サイボウズ、取締役に社内公募17人 フラットな統治狙う

法人向けクラウドサービスのサイボウズは28日、東京都内で定時株主総会を開き、社内公募で自薦した取締役候補17人の選任議案を可決した。社内公募による取締役選任は珍しく、青野慶久社長や新卒などの社員からなる。同社は徹底した情報共有によるフラットな組織運営を標榜しており、今回、企業統治の面でも一手を打った。(青野社長のインタビューを記事下部に掲載)

28日、株主総会で議長として議事を進行するサイボウズの青野社長(インターネットのライブ配信画面、東京都中央区)
28日、株主総会で議長として議事を進行するサイボウズの青野社長(インターネットのライブ配信画面、東京都中央区)

株主総会は来場とインターネットを通じての質問や議決権行使も可能な仕組みを併用する方式で開催した。総会をライブ配信し、約300人が視聴した。社内公募の取締役17人の選任案は、各候補とも必要な出席株主の過半の賛成を得て可決した。

サイボウズは階層などをなくしたフラットな組織として知られる「ティール組織」のような運営をめざしている。これまで取締役は青野社長含め社内人材の3人だった。

株主総会で株主からは「売上高(2020年12月期で156億円)などで会社の規模を考えれば取締役17人は多いのでは」といった質問がネット上で寄せられた。青野社長は「情報を徹底的にオープンにすれば人数自体は問題ではない」と応じた。

青野社長は株主総会後、日本経済新聞の取材に「これまでも全社員が取締役の役割を担い、互いを監督し誰もが助言できる組織をめざしている」と述べ、取締役の人数にこだわらない理由を説明した。

もっとも社内公募を経て選任された取締役は、経営監督という監督対象との適度な間合いが必要な責務を、社員に近い距離感のもと果たしていく難しさに向き合うことになる。企業統治の面で有効に機能するのかが注目される。

サイボウズは社外取締役を設置していない。3月施行の改正会社法は社外取締役の設置を義務付け、施行後最初の事業期間の定時株主総会までは経過措置が適用される。青野社長は株主総会で「今後の総会で社外取締役を選任する。サイボウズらしい選任を議論している」と話した。

青野社長「既存組織イメージとの差、埋めたい」

サイボウズの青野慶久社長は28日の定時株主総会後、日本経済新聞社のインタビューに応じた。社内公募による取締役候補の選任案が可決されて同社がめざすフラットな企業統治を進めるかたちが整ったものの、「社外の理解はまだこれから。多くの人が持つ既存の組織イメージとのギャップを埋めていきたい」と意欲を語った。主なやりとりは以下の通り。

――なぜ階層などをなくしたフラットな組織づくりを目指すのでしょうか。

「これだけ情報共有の仕組みが発達しているにもかかわらず、組織のモデルだけが古くないかと感じていた。誰もが情報発信をして相互に伝えるような時代になったとき、今までとは全然違う組織モデルが作れ、その方が効率よく働けるだろうと考えている」

「イメージしている組織では現場の一人ひとりが自分の欲しいシステムを作れるという世界観だ。その点で当社のソフトウェアは、マイクロソフトやセールスフォースなどが提供する製品と比べて値段も安く、カスタマイズなど使い勝手がよいと考えている」

――社内公募の取締役候補17人が選任されました。株主総会では同議案についての質問が相次ぎましたが、理解は得られたと感じていますか。

「今の時点では分からない。やはり、多くの人の頭の中に既存の組織イメージがあるので、それとのギャップを埋めるのが大変だ。引き続き説明していかないと、何をやろうとしているかが伝わらないと思う。社内でも最初は疑問の声があったものの、説明をして、だいぶ理解は深まった。社外はまだこれからだ。引き続き情報発信をしてギャップを埋めていきたい」

――改正会社法で今後、社外取締役の設置が義務付けられます。これまで設置しておらず今後起用する必要がありますが、社外取締役に期待する役割はどのようなものになりますか。また、どのような人材がふさわしいですか。

「普段から(転職などで)社外の人材にどんどん入ってきてもらっており、意見をもらっている。すでに多くの人材が社外取締役の役割を担っている。そのうえで、どういう人材がふさわしいかというと、社外取締役を名乗りたい人が名乗ればいいという発想になる。そのため(今回の取締役選任と同じ考え方で社外から)公募という形もあり得る」

「(サイボウズがめざす)ティール組織の発想は、誰かがやらせるということではなく、やりたいかどうかがスタートだ。社外取締役に関しても基本的にはやりたいという人にやってもらう」

――経営の自由度やスピードを向上するためにMBO(経営陣が参加する買収)といった選択肢は考えていないのでしょうか。

「今は全く考えていない。誰もが参加したいから参加するような組織をめざしているので、(出資による)株式保有をより分散していく方が自然だと考えている。足元で株主数は2万5000人くらいだと思うが、それが倍になり、さらに倍になっていくという方向性がめざすイメージに近い」

(聞き手は上原翔大)

[日経電子版 2021年03月28日 掲載]

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