IHI、8000人の副業解禁

国内正社員が外部で知見学ぶ、重厚長大企業も転機

新型コロナの影響で航空エンジン事業の環境は厳しい(東京都瑞穂町)
新型コロナの影響で航空エンジン事業の環境は厳しい(東京都瑞穂町)

IHIは国内の正社員約8千人の副業を解禁する。他の企業や研究機関などで働き、既存事業以外の知見を学んだり、新たな人脈をつくったりしてもらう。新型コロナウイルスの影響を受ける航空機エンジン以外にも発電設備など従来の主力事業への逆風は強まっている。外部交流を促し、新事業を生み出せる人材を育てる。人件費抑制にもつながりそうだ。

人件費も抑える

素材や重工といった大手製造業が副業を全面的に解禁するのは珍しい。1月に新制度を設け、希望者の募集を始めた。部署や職種、勤続年数などに関係なく応募できる。1週間の所定労働時間のうち半分の20時間以上、IHIで働くことを条件とする。社内での労働時間の減少に伴い、給与や手当は減る。

副業の勤務先や仕事は社員が自分で探す。航空宇宙分野のエンジニアが他の研究機関の顧問や講師を務めたり、若手社員がIT(情報技術)企業や新興企業で働いたりすることを想定する。従来とは違う分野で研究の幅を広げるほか、データ活用といったDX(デジタルトランスフォーメーション)分野の知識を本業に生かしてもらう。

副業を始める前は研究開発の計画や製品の納期などに支障がないかも上司と確認し、時間などを調整する。業務上の秘密の漏洩や競合他社で働くことなども認めない。

同社の足元の事業環境は厳しい。2021年3月期の連結純利益(国際会計基準)は10億円となる見通し。日本基準だった前期と比べ実質86%減だ。20年3月期に営業利益の7割を占めた航空機エンジンなどの航空関連事業は新型コロナにより収益が悪化。感染第3波をうけ、先行きは不透明感が増している。火力などの発電関連も脱炭素の流れで事業環境は悪化している。

事業創出めざす

IHIはこれまでも働き方に関する制度を見直している。20年11月にはグループ会社を含む国内2万人を対象に、所属する部門以外の事業に携わる「社内副業」を解禁。部門の枠を超えた連携による新規事業の創出を目指す。21年3月期中には複数の部門からサービス事業への100人規模の配置転換も実施する。

三井化学も1月から管理職を対象に社外での副業を制度化した。大手製造業はこれまで技能伝承の観点から社内での経験を重視する傾向が比較的強かった。しかし素材や機器の開発だけでなく、データ解析などデジタル技術を使ったサービスの重要性が高まっていることから、外部の技術やアイデアの獲得が急務となっている。

副業以外にも人事制度の改革が進む。三菱ケミカルは20年10月に管理職にジョブ型雇用を適用した。職務定義を明確にすることで社外からも応募しやすくした。その一方で満50歳以上の管理職を対象に最大で月給50カ月分を支払う退職支援制度も同11月に始め、人材の流動化を狙う。川崎重工業も役割や成果で報酬などを決める制度を検討している。

[日経電子版 2021年01月21日 掲載]

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