次世代リーダーの転職学

35歳からの市場価値は「採用する側の論理」で磨く

ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

これからのチームはエキスパートが強みを持ち寄る(写真はイメージ) =PIXTA
これからのチームはエキスパートが強みを持ち寄る(写真はイメージ) =PIXTA

新型コロナウイルスの感染拡大から1年。2019年までの日本では空前の人手不足といわれながらも、大企業の早期希望退職募集が増加する「黒字リストラ」が話題になっていました。コロナ禍発生後には多様な産業が売上高の激減にあえぐ中、日経平均株価は3万円に乗せるなど、経済の先行きはさらに見通せない状況になっています。企業にはデジタル変革の波が押し寄せ、求める人材像にも変化が起き始めています。まだ長い仕事人生を生き抜かなければならない35歳以上の世代はこれからの時代にどう備えるべきか。今回はミドル世代のための働き方のヒントを集めました。

DXから逃れられない時代の「仕事選び」

過去30年にわたって、日本では産業構造の変化が叫ばれてきましたが、「コロナショックによる働き方の急激な変化」「デジタルトランスフォーメーション(DX)の波」「産業と資本のグローバリゼーションの拡大」という3つの大波の影響を受け、もはや自分たちの意志を超えて、これまでの構造が大きく変わろうとしています。

製造業やメガバンクを中心とした、日本型の経営がこれまでのやり方では持ちこたえられなくなり、ユーチューブやネットフリックス、アマゾンプライムなどの影響で、放送や出版、広告の世界も勢力地図が変わろうとしています。口先だけで変革の時代が来るといわれていた数年前と違って、現実の経済や暮らし、仕事にも影響が及び始めています。これらの波は止まることはなく、むしろ今後さらに加速してくるとみるほうが自然です。

その環境下において、たとえば今35歳のビジネスパーソンの働き方はこれからどう変わっていくのでしょうか? もし、現役で70歳まで働くとしたら、残された仕事人生は35年。2056年の日本で、どんなキャリアを歩むことになるのでしょうか。

ちなみに現在世界3位の日本の国内総生産(GDP)は、50年には世界7、8位になっているという予測があります。また、高齢化先進国として、42年ごろに高齢者数はピークになり、東京都民の4人に1人は65歳以上になります。50年前後には日本全体の人口は1億人を割り込んでいるという状態です。

この外部環境の変化は当然、みなさんのキャリアに関わってきます。どんな職種でキャリアを積んでいくかという前に、どんな産業、業界を選択するかということが非常に重要になってきます。

食品や電気、ガス、道路、建築などのインフラや医療・医薬などのサービス、それらを縦横無尽につないでいくデジタル社会やロボットなど、多くの業界で変化と進化が求められる一方で、社会的な需要が減衰していく業界も当然生まれてくるはずです。まず、長期の変化を見据えて、自らがキャリアを磨く業界や企業を選ぶことが重要です。

強い会社ほど専門の要望レベルが高い

これからの企業では、今までのような同質化集団ではなく、多様な能力と強みを組み合わせていくプロジェクト型の働き方が中心になってくる可能性が高くなっています。組織全体を調整する運営管理者は必要ですが、全員が総合職で、組織間の利害調整をしながら合議的に物事が進んでいく形態はどんどん減っていき、事業全体の目的から逆算された専門家集団のチームが組成され、目標に沿ってKPI(重要業績評価指標)が運用されていくという、筋肉質な事業形態が広がっていくと考えられます。

わかりやすく言うと、「同質化した大量の総合職集団」から「多様な専門性を持った少数精鋭のチーム」への変化です。

すべての会社が絵に描いたようにマネジメントが進化するわけではありませんが、強い会社ほど、より合理的で効率的な組織形態になっていくはずです。当然、これらの企業で求められる人材は、「どんな職務にも幅広く適応していくゼネラリスト」ではなく「専門性を必要とするミッションをハイレベルで実現できるスペシャリスト」になります。

このような時代を迎えるとしても、過去の経歴を今から変更するわけにはいきません。過去、経験を積んできた中で、自分自身のメインキャリアをどう位置付けるか? そして、どんな経験や専門性を武器に戦っていくのか? できれば自分の「得意なこと」「好きなこと」を使って「長所伸展」で進めるとベストですが、今から新しいスキルを身に付けるという選択もあり得ます。

35歳からの長期キャリアを考え、これからめざす業界や企業、職種や役割が決まれば、そこに向けて準備すべきことは明確になります。この前提で、実際の採用選考を想定してみたいと思います。今回お伝えしたいポイントは、採用する側の視点をいかに身に付けるか、ということです。

採用する側の視点は、再現性の確からしさ

採用する側と応募する側の間で生まれやすいギャップの1つ目が、応募書類や面接での自己紹介です。そもそも相手はあなたのことを何も知らない。人気のある募集案件なら、何十人、何百人といった求職者から応募が来ていてもおかしくない。採用担当者としては、一つ一つの応募書類に詳細に目を通し、一人一人の面接にそこまで時間をかけるわけにもいかないというのが現実です。

最初の関門は、応募書類、特に職務経歴書で、いかに端的に自分自身の強みを伝えるかということになります。採用する側は、募集しているポジションの役割や難易度を考えながら、また自社の風土や文化、価値観を考えながら、「この人は即戦力として活躍し、既存のメンバーの中に溶け込んでくれるだろうか?」という視点で選考をしています。

その観点を意識して、まずは「自分がどんな経験を持つ何者で、どんな成果を発揮しうるのか? また、どのような取り組み姿勢や仕事への考え方を持っているのか」を、簡潔かつ率直に伝える必要があります。

ギャップが生まれやすい2点目のポイントは、実績の伝え方です。

過去の経歴から自分の強みを示すために、転職ノウハウ系の記事などでは、過去に生み出した成果を具体的な「結果」で語ることを強く勧めています。売上実績や、新規開拓の顧客数、予算達成率、社内表彰などをトロフィーのように羅列している人もいます。

しかし、採用する側が本当に知りたいのは、その人が過去に記録した「結果」ではなく、自社に入社した場合にどれだけの成果を生み出せそうかという「再現性の確からしさ」です。このギャップを避けるためには、応募書類や面接の場で、以下の要素を的確に伝えることが重要になります。

(1)その仕事の目的と実現したかったゴール
(2)目標達成のために自分なりに考えた戦略・作戦
(3)具体的に実行したこと
(4)生み出すことができた成果
(5)そのプロセスで得た学び(再現可能なエッセンス)

外部環境や顧客心理、競合の動きなど、あらゆる側面の変化が速まっていく時代に、筋肉質な組織の中で企業が求める活躍ができるかどうかを、いかにうまくプレゼンテーションしていくか。スタートラインに立てるかどうかの勝負は採用選考にかかっています。

これらの情報をまとめると、採用する側が知りたい大きな柱は、次に挙げる3つの骨格ということです。

A 課題をクリアに設定できる力はあるか?
B 課題解決までの確からしい計画を立案できるか?
C 描いた計画を確実に実行できるか?

そして、Cの実行フェーズをさらに細かく分解し、目標達成するまでのプロセスで確認しようとすることは、次の4ポイントになります。

C-1 自分なりの創意や工夫を駆使できるか?
C-2 スピーディーに動くことができるか?
C-3 緻密で正確に行動ができるか?
C-4 粘り強くあきらめずに行動できるか?

ぜひこれらのポイントを踏まえて、ロジカルかつ実証的な自己PRを磨いていただければと思います。もちろん、最も重要なことは実務で結果を生み出すことですが。

黒田真行
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年02月26日 掲載]

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