次世代リーダーの転職学

仕事に役立つ学び 個人仕様にカスタマイズする時代へ

エグゼクティブ層中心の転職エージェント 森本千賀子

ウェビナーは学びの手法として定着しつつある(写真はイメージ) =PIXTA
ウェビナーは学びの手法として定着しつつある(写真はイメージ) =PIXTA

新しい年が始まりました。皆さんは今後どんなキャリアビジョンを描き、その実現のために、今年、どのような行動を起こそうと考えているでしょうか。「転職する」「副業を始める」、あるいは「新しい知識・スキルを身に付けよう」と決意している人もいるのではないでしょうか。

今回は「ビジネススキルアップ」の最新トレンドをテーマにお話しします。しばらく前までは、ビジネスパーソンが勤め先で受ける研修とは別に、独自にビジネススキルアップを図ろうとすると、勉強会やセミナーに参加したり、ビジネススクールに通ったりするのが一般的でした。

しかし、新型コロナウイルス禍によってあらゆる活動がオンラインにシフトした現在、「ウェビナー」とも呼ばれるウェブ上でのセミナーが増えています。在宅勤務となった人たちは、通勤時間が削減された結果、時間に余裕ができました。また、会場まで足を運ぶ必要がなく、自宅からアクセスできる手軽さから、ウェビナーで学ぶ人が増えています。

ビジネススキルアップの手段は「オンライン」へシフト

今後、5Gの普及やデジタルテクノロジーの進化に伴い、オンライン学習がさらに広がっていくのは間違いないでしょう。そして、学習のスタイルは、これまでのような集団学習・集合研修から「個人学習」へと、パーソナライズ化が進んでいくと予測できます。

新たなビジネススキルトレーニングのスタイルとして、私が注目しているのは「マイクロラーニング」です。これは1回あたり5~10分程度の動画や、細分化された「マイクロコンテンツ」を活用して行う学習を指します。

これまではセミナー会場に受講者が集まり、講師による講義を数時間かけて聞く形式が主流でした。一方、マイクロラーニングでは業務の合い間や移動中といったすきま時間に、スマートフォンやタブレットなどで学ぶことができます。この学習スタイルが今後、広がっていくことでしょう。

インタラクティブなスキルトレーニング・サービスが登場

しかし、ただ動画やウェブコンテンツを見るだけだと、学んだような気にはなるものの、しっかり身に付かないことも。当然、仕事のパフォーマンスにもつながりません。

この課題を、人工知能(AI)を活用して解決するサービスが登場しています。たとえば、ビジネスシーンで活用できるノウハウを10分間かけてインプットしたら、自分で実際にロールプレーをする。その様子を撮った動画を送ると、AIが診断して習熟度をフィードバックしてくれる。そのフィードバックをもとに改善のためのコーチングを受けられるといったサービスです。

世界203の国と地域で使われているラーニングプラットフォーム「UMU(ユーム)」は、インプット→アウトプット→AIや人によるコーチングを繰り返すことによって、パフォーマンスの向上を目指す、インタラクティブ機能を備えたクラウドサービスを提供しています。

そのAIコーチング機能の一例をご紹介しましょう。「プレゼンテーション」のトレーニングサービスでは、ウェブカメラに向かって数分間のプレゼンをすると、「スピード」「明瞭さ」「ジェスチャー」「表情」「アイコンタクト」「流暢(りゅうちょう)さ」の6指標について5点満点で採点されます。プレゼンのスクリプト全体や、スクリプト内で話したキーワードの抽出により、100点満点で理解度について採点を受けることが可能です。ユーザーはフィードバックの内容を意識しながら何度も繰り返し行うことで、スコアが高まり、プレゼンスキルが身に付いていくのです。

既に多くの教育ベンダーがUMUを活用した「ロジカルシンキング」「コミュニケーションスキル」など、テーマごとのプログラムを提供しています。

この機能を企業の研修に導入する場合、その企業に必要なスキルをベースにコンテンツをカスタマイズすることが可能です。たとえば、プレゼンスキルのトレーニングをする場合、その企業の製品・サービスの特徴をしっかり伝えられているかどうかが判定されるというわけです。

