コロナ禍 逆風下の転職事情

2021年の転職を勝ち抜く 求められる条件は DX & TS

コロナ禍 逆風下の転職事情(上)

新型コロナウイルス感染拡大で、転職市場に暗雲が垂れ込めている。厚生労働省によると、10月の有効求人倍率は1.04倍で前月から0.01ポイント上昇したものの、1倍を割る地域も多く雇用情勢は依然として厳しい。ただ、ITや物流、医療関連など一部業種では人手不足が続き、二極化の様相を呈する。変革の時代に求められる人材の条件について、転職仲介のプロに聞いた。

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「転職活動中だが、予想以上に苦戦している」。大手アパレルを辞めて、転職活動を始めた27歳男性はこう話す。新卒4年目、コロナ禍で販売が大きく落ち込むなか、会社の今後に不安を感じた。ITエンジニアへの転身を目指してプログラミング学校に3カ月間通学したが、「第二新卒や未経験枠の求人はほとんどない」と現実は厳しい。

コロナ禍を迎えるまでIT関連の転職サイトには「未経験者歓迎」の文字が躍っていた。システムエンジニアの採用に詳しい採用コンサルティング会社、才蔵(東京・千代田)の主任コンサルタントの松本雅裕さんは「業務システムのエンジニアの求人は今も強い。『Java』などのプログラミング言語を熟知したプロジェクトマネジャーやサブリーダークラスの人材の需要は高い」という。

ただ、「IT業種の求人は依然強いが、選別の目が厳しくなっている。求められるのは即戦力。未経験者はきつい」と人材紹介会社、ジェイエイシーリクルートメント(JAC、東京・千代田)でプリンシパルアナリストを務める黒沢敏浩さんは指摘する。

DX人材は引っ張りだこ

JAC ⿊沢⽒
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IT分野では、ビジネスモデルの変革を推進する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を担える人材やデータサイエンティストは引っ張りだこ。「さらに英語のできる人材は強い。英語検定試験『TOEIC』の得点が600点以上あり、外国人に対応できる人材のニーズは高い」と話す。

もちろんITや英語のスキルが必須条件というわけではない。「70歳代でも正社員として転職できる人はいる。その人の場合は電気工事関連の免許を持っていることが決めてとなった。デジタル分野に限らず、アナログ分野でも技術を持ったエンジニアの需要はある」と語る。

コロナ禍の中、小売りや飲食、観光関連などのサービス業で離職者が急増した。しかし、黒沢さんは「求人件数全体では4~5月は一時3割程度減ったが、7月からは回復基調だ。あわてて辞めず、じっくり次の職を探した方がいい」と話す。

まずは転職サービスや友人を含めた人的ネットワークを活用して転職先を探す。その後、面接を経て内定を獲得したとしても、きちんと内定通知書を受け取ってから、勤めている会社側に辞めることを伝えた方がいいという。経営環境が不安定なため、「内定切り」にあう可能性もあるからだ。

ここ数年、転職市場は順調に拡大していた。総務省によると、19年の転職者数は351万人と比較できる02年以降で過去最多となった。しかし、一本調子で伸びてきたわけではない。

厚労省のまとめでは有効求人倍率は08年9月のリーマン・ショック後の09年8月に0.42倍にまで下がった。しかし、景気回復や少子化による人手不足などで、17年6月以降は1.5倍を超す高水準となった。20年1月に1.49倍に下落、その後は新型コロナ感染拡大で低迷が続いている。

一方、全国求人情報協会(東京・千代田)が発表した10月の求人広告掲載件数は前年同月比48.9%減の767918件だった。3月以降、前年同月比マイナスが続いている。転職市場の拡大に急ブレーキがかかった状況だが、リクルートキャリアの藤井薫・HR統括編集長は「むしろ人材確保に今がチャンスとアクセルを踏む企業も少なくない」と強調する。

■いま求められる「TS型」人材

リクルートキャリア 藤井HR統括編集長
リクルートキャリア 藤井HR統括編集長

藤井編集長によると、今求められているのは「TS(タレント・ショートターム)型」の人材だという。これは個人レベルで短期に成果を出せる人材ということだ。日本の大企業はこれまで新卒を大量一括採用し、長期育成により組織全体で成果を上げる「OL(オーガナイゼーション・ロングターム)型」の人材採用が主流だったという。

デジタル化が急速に進み、企業が抜本的な事業構造改革を迫られるなか、「多くの企業が、生き残りをはかろうと、TS型人材を求めるようになっている」と語る。

TS型とはどのような人材なのか。藤井さんは「変化に伴う新しい学びを貪欲に追求する一方で、過去のキャリアを必要以上に固執しないタイプの人。単純に英語やプログラミングができる人材というわけでもない」と説明する。

TS型人材とは、Purpose(目標)、Profession(専門性)、People(人々)、Privilege(特権)という「4P」を満たしている人材だという。つまり、自身が目指す目標やビジョンを語ることができ、企業の求める明確なスキルがあり、チームビルディングなど人間関係の対応能力が高く、自身が求める条件との擦り合わせができる――ことが求められるという。

コロナ禍によるビジネスを取り巻く環境の変化に対応して、従来の終身雇用などを前提とした「メンバーシップ型雇用」から、あらかじめ職務内容を定義して成果で処遇する「ジョブ型雇用」への転換を進める企業が増えつつある。日本でも欧米のように短期間で成果を上げられるTS型人材の転職は増えていきそうだ。

ただ、実際の転職活動にあたっては、優秀な人材であっても思わぬ落とし穴にはまるケースもある。営業職の人材紹介を手がけるセールスキャリアエージェント(東京・中央)の斎藤信人代表によると、採用側が面接で詳しく尋ねてくるのは、(1)転職理由、(2)業界への志望動機、(3)本人の成功・失敗体験――の3点。「面接で採用側が何を知ろうとしているのか正しく知っておく必要がある」と助言する。転職を志すなら、明確な目標とスキルを持ち、自らを正しく伝える能力を備えることが必要といえそうだ。

(代慶達也)

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