次世代リーダーの転職学

コロナ禍でも強い企業に ミドル転職に必要な2つの力

ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

プレーイングマネジャーの増加は現場の厳しい現実を示す(写真はイメージ) =PIXTA
プレーイングマネジャーの増加は現場の厳しい現実を示す(写真はイメージ) =PIXTA

新型コロナウイルスの影響は、まだまだ終わりが見えません。11月17日に発表された2021年春卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日時点)は69.8%と、前年同期比マイナス7.0ポイントとなり、リーマン・ショック直後の2009年調査に次ぐ下げ幅となりました。一部に回復の兆しが見え始めたものの、第3波の影響でさらに先行きは不透明になっています。こんな状況の中で、今、転職市場はどう動いているのでしょうか?

先日、人材紹介会社のエンワールド・ジャパンが調査した、外資系企業や日系グローバル企業に勤務する正社員で年収800万円以上のグローバル人材1004人を対象にしたアンケート結果が発表されました。その結果、「1カ月~1年以内に転職したい」または「良い条件の仕事があればいつでも転職を検討したい」と回答した人のうち、「新型コロナウイルスの流行をきっかけに転職を検討し始めた」という人は全体の12%を占め、転職希望時期は「1~3カ月以内」という回答が45%に及んでいます。また、新型コロナの流行がきっかけで転職を検討し始めた人の理由で最も多かったのは、「会社の将来への不安」で、46%と半数近くを占め、コロナ禍の雇用へのマイナス影響度の大きさを如実に表しています。

2021年春卒の大学生の内定率と合わせて、中途採用市場も同様のダメージを受けています。過去の不況のパターンを考えると、経済の落ち込みから雇用への影響がやや遅れてやってくる傾向があるので、来年に向けてさらに雇用市場のマイナス影響が深まっていく可能性もあると考えています。

また、上記の調査によると、「転職で実現したいこと」という質問に対して、新型コロナの流行がきっかけで転職を検討し始めた人のうち34%が「業績の伸びている企業で働きたい」と回答。コロナ感染拡大の前から転職を検討している人より13ポイント高く、ここにもニューノーマル時代の兆しが顔を出しています。さらに「転職で不安に感じること」の第1位は「現在の年齢」で、年齢別では特に40代以上で年齢を不安視している人が多くなりました。

新型コロナの感染拡大によって会社の将来に不安を感じている、マネジメント層以上の40代人材は、より将来性に確信を持てる成長企業を積極的に探していることが浮かび上がってきます。先行き不透明な時代だからこそ、強固で回復力のあるサステナブル(持続可能)な企業が、高付加価値人材をひきつけると言えます。

「管理するだけの管理職はいらない」フラット化する組織

一方の企業は、従来型のスキルから新たなスキルに切り替えられない人材を希望退職などでリストラしながら、デジタルトランスフォ-メーション(DX)や事業の統廃合、M&A(合併・買収)などあらゆる手段を使って生き残ろうとしています。そのため、データサイエンティストやテクノロジーを推進する人工知能(AI)エンジニアなど、新分野のタレント(才能のある人)を積極的に採用する動きを見せています。経営戦略の大転換期を迎えて、営業や管理系のホワイトカラーも求められる素養が変化しています。

その象徴的な動きが、管理職のプレーイング化です。昨年、リクルートワークス研究所が実施した調査では、すでに企業の中の約9割のマネジャーが、プレーイングマネジャーとなっていることがわかりました。部下と同様の何らかの業務を担いながらチームのマネジメントを行っている状況です。現代のマネジャーには、管理するだけのマネジメントは求められておらず、いつの間にかプレーイングマネジャーであることを前提として、人を通じて成果を生むマネジメント業務と、自ら成果を生むプレーイング業務の両立が不可欠になっています。

マネジャーがプレーイング業務を行う理由は、一言でいうと、業務の多さと部下の力量不足に起因しています。リクルートワークス研究所が実施したアンケートによると、プレーイングマネジャーがプレーイング業務をする理由の1位は、「業務量が多く、自分もプレーヤーとして加わる必要がある」(57.3%)です。続いて、「部下の力量が不足しており、自分もプレーヤーとして加わる必要がある」(37.3%)、「自分がプレーヤーとして加わらないと、当期のチームの業績目標が達成できないため」(30.3%)となっています。

この結果は、現代のマネジャーが責任を持つ仕事現場の厳しい実態をリアルに表しています。チームとして達成すべき業績目標やミッションを成し遂げるためには、以前よりも高度かつ大量の業務をスピーディーに処理する必要があります。にもかかわらず、人手不足の環境下で十分にスキルを持った部下を確保・育成することが困難なため、マネジャー自身もプレーヤーとして加わる必要性が生じているのだと考えられます。

しかし、意外なことに「プレーヤーとして仕事をすることが、部下育成につながっている」(19.8%)という回答もありました。マネジャー自身がプレーヤーとして行動し、レベルの高い仕事ぶりを部下に率先垂範で見せることで、部下の成長を促すという方法が、新たな職場内訓練(OJT)の形として成立しているということです。これも時代の変化を感じさせる新しいファクトです。

重要なのはセルフマネジメント能力を磨くこと

管理職のプレーイング化とともに、ニューノーマル時代の人材に求められる、もう一つの重要な力が、セルフマネジメントとセルフラーニングです。会社に管理されることや、会社の教育制度に依存することが当たり前の時代は終わり、個人個人が「自律的」にビジネスパーソンとしての能力を鍛え、自己管理していく能力の必要性が一気に高まっています。その前提として、必要な基本的行動規範を整理しておきます。

・自らのミッションを正確に理解する

・スケジュールの詳細確認をする

・やるべき範囲とやらないことの境界を明確にする

・自分で考え行動する

・タイムマネジメントを厳格に行う

この中でもとりわけ重要なことは、「やるべき範囲とやらないことの明確化」です。セルフマネジメントを定着させるには、自分にできない業務や、成果に直結しないのに時間的に無理がある業務は遠ざけておく必要があります。任されるミッションを正確に理解することは、できるかどうか不透明な仕事を引き受けてしまわないための仕分けでもあります。可能な仕事を引き受け、トラブルを予防し、「できること」にリソースを集中させることが基本のルールです。

また、「セルフマネジメント」を身に付けられる人の行動特徴は、以下の3つのポイントに集約されます。

【集中力】周囲に惑わされることなく、自らのミッションに集中することができる

【柔軟性】状況に応じた適切な対応と判断をすることができる

【スケジューリングスキル】常にゴールから逆算してスケジュールを更新し、ゴールに向けて余裕をつくりだすことができる

どれだけマクロ経済が悪化しても、必ず生き残る企業や強い企業は存在します。またそれらの企業においては、求人倍率の悪化に関係なく、優秀な人材の募集が止まることはありません。ニューノーマルの時代に求められる人材として、力を磨きこみ、活躍するチャンスを、ぜひ広げ続けていただきたいと思います。

黒田真行

ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2020年11月27日 掲載]

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