コロナ禍で高まる資格人気 注目講座と稼ぎ方は?

写真はイメージ=PIXTA
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新型コロナウイルス感染拡大で、資格を取得しようとする人が増えている。背景にあるのは、外出自粛による在宅時間の増加と、景気悪化懸念により膨らんだ雇用不安だ。通信教育のユーキャンは、感染拡大が深刻化した3月中旬から利用者が増え始め、4~11月の受講生数は前年比で3~5割多い水準だという。主にオンラインで資格講座を提供するフォーサイト(東京・文京)は、5月の売上高が前年同月比で78%増だった。10月の売上高も同35%増と、資格講座人気は足元でも続いている。

資格取得で収入増を目指す

資格取得を目指す人が増えた理由の1つが、雇用不安。「景気後退懸念で将来の仕事に不安を感じている人が、仕事に役立ったり収入増につながったりするような難関資格を目指すケースが目立っている」(フォーサイト)。ユーキャンでは、有効求人倍率が低下したり完全失業者数が増加したりすると資格講座の受講生が増える傾向にあるという。過去にはリーマン・ショック時に受講生数が拡大した。「今回はさらに、外出自粛で在宅時間が長くなったことが受講生増を後押ししている。秋以降の新型コロナ感染再拡大もあり、資格人気は今後も続くとみている」(ユーキャン教育事業部の初野正幸さん)

宅建、社労士、お金関連の資格が人気

具体的にはどのような資格に注目が集まっているのか。難関資格の講座提供を強みとするフォーサイトでは今年5~10月、宅地建物取引士(宅建)講座の売り上げが前年比60%増、社会保険労務士(社労士)講座の売り上げが同50%増と顕著に伸びたという。

宅建は不動産事業者の重要資格。不動産業への就職に生かすことができるのはもちろん、「金融機関や保険会社、商社など不動産関連事業を抱える企業の就職に有利」との見方から人気の資格だ。

社労士は、企業向けに人材採用や退職、年金などについての相談を請け負うほか、各種手続きの代行業務などを行う。資格取得後は社労士として独立開業するほか、企業内社労士として働くことも可能だ。「リモートワークの普及で、社員の労務管理の重要性が増しているため注目の資格。また、コロナ下での各種助成金の申請などを通して、社労士の必要性が再認識されている」(フォーサイト)

ユーキャンはFP(ファイナンシャルプランナー)資格と簿記について、今年4~11月における講座受講者数が前年同期比でおよそ2倍となる見込みだという。お金関連の資格が人気を集める背景には、「金融の知識を身につけることで転職や昇進に役立てたいという目的のほか、『コロナ禍の金銭的不安を、お金の勉強をすることで取り除きたい』という需要もある」と初野さんは指摘する。

仕事につながる資格を得たいというニーズは根強い一方、「コロナ後の社会の在り方が読めないので、具体的にどんな資格の取得を目指すべきか分からず困っているという相談も少なくない」とキャリアアドバイザーの藤井佐和子さん。損保会社で事務職を手がける20代女性は、「巣ごもり時間の増加で、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)や簿記の勉強をしたいと考えるようになった。だが、本当に自分の将来の仕事に役立つ資格なのか、という疑問もある」と打ち明ける。

藤井さんは「コロナ後の社会の変化を予想するより、少子高齢化など着実に日本で進む動きに目を向けてみては」とアドバイスする。「例えば、最近の相談者の中では介護関連の資格を取る人が増えている。転職に役立てるほか、休日に副業で介護の仕事をして、収入増を実現したケースもある」(藤井さん)

学習方法や受験方法にも変化が

資格人気が高まる半面、2020年はコロナ感染予防のため、資格試験を中止や延期する団体が相次いだ。5月に実施を予定していたFP技能検定や、6月に実施を予定していた日商簿記検定試験は中止となった。

そうした中、注目されるのは資格試験のデジタル化の動きだ。隣や前の席との間に仕切りの付いた机で、コンピューターやタブレットで回答する「CBT(Computer Based Testing)形式」が普及しつつある。受験者は日時を選択し、全国各地にある専用の会場で試験を受けることができる。問題はランダムに出題されるため、受験者は一斉に会場に集まり"密"になって受験する必要がない。日商簿記は20年12月中をめどにCBT形式に対応する予定だ。

「試験実施団体は、デジタル化が遅れていた業界だったが、大きな変化が生じている」と初野さん。ネット上での願書提出が可能になるなど、デジタル化の進展により受験のハードルが下がるメリットもありそうだ。

(大松佳代)

[日経電子版 2020年12月02日 掲載]

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