「社員研修」に対し、企業が抱える課題・ニーズ

近年、この「UMU」を活用したトレーニングを導入する企業が増えています。

日本でUMUを提供しているユームテクノロジージャパンの代表取締役・松田しゅう平さんに、今、ビジネススキルトレーニングの世界で何が起きているのかを聞きました。

――昨今、企業では「社員研修」において、どんなニーズが高まっているのでしょうか。

多くの企業が抱える悩みとして、「研修で教えたことが社員のパフォーマンスにつながっている実感がない」という声を多く聞きます。研修でインプットしたことを、仕事でアウトプットできるようにならなければならない。そのフォローをするのは、本来ならば現場のリーダーやマネジャーですが、多忙でそんな余裕がないのが現実です。また、コロナ禍以降に増えたリモートワークでは、上司が横に付いて常にチェックすることもできません。

そこで、企業が従来行ってきた集合研修やeラーニングなどのプログラムはそのまま活用するとして、UMUで「研修後にアウトプット(練習)させる」というステップを差し込むのです。単独学習だと、間違った理解のまま練習をしてしまうこともあるので、AIがリアルタイムでフィードバックします。リーダーやマネジャーは最終フィードバックだけをすればよい仕組みです。当社は、AIと人のコンビネーションにより、ポイントを押さえたトレーニングができるようにすることによって研修効果を高める支援をしています。

今の時代は変化のスピードが速い。従業員に製品・サービスの研修をしても、翌月には新機能が追加されたり、まったく新しいサービスがリリースされたりすることもあります。つまり、研修プログラムの「経年劣化」のスピードも速くなっているのです。集合研修ではとうてい追いつきません。そのため、知識や情報を早期にアップデートして、パフォ―マンスにつなげる学習が必要とされているわけです。

従業員の「個」にフォーカスした学びを提供

――学習のパーソナライズも進んでいますね。

近年のビジネスパーソンは、会社から与えられる学びだけでは満足していません。自分のキャリアを築いていく意識が高い方は、自腹を切って英会話や経営学修士(MBA)プログラムやマインドフルネスなどを学んだりしています。特に最近ではウェブやSNS(交流サイト)、ユーチューブからも学びの機会を得ています。

企業の教育担当者は、従来型の研修やコーチングだけでなく、そうした「個」の学びの部分も提供しなければ、従業員がどんどん外に向かっていってしまうという危機感を抱いています。「帰属意識」が希薄になってしまうと懸念しているわけです。

働く人たちは、本当に自分にとって必要なもの・役に立つものしか選択しなくなってきています。だからこそ、企業側はパーソナライズされた教育を用意する必要が強まっています。「大勢のうちの一人」として画一的な教育をするのではなく、その人専用にカスタマイズした、その人にとって本当に必要な教育を提供する。それが会社に対するエンゲージメントを高めることにつながるでしょう。

――今後のビジネススキルトレーニングの展望を、どう考えていらっしゃいますか。

「衣食住行学」という言葉があります。これらは生きていく上で重要なもので、今はすべてデジタル化されてきています。このうち衣食住行は必ず物理的なものを含みますが、「学」だけはフルオンライン、デジタル化が可能です。

コロナ禍を機に研修のオンライン化が進んだことで、「学習は効率化できる」と多くの人が気付きました。ディスカッションやダイアログ、ビジョンの共有といったことは対面で行うとしても、皆が一堂に会して講義を聞くような集合研修はすべてデジタル化していくのが望ましいと考えています。

World Economic Forumの発表に、「2030年に最も影響を持っている企業はインターネットを使って人の教育を行う、今はない企業だ」というものがありました。学びは人生を大きく変えます。オンライン化によって人々の学びに格差がなくなれば、人類は新しいステージへ進み、それがピースフルな世界をつくるのではないか……と、私たちは真剣に考えています。

そんな世界を目指し、科学的裏付けのある手法を駆使して、皆さんのパフォーマンスを高める学びを支援していきたいですね。

――松田さん、ありがとうございました。

今後は、このようにパーソナライズ化されたオンライン学習システムが広がっていくでしょう。変化が激しい今の時代、多くのビジネスパーソンの皆さんが「今の仕事の延長線上に『安泰』はない」という危機感を抱き、キャリアの可能性を拡げるためのスキル習得へ動いています。

学ぶテーマだけでなく、「学び方」のトレンドにもアンテナを張って、より自分にマッチする、効率的な学習スタイルを見つけてはいかがでしょうか。

森本千賀子

morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊『マンガでわかる 成功する転職』(池田書店)、『トップコンサルタントが教える 無敵の転職』(新星出版社)ほか、著書多数。

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2021年01月22日 掲載]

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