールするにはどうしたからよいか。専門家が解説する連載の2回目は、報道キャスターという仕事のかたわら、大学生にリモート面接対策を指導する榎戸教子さんに話を聞いた。

◇  ◇  ◇

――リモートでのコミュニケーションが短期間で急速に広がりましたが、難しさを感じている人も多いようです。

「私もアナウンサーになった当初、カメラに向かって話すことになかなか慣れず、しっくりくるまでに3年ほどかかりました。カメラやパソコンの画面など無機質なものに向かって話すことに違和感を覚えるのはごく自然なことです。アナウンサー研修ではカメラの横に人形を置いたり、家族の写真を貼ったりして練習しました。要は、誰かの顔を思い浮かべながら語りかけると、自然な表情になるというわけです。テレビのアナウンサーはカメラの向こうにいる視聴者を意識することによって、自然に話しかけているように見えていると思います」

――リモートでの取材や打ち合わせなどを経験するなか、リモートでのコミュニケーションで気を付けていることは何ですか。

「相手のことを理解できたと思えて初めて心地よいコミュニケーションが成立すると思います。リモート環境でもいくつか工夫するだけで、リアルの時とそん色のない満足度を得ることができます。たとえば、対面で会う時よりも『Aさん、よろしくお願いします』『Bさん、ありがとうございました』といった名前での呼びかけを増やすと、距離がぐっと縮まります」

「相手目線での配慮も必要です。年齢などに合わせて聞き取りやすいであろうペースで話したり、相手の職業やバックグラウンドによって自己紹介の方法や内容を変更したりと、細かい調整を加えながら、双方向での会話のキャッチボールができているかを確認しながら話すとよいでしょう。面接の場合でも、いつも決まった自己紹介をするのではなく、相手によって少しアレンジするだけで、自らを上手に伝えることができ、心地よいコミュニケーションに近づくのではないでしょうか」

声の大きさや高さで熱意を示す

――キャスターの仕事を通じて得たリモート面接のヒントは?

「第一に、話すスピードを意識するとよいでしょう。テレビでアナウンサーが原稿を読むスピードはおおよそ1分に300文字。聞いて一度で理解できるスピードだと言われています。面接でもこの程度のスピードをベースに話すと、幅広い年代層の人が安心して聞けるでしょう」

相手が聞き取りやすい「ゆっくり、かつ丁寧に」の話し方がコツだという
相手が聞き取りやすい「ゆっくり、かつ丁寧に」の話し方がコツだという

「話し方としては『ゆっくり、かつ丁寧に』を心がけてください。オンラインでは特に、聴覚と視覚の情報のみが頼りです。リモートのデメリットであるタイムラグをどうカバーするかを考えた場合、早口で話すと聞き逃される部分が多くなってしまいます。ずっと同じスピードで話すのではなく、きちんと伝えたいパートは少しゆっくり話すなどの緩急も大事です」

「リモート面接では声の大きさも重要なポイントです。目の前のパソコンに話そうとすると、おのずと50センチメートル程度の距離にいる人に話す声になってしまいます。一方、自信があるように聞こえる声というのは、3メートル先にも聞こえる声。3メートル先を意識すると、声が自然と前に出ます」

「前を意識すると、声の高さやエネルギーも変わり、熱意が相手にも伝わりやすくなります。リモートは『熱意が表現しにくい』のが弱点なので、3メートル先を意識し熱意が伝わっていると、たとえネットの都合で少し途切れても熱は伝わっているはずです。話すスピードについてもそうですが、リモート面接ではネットの不具合もある程度想定した準備が必要だと思います」

――初対面の相手に、短時間でかつ画面越しに自分を印象づけるコツは何ですか。

「第一に、自己紹介です。これまでインタビューや取材で、のべ2万人近くの人にお会いしてきましたが、その中で特に印象に残っている人は100人にも満たないかもしれません。印象が残っている人に共通するのは、初対面での一言目に印象に残る言葉を発し『心をつかむコミュニケーション』をしているなと感じたこと。これはリアルでもリモートでも共通だと思います」

「こういった経験から、まず実践してほしいのは『7秒自己紹介』です。7秒はビジネスの場面で名刺交換にかかるおおよその時間。短いですが、最初の7秒で心をつかめないことにはどれだけ時間をかけても難しいでしょう。肩書きと名前に、印象的なキーワードを添えて挨拶すると相手の脳がイメージしやすくなるはずです。『人事一筋20年のCです』『DXのことならお任せください、Dです』といった具合です。相手が聞きたくなるようなキーワードを入れ、その後に会話が続くと成功と言えるでしょう」

「第2に顔の表情です。リアルの場合、ドアを開けたときから面接が始まっています。リモートでも相手が先に待機していた場合はオンラインになった瞬間の表情から見られていると思ったほうがよいでしょう」

面接官が探しているのは「仲間」

――面接の際、最初に見せる顔の表情でどういった工夫が必要でしょうか。

「最初の印象が大事なので、『今日の日を待っていました!』というような『七分咲き』の笑顔で挨拶しましょう。この瞬間に受かる人か受からない人かが分かるという採用担当者が非常に多いです。ひとたび会話が始まったら『五分咲き』や『三分咲き』の笑顔で十分です」

「面接官は表情の変化を通して、人間性をはかろうとしています。過去に苦労した経験を話すときは少し苦悩した顔をしたり、何かを達成した話の際は満面の笑顔になったりと、表情豊かに話す人と一緒に働きたいと思うのが自然です。リモートの場合、リアルのときよりも表情が硬くなりがちです。リモートでも表情豊かに様々な表情を見せられるよう、心がけることをおすすめします」

――多くの人が試行錯誤を重ねているリモート面接ですが、ほかの人と差をつけるには、どういったコミュニケーションが大事でしょうか。

「リモートでも熱が伝わる話し方ができるか、『この人に会ってみたい』と思われるかどうかが最も重要です。面接の練習をしている自分の様子を録画し、面接官になったつもりで、発言内容や言葉遣い、表情、ジェスチャー、醸し出す雰囲気、会社に対する思いが伝わっているかなどを一通り確認してみるとよいでしょう」

「面接官は『仲間』を探しています。リモートで駆使できるあらゆる手段を駆使して『一緒に楽しく働ける人』だというメッセージを強く発信してみてほしいと思います」

(日経転職版・編集部 宮下奈緒子)

榎戸教子
BSテレ東「日経ニュースプラス9」キャスター。さくらんぼテレビ、テレビ大阪のアナウンサーを経て2008年から経済キャスターに。現在、BSテレ東「日経ニュース プラス9」に出演中。常葉大学で10年間、非常勤講師を務めた他、国公立大学、私立大学で就職面接対策講座を受け持つ。企業研修や経営者のスピーチ指導も行っている。アナウンサー事務所PICANTE代表。

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年04月10日 掲載]

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