
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は13年ぶりに募集する宇宙飛行士の応募条件を緩和する。これまで理系の大卒以上などとしていた条件をなくし、文系にも門戸を開く方向だ。将来の月面活動を見込み、多様な人材を募集する。
文部科学省とJAXAは2021年秋に宇宙飛行士候補を新規に募集する。募集は08年以来だ。前回は応募条件を、理系分野の大卒以上の学歴に加えて、研究開発や運用などの実務経験が3年以上必要などとした。
今回は学歴や実務経験の分野を問わず文系でも応募できるよう検討する。3年以上としていた実務経験の条件も自然科学系の職種に限らない方向だ。具体的な条件は今後詰めるが、文系にも門戸を広げて「多様性を尊重しつつ、協調性とリーダーシップを発揮できる」「人類未踏の地での経験を世界中の人々と共有する発信力がある」といった人材を求める。
雇用の条件も見直す。前回はJAXAに10年以上勤務できることを条件としたが、今回は任期制や複数の組織に在籍して働く「クロスアポイントメント制度」の導入を検討中だ。宇宙飛行士に応募しやすくする。
政府は米国主導の有人月探査計画「アルテミス計画」への参加を決めており、20年代後半にも日本人が初めて月に降り立つ可能性がある。新たに選ばれた飛行士は国際宇宙ステーション(ISS)の長期滞在だけでなく、月面で活動する可能性もある。
飛行士の選抜や訓練には、民間のノウハウを取り入れる方針だ。応募者の適性評価に詳しい教育・人材関連のほか、パイロットやエンジニアの育成にたけた航空・自動車関連など企業との協力を想定する。3月19日までパブリックコメント(意見公募)や企業からの提案を集める。
前回08年の募集では、ISSでの実験や観測、メンテナンス作業などのため、科学やエンジニアリングの知識や技術を持つ人材を求めた。パイロット出身の大西卓哉さんと油井亀美也さん、医師の金井宣茂さんの3人が選ばれた。
[日経電子版 2021年02月18日 掲載]