「転勤回避権」管理職に 三菱ケミカル、最長6年間

三菱ケミカルは個人の事情に応じて転勤を回避できる仕組みを整える
三菱ケミカルは個人の事情に応じて転勤を回避できる仕組みを整える

三菱ケミカルは4月、管理職約5000人を対象に最長6年間は転勤を回避できる制度を導入する。希望すれば現在勤める都道府県以外への転勤を避けられる。同社は人事異動のポストを原則公募制で決める方針で、勤務地も社員の意思で決まりやすくなる。優れた人材の確保に向けて、育児や共働きなどで転勤の負担が大きい社員に配慮する動きが産業界で出てきた。

導入する「勤務地継続制度」は、国内で働く管理職が対象となる。別の都道府県の勤務地へ異動を望まない場合に申請する。制度を使えるのは、3年間を1回として計2回の合計6年間分とする。制度を使っても給与は減らず、理由も問わない。

同社は社内のポジションを原則として公募する制度を4月から始め、あらかじめ勤務地を知った上での人事異動が増える見込み。公募で人事が決まらない場合には会社命令による異動も出るが、並行して個人の事情に応じ転勤を回避できる仕組みも整える。管理職ではない一般社員の約1万2千人についても、転勤は本人の同意を原則とする。

三菱ケミカルは2020年10月、管理職に職務定義書を作成して処遇する「ジョブ型」雇用を導入した。非管理職も4月以降は事前に定義された職務への成果で給与を決める。ジョブ型を生かした公募制は富士通も導入しているが、転勤回避の仕組みは珍しい。

日立製作所も単身赴任解消に向け、配属地近くへの居住を義務付けない新制度の運用を2月から始めた。営業や研究職など幅広い職種が対象で、業務内容や出社頻度などを踏まえて上司が希望者と相談した上で可否を判断する。

例えば自宅のある北海道から配属先の東京に単身赴任中の社員の場合、北海道の自宅で家族と同居しながらでも在宅で勤務を続けることができるようになる。東京の勤務先へ出社する際の交通費も会社が負担する。

国内3万人強の社員のうち、単身赴任中なのは約1500人。新型コロナウイルスの感染が拡大した20年春以降、社員の多くが在宅中心の働き方となった。単身赴任先で在宅勤務を続ける社員も少なくない。部署が変わった後でも自宅で家族と同居できる新制度を設け、働き方の選択肢を増やすことで優秀な人材を囲い込む。

[日経電子版 2021年03月17日 掲載]

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