
NTTとKDDIは16日、就職氷河期世代の就業支援を始めると発表した。50歳未満を対象にICT(情報通信技術)が学べる無料研修を実施。両社などで300人超を雇用する。新型コロナウイルスの流行で雇用環境が悪化するなか、ICT人材の需要は高い。新卒時に正社員になれずコロナ下で生活に苦しむ氷河期世代の学び直しを促して、再就職につなげる。
16日に記者会見をしたKDDIの村本伸一副社長は「社会全体でデジタルシフトが求められており、スキルチェンジのチャンスをつかんでもらいたい」と話す。同日に専用サイトを設けた。50歳未満なら誰でも応募可能で、約1万人の参加を想定する。研修は3段階あり、3月からはウェブ会議システム「チームズ」やファイル共有ソフトの使い方などリモートワークの基礎スキルなどを学ぶ6時間のオンライン研修を実施する。
次にICT分野の就業を望む500人を選び、マイクロソフト(MS)の「MSオフィススペシャリスト」やネットワークエンジニアなどの資格取得を目指す約2カ月の研修を実施する。受講者のうち、計130人規模をNTTとKDDIの両グループで採用。他企業でも170人以上採用されるよう就職を支援する。職種はシステムエンジニア(SE)や営業、事務職などを想定する。
今回の就業支援では日本マイクロソフトや、就労支援のNPO法人の育て上げネット(東京都立川市)と連携する。
バブル崩壊後の1990年代後半~2000年代前半に高校や大学を卒業した35~49歳前後は新卒時の雇用環境が悪く不本意なキャリアを歩んでいる人が少なくない。NTTとKDDIは同世代のうち計268万人が失業や非正規雇用などで支援が必要とみており、NTTの島田明副社長は「通信業界での就業がかなわなかった人に機会を提供したい」と話す。
NTTとKDDIは20年9月、社会課題の解決で連携協定を結んだ。すでに災害時の通信インフラの復旧などでの連携をしており、今回の氷河期世代の就労支援は第2弾となる。政府も30歳代半ば~40歳代半ばの正規雇用への支援を強めているが、希望職種と企業が求める技術や技能のマッチングが課題であり、企業間の連携が重要となっている。
[日経電子版 2021年02月16日 掲載]