コロナ禍でも積極投資した企業、生活変化ニーズつかむ

日本経済新聞が売上高100億円以下の上場企業「NEXT1000」を対象に、2020年4~9月期の投資キャッシュフロー(CF)と研究開発費の合計額が大きかった企業をランキングした。上位にはシステム開発会社などが並んだ。2位のドラフトは新型コロナウイルスが流行する中でもオフィスデザインが好調で、在宅勤務向け住宅のモデル施設を立ち上げた。

2位 ドラフト、内装デザイン モデル住居を開設

テーブルの明るさと影の落ち着きがコントラストを描いたスタートアップ企業のオフィス。鉄道高架下のガラス張りの商業施設。樹木を配置したビル屋上の共用スペース――。ドラフトはオフィス内装から、ビルや建物全体へと対象を広げているデザイン会社だ。最近は住居の内装にも乗り出した。

建物の設計・デザインはゼネコングループなどで構造計算まで手掛ける「組織事務所」と、「アトリエ系」と呼ばれる独立事務所がある。設計士やデザイナーの個性や表彰の受賞歴などを売りにするアトリエ系は、数人から数十人規模が多い。ドラフトは従業員約140人とデザイン会社としては、珍しい規模だ。社員は6割がデザイナーで、毎年10人前後の新卒社員も採用している。

デザイナーの山下泰樹代表が創業したのは2008年、今年3月に東証マザーズに上場した。オフィス内装は00年代まで効率性を重視した間取りやデザインがほとんど。部署ごとに座席をまとめて配置、管理職が全体を見渡せる位置に座るのが一般的だった。こうした場合、オフィス家具メーカーや不動産会社が、内装も提案することが多い。

ただスタートアップ企業を中心に働きやすさや、オフィスのデザインにこだわる動きが広がり、ドラフトもこうした案件を中心に事業を拡大してきた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)やサイバーエージェントのオフィスなどを手掛けている。

最近は1000平方メートル以上の大型オフィス、店舗の空調や照明も含めた設計からビル全体の内装デザイン、外観も含めた商業施設全体の演出も手掛けている。数百万円規模の案件が中心ながら、1億円以上の受注も増えてきた。6割強が直接指名で、ライバルとのコンペの比率を抑えコスト管理がしやすくなっているという。

椅子やテーブルなどのオフィス家具も独自ブランドで製作、持ち運びしやすいホワイトボードや、ドーム型の個室空間を作れる机などを販売している。4月にはオンラインストアで注文もできるようにした。

20年4~9月期連結決算は売上高が前年同期比8%増の27億円、純利益は61%増の1億2100万円だ。新型コロナウイルスが流行して、働く人の「密」を避け、換気や殺菌装置も取り入れた設計への引き合いが増えている。

今春にはテレワークに対応した住宅デザインにも乗り出した。4~9月期に投資が増えたのは東京都目黒区で、モデルケースとしてマンションを1棟購入してリノベーション(大規模改装)したためだ。家の中で、食べる、寝る、働く空間を分けた間取りやデザインを導入。机やソファなど独自の家具なども取り入れ「Re cord中目黒」として、主に単身者や2人暮らし向けを中心に賃貸している。

今後は「W PROJECT」と銘打ってリノベーションなど、居住スペースのデザインを新規事業として広げる考え。首都圏以外の地域も視野に入れ「空き家問題の解決とともに、事業拡大の下支えにつなげる」(同社)という。

4位 エフアンドエム、クラウド人事管理 開発

4位のエフアンドエムはクラウド型の人事労務システムを提供している。出退勤の管理から給与計算など統合された人事システムと異なり、サービスを例えば「ウェブ閲覧できる給与明細」や「年末調整書類の電子申請」など細分化。従業員の入れ替わりが多い、一部の作業が電子化しにくいといった事情や予算にあわせ、企業などが選んで取り入れられるのが特徴だ。新型コロナウイルス対策のテレワーク導入にあわせ、人事部門の業務をIT(情報技術)化する動きが追い風になっている。この3~4カ月で有料顧客は毎月1000件ほど増えているという。

4~9月期はシステム開発投資に資金を投じた。最近は無料で使える「ライト版」を企業に売り込み、有料版の契約につなげている。

16位 レアジョブ、オンライン英会話 AIで自動採点

レアジョブはフィリピン人講師と1対1でレッスンが受けられるオンライン英会話を運営している。新型コロナウイルスが流行して在宅時間が増えたうえ、企業が研修をオンラインに切り替えたことで利用が広がり、2020年4~9月期の売上高は前年同期比28%増えた。特に4~5月の緊急事態宣言中は有料会員が伸びた。

英語をしゃべる力を人工知能(AI)で自動採点できるシステムも開発、外部に提供しており、レッスンデータの分析や研究に今後も力を入れる。法人向けに限っていた短期の成果保証型プログラムを個人向けにも広げるとともに、スケジュール管理や学習法などを助言して会話力引き上げを保証するプランを売り込んで、収益拡大を目指す戦略だ。

19位 カオナビ、社員情報管理 採用増に対応

社員の顔や名前、経験、評価、スキルなど人材情報の一元管理システムを提供する。アンケートや人事考課などの社員情報をデータベース化でき、企業は人材の最適配置や離職防止につなげる。利用している複数の企業を集めてデータベースの活用法とともに、従業員の配置や意欲の引き出し方などノウハウを共有する座談会を開いているのが特徴だ。

2020年4~9月期の単独税引き利益が8600万円の黒字(前年同期は700万円の赤字)だった。テレワークを取り入れる中で、生産性を引き上げコミュニケーションも充実させたい大企業の採用が広がり、採用社数は1900社を超えた。本社オフィスを拡充するとともに、地方企業の取り込みに向け従業員も増やしている。

調査の概要 直近本決算の売上高が100億円以下の上場企業(金融、東京プロマーケット上場企業など除く)で20年4~9月期の研究開発費と投資キャッシュフローの合計額、売上高と営業キャッシュフローのプラス幅が前年同期より増えた企業が対象。金額順に並べた。

[日経電子版 2020年12月29日 掲載]

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