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初心者でも学べるAI講座 全24回、転職のステップに

ヒューマンアカデミーの川上輝之社長はAI講座に手応えを感じる
ヒューマンアカデミーの川上輝之社長はAI講座に手応えを感じる

新型コロナウイルス禍で求人需要が伸び悩む一方、IT(情報技術)人材へのニーズは拡大が続く。IT人材へのキャリアチェンジを目指すビジネスパーソンは少なくないが、ハードルが高いと思われがちな分野でもある。未経験者は何をどう学べばいいのか、学ぶ上で重要な点は何かなどを、資格スクールを展開するヒューマンアカデミーの川上輝之社長に聞いた。

――「初心者・文系出身でも安心して学べる」と銘打った人工知能(AI)講座が人気のようですね。

「2020年6月に開講した『初心者・文系出身でも安心して学べるIT総合コース:AI基礎専攻』はコロナ前から企画し、文系人材やITが専門ではない人がこれからのDX(デジタルトランスフォーメーション)社会で活躍することを後押しするためにという思いで立ち上げました。未経験からいきなりエンジニアになるケースは少ないと考え、まずは、AIを活用する側の人材を育成することを目指したわけです。人生100年時代を迎え、長期化するキャリアでスキルアップする一助になれば、という思いもありました」

「従来のIT講座は、20~30代の男性が目立ちましたが、本講座の受講生は、ビジネスパーソン、主婦、学生、シニア層など非常に幅広く、女性も通常より多い4割ほどを占めています。デジタル社会への漠然とした不安が受講の動機になるケースが多いようで、『何から始めればよいか分からない』『AIとは何かを知りたい』『いつか転職に生かしたい』といった声が多く聞かれました。『現在の仕事で活用したい派』と『転職に向けてスキルアップしたい派』で半々ぐらいのイメージです。転職希望者には飲食・アパレルなど、コロナの影響が大きいサービス産業の人が目立ちました」

「当初は全国11の校舎で合計約100人の受講者に対し実施。その後、昨年10月にオンデマンド配信を可能にしたほか、広告も強化したところ、一気に受講者が増え、現時点での累計受講者は300人を超えました。前年までのIT関連講座の実績と比べると、特に需要が大きい首都圏では約5倍の受講者を獲得できたことになります。AI講座で関心を深めた人には、初心者向けの『プログラミング・アプリ開発』コースも案内していますが、約8割の人がプログラミングにも興味を持ち、こちらの講座も受講しています」

転職を意識した受講者が増加

――講座内容で意識したことは?

「これまでのIT系講座は知識の習得がメインでした。今回の講座は『AIの様々なツールを使って(仕事を)デジタル化できる人材を輩出する』『文系人材がデジタルを実践(企画など)に取り込めるように』というコンセプトなので、特定分野の知識を学ぶというよりは、AIのサービスが使われている世界の全体像を理解してもらい、エンジニアと話ができるようになるということを目指しました」

講座で用いているロボット教材
講座で用いているロボット教材

「全24回の講座は、プログラミング環境、ROS(ロボットオペレーティングシステム)演習、AI、音声合成サービス、画像認識など様々なトピックスで構成しており、データサイエンスの基礎知識が身につくだけではなく、実践的なAIスキルが習得できる内容になっています。実際に体験してもらうことにも重きを置きました。たとえば、ロボット掃除機を分解して内部の構造について説明したり、オリジナルのAIのロボット教材を全受講者に配布し、自ら動かしてもらったりしています」

「ロボット教材はカメラとタイヤがついて走る、縦横各20センチ程度のコンピューターですが、世の中のAI製品と同様、センサー(カメラ)、AI(コンピューター)、ハードウエア(ロボット本体)の3つの基本要素でできています。実際のAI機器も小さいコンピューターにプログラムを入れて動かすので、ロボット教材を動かすことで実際のAI機器の開発の流れを体験できると考えています」

――AI講座の今後の方向性は?

「今年の6月から内容を一部ブラッシュアップした講座を再び開設する予定です。前回はレベルを低めに設定していたものを今年は少し上げ、一方で『超初心者』向けコースを新設します。超初心者が入ると、レベルがそちらに寄ってしまう傾向があるので、パソコンの基本的な使い方などの説明が必要な人には超初心者向けコースの受講を勧める計画です」

「AIの世界は変化が大きいので、講座で取り上げる事例もどんどん最新のものを入れていくつもりです。また、DXは企業ごとに課題が異なります。自社の課題が分かっていないケース、課題は分かっているけれどどう解決したらいいか分からないケース、課題と解決法は分かるものの、対応できる人材がいないケースといった具合です。今後、多くの企業がDX化に向かうにつれ、さらにいろいろなニーズが出てくると思います」

「当社はグループに人材紹介会社がある強みを生かし、『企業がDXで何を必要としているか』『どういった人材を求めているか』にアンテナを張り、最新のカリキュラムに反映していきます。初心者向けAI講座は、2023年3月までに累計受講者数で1500人を目標にしています」

――コロナ禍以降、AI以外の講座で何か変化はありましたか?

「飲食・アパレル業の人などが『会社の経営が不安定になったので、転職目的でスキルを身につけたい』とIT系の講座を多く受講するようになりました。AI講座はたとえ初心者向けであっても敷居が高いと感じる人やもともとデザインを好きな人がウェブデザインの講座を受けているようです」

「安定したイメージのある建築業界での仕事を目指し、CAD(コンピューターによる設計)を選択する人もいます。在宅勤務で時間ができ自分の好きなことを仕事にしようと思い立った人や何かスキルを身につけたいビジネスパーソンもIT講座を選ぶケースが多いようです」

「興味深いところでは、心理系の通信講座の受講が前年比2割以上増えています。コロナ禍で精神的に落ち込みがちで、自分のために学ぶケースや人の役に立ちたいとカウンセリング力を身につけるために勉強を始めるケースだと推測しています」

(日経転職版・編集部 宮下奈緒子)

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年03月06日 掲載]

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