
三菱ケミカルは2021年4月、事前に職務内容を定めて成果で処遇する人事制度を、非管理職の一般社員にも導入する。勤続年数ではなく社内で果たす役割や成果に応じ、賃金や社内で就けるポストが決まる。若手の能力を発揮しやすくし、優秀な人材の引き留めや獲得を狙う。伝統的な素材産業でも慣行にとらわれない人事制度が広がる可能性がある。
同社は10月、約5000人の管理職について、それぞれの職務定義書を作成して成果で処遇するジョブ型制度を導入した。管理職以外の約1万2000人にも、これに近い制度を適用する。
22日に労働組合と合意した。新制度では事前に定義した職務への成果で賃金水準や賞与が決まる。成果は上司が複数回の面談で評価する。従来は経験や勤続年数の要素と、職務内容の要素を同じ重みをつけて評価していた。新制度では年功要素はなくなる。

各職場で仕事の難易度に応じ職務を4段階に分け、それぞれで求められるスキルを決める。具体的には「リーダーシップ」や「対人スキル」、事業などにどのような影響を及ぼすかを示す「影響の性質」など7つの要素について、指針となる水準を会社が示す。詳細は本人と上司が成果面談とは別に話し合って決める。
例えば大口顧客を担当する営業チームの責任者には、対人関係の構築力や問題解決力、チームをけん引するリーダーシップについて、高い能力を求める。
人事異動は原則として社内公募制にする。若手でも定義された職務を遂行できると判断されれば、上位の職務に就ける。工場のオペレーターについては職務を5段階でわける。
一般社員にも管理職と同様の制度を導入するのは、年次などにとらわれず能力に応じた登用を進め、士気を高めるためだ。同社では社員構成がベテランに偏りがちで、若手が能力を発揮しにくかった。外資系企業などに若手が転職する事例があったという。
日本の化学業界では汎用品については中国企業や中東勢の攻勢が強まる一方、環境対策も急務となっている。各社は新たな発想に基づく製品開発や顧客開拓などが求められている。
三菱ケミカルの親会社、三菱ケミカルホールディングスも21年4月にベルギー出身のジョンマーク・ギルソン氏が初の外国人社長に就く予定。新人事制度も含めて経営改革を急ぎ、世界市場での生き残りを目指す。
日本企業では日立製作所や富士通などもジョブ型を導入する方針を打ち出している。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた在宅勤務への移行を機に、時間で縛る働き方から職務や役割を明確にするジョブ型を取り入れる動きが広がっている。
[日経電子版 2020年12月22日 掲載]