日経副業調査

55%が「副業禁止」 透ける従業員に対する考え方

リモート勤務の広がりは副業の追い風にもなりつつある
リモート勤務の広がりは副業の追い風にもなりつつある

日本経済新聞社と日経HRが共同で実施した副業についてのアンケート調査で、「勤め先が副業を認めているか」について聞いたところ、「禁止されている」との回答が約55%を占め、「認められている」は約28%だった。働き方改革とともに柔軟な働き方が広がりをみせるが、副業を認める職場はまだ少数にとどまっている実態が浮き彫りとなった。 アンケート調査は日本経済新聞社と日経HRが共同で2020年10月26~30日にかけて実施し、4279人から回答を得た。

回答者のうち、「転職活動中」「転職活動はしていないが1年以内に転職したい」「転職活動はしていないが数年以内に転職したい」と答えた層(1455人)を「転職希望者」とし、「転職は考えていない」と回答した層(2757人)とを比較した。

「副業しない理由」(複数回答)について聞いたところ、転職希望者、転職を考えていない層ともに、1位は「勤め先の規定で認められていない」で約50%だった。次いで「副業をする・探す時間がない」、「副業に関して詳しくない」との回答が続き、勤務先の規定・制度のほかにも、様々な要因が副業へのチャレンジを難しくしていることをうかがわせた。

「副業の障害と感じること」(複数回答)を尋ねたところ、転職希望者では「勤め先への申告が必要」との回答が約48%を占め1位となった。一方、転職を考えていない層での1位は「障害はない、障害と感じるものはない」で約45%を占めた。転職希望者と転職を考えていない層との勤務先の規定・制度に対する意識の差が表れた格好といえそうだ。

【自由回答】
・副業を良しとする風潮がなく、白い目で見られる(金融・証券・保険)
・勤務先に条件付きで認められているが、申請が面倒(卸売・小売業・商業)
・職場に副業制度はあるがハードルが高い(金融・証券・保険)
・自分のどんなスキルを生かして副業ができるか分からない(機械・重電)
・本業に時間やパワーをかけたい(情報処理・SI・ソフトウェア)

全回答者のうち「副業をしている」もしくは「副業経験あり」と答えたのは17.3%だった。副業の内容について聞いたところ、転職希望者は「仕事上のスキルをいかした業務」を選んだ人が60.6%、「転職は考えていない」層より約7ポイント高かった。転職希望者は、仕事のスキルを使った副業でビジネスの経験値を高め転職準備にいかそうとする人が多いとみられる。

副業でのトラブルについては、転職意向に関わりなく、約75%が「トラブルを経験したことはない」と回答した。トラブルを経験したと回答した人からは「大企業と比較をすると当たり前のことが当たり前でなく煩わしいと感じた」「音信不通になる依頼主がいた」「睡眠不足になった」「本業とのスケジュール調整が困難だった」などの声が聞かれた。

転職コンサルタント・黒田真行さんの話

副業を禁止したり、様々な規定により実質認めていなかったりする企業の社員にとって、自由に副業できないことが転職を希望する一因になっているのでは、と推測できる。
副業を認めるか否かは、経営判断として、リモートワークを認めるかどうかと似通っており、いずれも許可しないという会社は「従業員を性善説でマネジメントしていない会社」とみなされる。つまり、リモートワークでは「サボっているに違いない」、副業では「本業がおろそかになるはずだ」などと考える会社と位置付けられ、こういった会社では離職者が増えていくかもしれない。
転職先選びにおいて「副業ができるかどうか」を条件に選ぶ人は多くないかもしれないが、副業やリモートワークに対するスタンスは、従業員への考え方が透けてみえるものなので、複数の選択肢から選ぶ「引き算」の過程で敬遠される可能性がある。 また、副業には大きくわけて2種類あり、お小遣い稼ぎ的なものと、付加価値が高く自身の成長につながる仕事がある。前者はある意味、時間を売っている形で、どれだけやっても自分の付加価値が上がるわけではない。ビジネスパーソンにはできれば後者を選んでほしい。後者の副業は仕事をすることで新しい学びがあり、自身の市場価値を引き上げてくれる可能性が高いからだ。

(日経転職版・編集部 宮下奈緒子)

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