コロナ禍 逆風下の転職事情

コロナ下の転職 企業が求める条件は「自律」「信頼」

コロナ禍 逆風下の転職事情(下)

新型コロナウイルス禍で大きく様変わりした企業のビジネス環境。デジタル技術による事業変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が急速に進み、転職市場で求められる人材も変わってきた。中途採用の動きが鈍る企業がある半面、「未来への投資」として人材確保に力を入れる企業もみられる。変革の時代に各社が求める条件は「自律的に動ける人材であること」。中途採用の強化に動く企業の狙いを探った。

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積水ハウスの最上氏(左)と沢井氏
積水ハウスの最上氏(左)と沢井氏

「アグレッシブに取り組む人材に門戸をたたいてほしい」。積水ハウスの沢井豊人事部部長は中途採用の方針をこう説明する。前職が同業種、異業種であるかを問わず、即戦力を積極的に受け入れる方針だ。

積水ハウスはいま、「道の駅」でのホテル展開や、人生100年時代に対応した住宅の価値を考える「プラットフォームハウス構想」など、数々の新規事業を展開。デジタルマーケティングなど、DXの取り組みも強化している。必要となるのは「環境技術、健康にかかわる技術から、地方創生の支援まで、幅広い知見」(人事部東京オフィスの最上義昭部長)。中途採用でも前職で実績を持ち入社後にすぐに結果を出せる人材を求める。

新しいビジネスをつくっていく上で、不可欠なのが主体的に仕事をこなし、キャリアを構築できる「自律型人材」だ。2019年に専門組織「人材開発室」を新設したほか、中途採用者への研修も強化した。

転職市場では、コロナ禍で将来への不安から、安定感を求めて大手企業を志望する求職者も多いという。だが、同社は「事業を面白いと感じて取り組んでもらえる人材に来てほしい」(沢井氏)とくぎを刺す。

新卒採用が年400500人なのに対して、中途採用は年120150人。新規事業の拡大などを考えると、即戦力を求める流れはさらに強まる。「中途採用の比重も高まっていく可能性が高い」(沢井氏)という。

キーワードは「自律」「信頼」

富士通の平松氏
富士通の平松氏

「IT企業からDX企業への転換」を打ち出した富士通。DXビジネスを伸ばしていくうえで多様な人材の確保が課題となっている。富士通の総務・人事本部長、平松浩樹執行役員常務は「中途採用を年300人プラスアルファの規模で考えている」と明かす。

以前は中途採用といえば、社内で不足するスキルを持った人材を補うとの位置づけだった。現在はこれを大きく転換、戦略的に活用する方針だ。富士通が中途採用の中心に据えるのは、2030歳代の若手から中堅。平松氏は「変化を楽しめるマインドがほしい」と話す。

採用にあたって重視するのは「やり抜く力、資質がある人」(平松氏)かどうか。プロジェクトを完成させるには、多くの職種、企業の人たちと連携しながら進める必要もあるからだ。

富士通は20年4月、管理職1万5000人を対象に、果たすべき職責、求められるスキルなどを明確にした「ジョブ型雇用」の仕組みを導入した。さらに社内公募制を本格化、今秋には新任課長600ポストの社内公募を実施した。年齢や資格に関係なく、ポストにふさわしい人物かどうかを審査、21年4月には新制度で選抜された人材たちが着任する。

富士通が求めるこれからの人材像について「未知のものにトライしてもらいたい」と話す平松氏。キーワードとして「自律」と「信頼」の2点を挙げる。社内公募制本格化の背景にも、自らのキャリアを自律的に考えてもらおうとの狙いがある。

採用手法も多様化をはかる考えだ。「従来の人材会社からの紹介中心から、企業と求職者が直接つながる『ダイレクトリクルーティング』、社員の紹介や推薦による『リファラル採用』も増やしたい」という。

「チームワークを大切にする」が大前提

アクサ損害保険の山崎氏(左)と丸氏
アクサ損害保険の山崎氏(左)と丸氏

仏系保険大手のアクサ損害保険。外資系とあって、もともとジョブ型の採用ではあるが、「チームワークを大切にできるか、誠実な人材かを重視して採用している」(人材組織開発部の山崎亙部長)。チームを大切にする「ワンアクサ」が同社の企業文化だからだ。

コロナ禍で非対面の行動様式が広がるなか、「今のような時代だからこそ、人への興味を持ち、チームワークを大事にできる人材の重要性が増している」(組織開発課の丸志信課長)という。金融や広告など、中途採用の出身業界はさまざま。求めるのは「変化を楽しめる人。そして、変化に飛び込める人」(山崎氏)であることだ。

コロナ禍を背景とした急速なDXの進展により、それに対応するための新たな人材を多くの企業が必要としている。自動運転や電動化など「CASE」と呼ぶ次世代技術への取り組みを急ぐ自動車業界も例に漏れない。トヨタ自動車で「コネクテッドカー(つながる車)」を活用した新サービスに取り組む「コネクティッドカンパニー」の村田賢一BR-OTA推進室長も大手電機メーカーからの転職組。10月末の講演では「CASEがクローズアップされるなかで、ソフトウエアの領域が広がっている」と訴えた。

「前職の成功」を引きずらないで

中途採用に力を入れる各社に共通するのは、「VUCA」(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代と呼ばれるいま、自律的に動ける人材だ。リクルートキャリアの藤井薫HR統括編集長は「前職での成功体験をひきずらず、新たな環境で学ぶ力がある人材が転職後も活躍する」と解説する。積水ハウスの最上氏も「組織が違えば取り組み方が異なる。前職でうまくいったからといって、転職先で同じやり方に固執するとうまくいかない」と指摘する。あらゆる面で、求職者には柔軟性こそが求められているといえそうだ。

(村山浩一)

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